
GWが終わった5月下旬に、話題作映画をまとめて見るために韓国に行ってきました。カン・ジファンとキム・ハヌル主演の「7級公務員」は4月に公開された作品ですが、人気があってまだ上映されていました。お互いに7級公務員という国家情報部員でありながら、お互いに自分の身分を明かすことが出来ないために、好き同士なのに誤解が誤解を生みながらぶつかってしまうんです。その状況のおかしさと、必死なのになんだか間が抜けている感じに目に映る仕事ぶりなど、随所に笑いどころが出てきます。カン・ジファンは相変わらずのはじけた演技で、‘かっこいいけどなんか笑える’というこの分野、当分ほかの人では取ってかわれないんじゃないかと思えるくらいのはまり役でした。キム・ハヌルもハードなコメディエンヌ役をすごくがんばっていて、2人のやりとりがおもしろくて、気軽に楽しめるエンターテインメント作品でした。カン・ジファンは「テレビではなかなか視聴率が取れない」と言っていますが、映画の方では「映画は映画だ」に続いて、今回もすでに観客動員400万人超えという大ヒットですからよかったなと思いました。
絵を修復する専門家と画廊のオーナーとの騙し合いが展開される「仁寺洞スキャンダル」ではキム・レウォンがセクシーですてきでした。少し渋みも加わって、セクシーでありながら、好青年ぶりもにじむ。益々、魅力を増してきたなと思いました。特に修復をしているところの職人的な動きがセクシーでした。一方、共演のオム・ジョンファは作り込んだメイクで……。仁寺洞はもともと好きな場所なので「ここ、よく行くわ」というところがたくさん出てきておもしろかったです。今、一部のロッテシネマでは日本人に人気の俳優の出演作を選んで日本語字幕付きで上映しているので「字幕付きで韓国映画を見たい」という人はそれをうまく利用するといいかもしれませんね。私も今回「仁寺洞スキャンダル」は字幕つきで見て、専門用語が多かったので助かりました。
続いて、今年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した、パク・チャヌク監督の「コウモリ」と、ポン・ジュノ監督の「母なる証明」を見ました。「コウモリ」は、バンパイアになってしまった神父が友人の妻に恋情を抱いて欲望に走ってしまうという話なのですが、映像的に私にはちょっとどぎつくて気持ちが悪かったですね。パク・チャヌク監督って、人が気持ち悪いと思うことをすごくうまく映像で表現するなと改めて思いました(笑)。シン・ハギュンもキム・ヘスクも気持ち悪くて怖いし……。キム・オクピンの存在感にもびっくりしました。初めは生活に疲れた地味〜な、じっとりとした湿気を帯びた女なのですが、神父と関係を持ち、バンパイアになったことでどんどん目がランランとしてくるんです。主演のソン・ガンホが引きの演技だったので、その対比で彼女からはすごい迫力が感じられました。奇妙であり残酷であり、「人が人を救う」という考えの傲慢さということを描いているような気がしました。パク監督のこれまでの作品の中でいうと「復讐者に憐れみを」「サイボーグでも大丈夫」を足した感じでしょうか。見る人を選ぶ作品だと思います。
「母なる証明」はオーソドックスに伝わってくる映画でした。映画的な仕掛けがあったし、母が子を思うすさまじいまでの母性が描かれていました。それがまた悲しくもあり……。映像の見せ方、ストーリーの運び方、何かが起こりそうな雰囲気を描写で伝えていく力など、いろんなものが感じられて、見ている間中、胸がざわざわしていました。映画的なおもしろさがある作品だと思います。ウォンビンの軍除隊後の4年ぶりの復帰作なんですが、田舎のちょっとトロいところのある青年役なので、決してかっこいいわけではないのですが、これを復帰作に選んだというところに「これから役者としてやっていくんだ」という心構えが感じられて頼もしく感じました。いたいけな青年を違和感なく演じていましたね。これは公開初日で23万人の観客が見たという、今年最高のスタートを切り、現在も動員数を増やしています。日本でもすでにこの秋の公開が決まっているので、お楽しみに。
そして、意外におもしろかったのが「キム氏漂流記」。「ヨコヅナ・マドンナ」のイ・ヘジュン監督の作品でひねりのあるヒューマンドラマ。“漂流”といっても、自殺しようと身投げした男キムさんが流れ着くのは漢江にある中州なんです。目と鼻の先に人が生活しているのが見えて、船も通るのに誰にも見つけてもらえない。最初は脱出しようと必死に努力するんですが、だんだんそこでの生活に馴染んできて「見つかりたくない」と思いだす。そんな彼を望遠鏡で見つめているのが引きこもりの女性で、彼女もキムさん。だから、この映画は別のところでそれぞれ“漂流”している2人のキムさんが主人公なんですね。そんな彼らが2人だけの意思疎通を経て変化していくんですが、「ああ、そんな視点があったのね!」と思えておもしろかったです。あと、この映画を見るとジャジャン麺が食べたくなります。
