田代親世の韓流ダイアリー

韓国で見たミュージカル

韓国で見たミュージカル

 4月に5日間ほどソウルに行ってきました。今回の目的はミュージカル鑑賞だったので、見てきたミュージカルについてご紹介します。今までの経験上当日券が買えることが多かったので、事前にチケットを予約せずに、どこでどんな公演をやるかということだけ調べて、あとは現地に行ってからスケジュールに合わせて見られるものを見ようと出かけました。韓国の舞台公演は土、日は昼夜の2公演で月曜日が休演なので、金土日をはさんで月曜日に帰ってくるようなスケジュールにしました。

「Catch Me If You Can」

 最初に見たのはこれ。レオナルド・ディカプリオとトム・ハンクスが主演した同名映画を基にしたブロードウェーミュージカルを韓国が世界で初めてライセンスを取って上演したもので、以前見て素晴らしかった「ジャック・ザ・リッパー」や「三銃士」を作ったMミュージカルカンパニーが制作した作品です。
 これ、会場に入ると、売店の店員さんも席の案内係もパイロットやスチュワーデスの制服を着ていて、始まる前からなんだかもうお芝居が始まっているような、楽しくなってくる感じでした。
 天才詐欺師の主人公をSUPER JUNIORのキュヒョン、SHINeeのKey、オム・ギジュン、パク・クァンヒョン、キム・ジョンフンが日替わりで演じていて、また私の見た日は違いましたが、少女時代のサニーも出演しています。主人公の人生をショーのように見せていくというようにミュージカル的な構成で映画の世界観がうまくまとまっていたのと、主人公がパイロットの制服や白衣を着てくれるところが、制服好きにはたまらないでしょう(笑)。内容的にはルパン三世と銭形警部みたいな感じで、詐欺師の青年を刑事が追っていくうちに情がわいて、誰よりも理解者になっていくというような展開です。私が見たのは、ジョンフンバージョン。口がうまくて様々な職業になりすます人物ですごくしゃべる役を、早口でたたみかけるような口調で演じていて、新鮮でした。ただ、なにせミュージカル初挑戦ですから、まだいっぱいいっぱいという感じはありましたけど。客席から登場するので、最初からファンは「えっ?キャー!」という感じ。当日券でしたが前から3列目の席で、肉眼でも顔がよく見えました。ただ、舞台の両脇のはじに日本語字幕が出ますので、あまり前の席すぎると字幕が見にくいので要注意です。刑事役のキム・ボンレが貫録の歌のうまさでしたね。華やかで、楽しくて、それでいて家族の話にじ〜んとくるような作品です。

「パリの恋人」

 こちらは人気ドラマのミュージカル化で、予想以上によかったですね。ドラマを見た人が期待する名セリフが場面を変えて出てきて、主人公がピアノで弾き語りをするシーンもロマンチックで素敵でした。オリジナルの音楽がよくて、人物同士の歌の掛け合いもかなり楽しめました。この作品は日本でも9月に上演する予定だそうです。ドラマでパク・シニャンが演じた主人公をイ・ジフンが、イ・ドンゴンが演じた役は「ミュージカル 宮」にも出ていたランでした。彼には日本で取材したことがあったので、「あ、今日はラン君だ!」とうれしかったです。歌もうまいし、見た目も堂々としていてかっこよかったですね。イ・ジフンのスマートで偉そうな御曹司のキャラもよかったですし、やっぱり華がありますね。ヒロインを演じたオ・ソヨンさんもすごくうまかったです。彼女以外でも、今回、見てきた作品に出ていた、ミュージカルに主軸を置いて活動しているミュージカル俳優さんたちはみんな歌も演技もとってもうまくて、これだけの数のミュージカルが上演されているのに、どれを見てもみんなうまいと思えるとは、すごい層の厚さだなと思いました。おもしろかったのは、最後の場面で舞台を転換する時にセットが壁にぶつかってしまって、大道具がはがれて上から落ちてきたんです(笑)。開幕して2日目だったせいかもしれませんね。その横で何事もなかったかのように歌を歌い上げていたランは偉かったです。