ちょうど私の滞在中にノ・ムヒョン前大統領の国民葬がありました。ソウルの街中が騒然としていて、徳寿宮に行こうとしたら、地下道が重装備の戦闘警察でいっぱいで、割れた卵の殻も散らばっていました。街中警察バスでいっぱいで、タクシーの運転手さんも「こんなにたくさんの警察のバスは普段どこに隠れてるんだ?」と驚いていたほどです。市庁前広場の近くのホテルに泊まったんですが国民葬の日は夜中まで自分の意見を語る声が聞こえていて、韓国の人たちはやっぱり熱いなあと感じました。翌日の夕方には広場の周りを警察のバスが取り囲んで、集会ができなくしていましたね。ただ、徳寿宮の外は騒然としていたんですけど、中に入ってしまえば、かなりのほほんとしていて、その落差にも驚きました。実はノ・ムヒョンさんが大統領で当選した日も韓国にいたんですよね。だから、不思議な縁を感じました。
「ただ今恋愛中」「その夏の台風」「カムバック!スネさん」「ダイヤモンドの涙」などに出演していた俳優イ・ジェファンさんにインタビューしました。彼はいつも、主人公の愛を争う二番手といった役どころで貴公子的な役が多く、「ダイヤモンドの涙」や最近の「妻の誘惑」でも、傷ついた女性を優しく愛していく役を演じて女性ファンから注目を集めています。特に「妻の誘惑」は大ヒットしたので、今すごく株も上がっています。実は大学ではバンドをやっていて、歌手デビューの準備までしていた人で、今までもサントラでは歌を歌っていたんですが、今回、日本で歌手デビューすることになって来日したのでインタビューしました。6月10日に発売されたCD「眠り姫」を聞きましたが、これまで演じてきたキャラクターにぴったりの歌詞でもあり、甘くて優しい声でした。ドラマを見ながら「目が印象的な人だな」と思っていたんですが、実際、お会いしてみても大きくて優しい目でしたね。韓国では優しそうな、「牛のような目」と言われているんだそうで、自分でも気に入っていると恥ずかしそうに照れてました。そんなところも好ましかったです。話を聞いていると、愛嬌があって、さわやかで、気さくで、人に好かれそうな好青年だと思いました。おしゃべりが上手で率直に話してくれる人だったので、直接ファンに会ったり、トーク番組に出たりしたらファンが増えるだろうなと思いました。
「チェイサー」に続いて見応えのあるクライム・サスペンスで、とてもおもしろかったです。裁判では負け知らずのシングルマザーでもある敏腕弁護士の娘が誘拐されてしまい、犯人から「7日後に迫っている裁判で死刑になりそうな男を無罪にしないと娘の命はない」と言われ、孤独な闘いを始めます。タイトル通り7日間が勝負という内容で、時間が限られているということで緊迫感が生まれるし「いったい、犯人の狙いは何なのか?」という謎もあるし、最後にどんでん返しもあるので、見ている間中ずっとおもしろかったです。
主人公を演じたキム・ユンジンの骨太な存在感がすごくよかったです。敏腕であることをちょっと鼻にかけていた人物が、1人娘を救うために必死になってどんどん崩れていく。でも一方で、裁判では冷静にプロとして仕事をしている。彼女のやつれ加減とか、しわとか、そういったものが役柄にいい具合にマッチしていて、ちゃんと生きてきた女の年輪が刻み込まれていました。彼女の昔なじみの刑事を演じたパク・ヒスンがこの映画の演技で注目され、評価されたんですが、彼も、やさぐれた中に人情味をにじませてすごくいい味を出しています。殺人事件の謎を解きながら、娘も探さなければいけないという二重のミステリーが交錯するところがすごくおもしろいので、見ごたえがあります。
7月11日(土)から、シネマート六本木ほか全国ロードショー
www.7days-movie.jp/
チョ・インソン、カン・ジファン、ソ・ジソブを始め、ぺ・ヨンジュン、イ・ビョンホン、リュ・シウォンら数多くのスターたちとのエピソードや、ファンミや取材の舞台裏、韓流ブームの前と後など、韓流どっぷりの10年をつづった著書「恋する韓流」(朝日新聞出版)が好評発売中です。
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田代親世の恋する韓流LIFE