「ドクトル・ジバゴ」

 ノーベル文学賞を受賞したパステルナークの有名な小説が原作で、映画にもなった作品のミュージカル化。ロシア革命を背景に、詩人であり医者でもあるユーリ・ジバゴの波乱に富んだ人生と愛が描かれる作品です。
 制作段階からオーストラリアとアメリカと韓国のプロデューサー(シン・チュンス氏)が一緒に作り上げたグローバルプロジェクトだそうで、もともとはチュ・ジフンの復帰作の予定だったミュージカルですが、彼が声帯結節で降板したために、代わりにチョ・スンウが電撃起用されました。
 制作発表の会見での発言を聞くと、チョ・スンウは「『ゾロ』が終わったばかりで時間がない中、間に合うようにやらされるのは嫌だと思ったし話の内容に興味が持てないので断った」そうで、ただ、このミュージカルのシンプロデューサーとは「ジキルとハイド」や、「ラマンチャの男」などを一緒にやって仲が良かったので、断りはしたものの、差し入れを持って稽古場を訪ねて稽古を見たら「これはすごく力のあるミュージカルだ」と感動して出演を決めたそうです。それを聞いて「どれだけすごいんだろう?」と興味があったんですが、その気持ちがよくわかるほど、すべての人がうまいし、質の高い、力のある作品でした。舞台の見せ方がこなれているというか、なめらかでスムーズ。基本的に暗い話なので、面白いというよりも、すごくレベルの高い作品だと思いました。「ミュージカル製作者とミュージカル俳優たちが精魂込めて作りました。その辺のアイドルものとは一線を画すよ!」というような気概が感じられました。

「エリザベート」

 今回見た中で、一番よかったのはこれですね。内容は鉄板だし、個人的に好きな話だし、出演者はみんなうまいし、ジュンスの出演日を見られたし……(笑)。「エリザベート」は、東宝版は見ていないのですが、宝塚版と本場のキャストによるガラ・コンサートを見ていました。宝塚版の死神トートは髪も長くて神秘的な感じでしたが、本場のキャストの方はもう少しロック調で、エロチックなところもあってワイルド。ジュンスが演じた韓国版はオリジナル版に近かったですね。短い髪を金髪に染め、危険で獰猛な感じもあって、迫力もあってとてもよかったです。見る前には「歌のうまさは言うことないけど、彼独特のハスキーな声がどんな風に合うのかな」と思っていましたが、独特の雰囲気のある感じになっていて、堂々としていました。彼が歌い終わる度にファンが歓声を上げ、最後は「ドクトル・ジバゴ」と同じくスタンディングオベーション。エリザベートを演じたオク・ジュヒョンがまた本当にうまくて……。名曲揃いの「エリザベート」のナンバーを、あんなにうまい人たちが歌ってくれて、本当に幸せでした。

 3、4年くらい前は「韓国のミュージカルは、歌はうまいけど、舞台の転換などの見せ方はいまいちかな」と思っていましたが、去年、今年と見たものは舞台転換もテンポよく見せていく力などがすごく上がっていて、クオリティが高くなっているなとひしひし感じました。積極的に海外の演目も取り入れているし、やるとなったら取り込み力も早いという韓国エンターテインメント業界の力を再確認しました。
 そして今回感じたのは、日本からの観客などをターゲットにするためアイドルを何人も起用するようなタイプの舞台と、ミュージカル界の実力派を揃えて舞台を作るというものと、その両方を入れ込んだものなど、作り手も見る側もはっきり目的を分けているなということ。実力者ぞろいの舞台は「ミュージカルを極めよう」という意欲が感じられますし、見ながら鳥肌が立ったり、見終わった瞬間、感動のあまり思わず立ち上がってしまったりします。歌手出身でもアン・ジェウクのように何年も演技も歌手もやってからミュージカルを始めたような実力派たちが出演する大人のミュージカルは、本当にすばらしいですね。今回見た中でも、「同じ演目を違うキャストで見てみたいな」と思わされたものがいくつもありました。
 例えば「エリザベート」のトート役は、ソン・チャンウィやリュ・ジョンハンも演じていて、このリュ・ジョンハンという人も「ジキルとハイド」で来日した時に見て素晴らしかったので見たいですね。声楽科出身の本格派で、ミュージカル大賞も獲っているすごい実力の持ち主なので、彼の声だとエリザベートとのコラボレーションもまた違ったものになってくるだろうなと思いました。アイドル主演のものは、彼らを見られる幸せは十分感じますが、まだ舞台に慣れておらず、'うまく歌う'ということ以上に役の感情を伝えるというにはあと一歩という場合もあります。その点、実力のある人たちが精魂込めて作っている舞台を見ると、「これが本当の底力か」とやっぱり感動の度合いが違います。アイドル主演のものを入り口にして見始め、助演の人のうまさにうなったり、ミュージカル出身の人でドラマにも出ている人たちの出演作を見たりしながら、レパートリーを増やしていくといいかもしれませんね。
 今、韓国はミュージカルバブルといってもいいくらい作品数がすごく多いので、いろいろ見比べられて楽しいですよ。

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田代親世のプラスワン

映画「バンガ?バンガ!」

 韓国でスマッシュヒットした、外国人労働者になりすまして仕事にありついた男が繰り広げる笑いと感動のヒューマンコメディが日本初放送されます。キャストは地味だけど、本当におもしろくて、ゲラゲラ笑いながらじんわりする、ウエルメイドな作品です。
 顔もいまいちで特技もなく、なかなか仕事が見つけられない主人公が、やむを得ず「外国人労働者を求む」という募集に、ブータンから来たと嘘をついて応募し、工場で働き始めます。そこで出会う東南アジア各国から働きにきている仲間たちとのやりとりや絆、淡い恋が描かれながら、みんなで外国人ののど自慢に出るというのが大筋で、負け組主人公の涙ぐましい奮闘記がユーモラスかつ哀感を込めて描かれています。
 「達磨よ、ソウルへ行こう」のユク・サンヒョ監督が脚本も手がけ、百想芸術大賞のシナリオ賞や映像物等級委員会の「2010年の最もいい映画」にも選ばれました。主人公を演じたのは「美男ですね」のコミカルなマネージャー役のキム・イングォンで、大いに笑わせてくれます。そして、「ミス・リプリー」の悪役など、今、大注目の助演俳優キム・ジョンテが、これまた笑いを誘う憎めない役どころを演じています。達者な外国人俳優たちの多彩な魅力もおもしろく、見逃すのがもったいない作品です。見ている2時間が「楽しくていい時間だったな」と思えるので、おすすめです。

衛星劇場で放送。
5/10(木)後8:30〜10:45 他

ドラマ 「白い巨塔」

 日本でも何度も映像化された山崎豊子の原作小説をドラマ化し、それまで恋愛ドラマがメインだった韓国で、ドラマジャンルの新境地を開いたとして大好評を得た作品です。
 天才的な腕を持つ外科医チャン・ジュンヒョクの飽くなき野望を描いた、重厚な社会派人間ドラマ。前半の外科長の椅子をめぐっての政治ドラマでは、派閥争いに明け暮れる権謀術数がまるで時代劇における王位継承争いを思わせ目が離せませんし、後半の医療ミスを巡る法廷ドラマでは、ヒューマンドラマが展開され、静かな感動が広がります。
 主役は、本格派の演技で評価の高いキム・ミョンミン。前半は出世のために人脈作りに奔走し、後半は保身のために偽装工作を重ねていく、この主人公の生き方に憐れみすら覚えてしまうのに、彼の演技で大いに肩入れしてしまう人物像となっており、そのカリスマあふれる演技は絶賛され、百想芸術大賞のテレビドラマ部門の最優秀男優賞を獲りました。また出世には目もくれない人生観の異なる親友医師にはイ・ソンギュンが扮し、この作品をきっかけにどんどんブレイクしていきました。チャ・インピョが前半に登場してキム・ミョンミンとカリスマ対決を繰り広げています。子弟間、友人間での対立と葛藤、功名心に嫉妬心がうずまく人間の感情を丁寧に描き出した非常に見ごたえのある力作です。

FOX bs238で放送。
毎週(木)後7:00〜8:00 他(5/3(木・祝) スタート)

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