
視聴率不敗神話を誇るベテラン脚本家キム・スヒョンが手がけた最新作は、久々の本格派ラブストーリーとして、またキム・レウォン除隊後の復帰作としても注目を集めました。演技派女優スエ扮するアルツハイマー病に冒されたヒロインを、キム・レウォン演じる主人公が愛し抜く姿が多くの視聴者の心を捉え、人気上昇中のイ・サンウ、JYJユチョンの弟パク・ユファンの出演なども話題に。放送開始以来、人気を独占した切ないラブストーリーを田代親世さんが解説していきます。
出版社に勤めるソヨンは従兄の友人であるジヒョンとつきあっていたが、婚約者ヒャンギとの結婚の日取りが決まった彼に別れを告げられる。ショックを受けながらも気丈に暮していこうとするソヨンだったが、激しい物忘れの原因が若年性アルツハイマーだったことがわかり……。
![]()
建築家。父が院長を務める病院の理事長の娘ヒャンギと婚約中。友人ジェミンの従妹であるソヨンに好意を抱き付き合い出す。
![]()
秘かに慕っていたジヒョンと恋人同士になるが彼の結婚が近づいて破局。その後、病院で若年性アルツハイマーと診断される。
![]()
ソヨンの従兄でジヒョンの中学・高校の友人。政治部の記者から保険会社に転職。ソヨンのよき相談相手。
![]()
ジヒョンの婚約者。彼を深く愛し、結婚する日を心待ちにしている。
このドラマはアルツハイマーを患ってしまった女性と、そんな彼女をとことん支えて愛を貫く男性の物語。でも、そこに至るまでは、キム・レウォン演じるジヒョンが、婚約者のいる身でヒロインと付き合っているという不倫の恋の終焉と、その後ヒロインの病気を知ってどんな決断を下すのか、家族に対して彼女のことをどう言い出すのか、周りは彼の決断をどう受け止めるのかと、ひと悶着もふた悶着もあって、そうしたドラマに惹きつけられていきます。そして、後半は彼女に寄り添うと決めた彼と、病気が進んでいく彼女の変化が描かれていきます。
若年性アルツハイマーという題材は、私自身も物忘れをする年齢ですし、急になってもおかしくない病気なので「自分がなったら?」「身近な人がなったら?」と見ていてとてもドキドキします。出版社でバリバリ働いているソヨンがいきなり病を宣告され、現実を受け入れられずに周りに当たり散らしたりする感情もとてもリアルです。結婚をやめて彼女のそばにいることを決めたジヒョンに、友人のジェミンが「ロマンチックドラマじゃないんだ。(病気との付き合いが)1年の話じゃない。10年を超えることだってあるんだ。自分の人生を考えろ」と言うなど、お涙ちょうだいだけではなく、不治の病と闘う姿が実感をもって描かれていきます。
キム・スヒョンは「青春の罠」や「母さんに角が生えた」「美しき人生」など、これまでに多くの名作を手がけてきた脚本家です。彼女の書くドラマには、'激しい愛'路線と'ファミリードラマ'路線という二つタイプがあるんですが、「千日の約束」は主人公である2人の物語だけでなく、彼女たちをとりまく家族が2人をどう思って見守っていくのかがていねいに描かれているので、両方のタイプがうまく混ざり合っている感じがします。ドラマを見ながら「この人の家族だったらどうするだろう?」「ここまで言ってあげられるかな?」と考えてしまいますね。しょっぱなから恋人同士の激しい口論で始まり、スピーディな展開にいきなり引き込まれてしまいます。設定として悪役になってもいいフィアンセのヒャンギを好感の持てる人物に描いたり、ジェミンを三角関係の相手として設定していないなど、余分なところに葛藤を持ってこないというキャラクターの配置も絶妙です。
除隊後初のドラマ出演となったキム・レウォンは、婚約者との結婚が決まったため、恋人と別れなくてはならないジヒョンに扮し、アンニュイなムードただよう成熟した男の魅力を醸し出しています。所々に幸せな恋人同士だった時代の姿がはさまれ、現在の陰鬱な悲しい表情との対比がはっきりと出てきます。自分でも卑怯だと思いながらも恋人のことを忘れられず、かといって昔から家同士の関係で決められていた婚約者を振り切る事もできず……という、どっちつかずの役柄なんですが、恋人の病気を知って決断を迫られます。
女性らしいキャリアウーマン、ソヨンを演じるスエは、落ち着きの中に感情の起伏を見せ、特徴ある低い声でずばずばとものを言うところが小気味いいです。ジヒョンが「一緒にいよう」と言っても彼を自分の厄介な状況に巻き込みたくないためにずっと拒否し続けるんですが、結局、受け入れた時の、幸せいっぱいの表情がとても魅力的でした。アルツハイマーが進んでいってからの演技もとてもリアルだと高く評価されました。
ソヨンの弟ムングォンを演じているのはJYJのユチョンの弟、パク・ユファン。両親を幼い頃に亡くし、姉と2人で叔母の家で暮していたこともあり、お姉さん思いでかわいい弟です。ソヨンの従兄でジヒョンの友人ジェミン役はイ・サンウ。静かでクールな男性ですが、ソヨンのことをかわいがって親身になり、幸せになれるならと友人ジヒョンとの仲を応援していきます。チョン・ユミ扮するヒャンギは愛に囲まれて育った天真爛漫な女の子。疑うことなく一心にジヒョンのことを思い、別れを告げられても、彼への愛を持ち続けていきます。また「パスタ」でレストランのオーナー役をやっていたCLAZZIQUAI PROJECTのALEXがここではジヒョンの仕事仲間の建築家として登場し、悩みの尽きないジヒョンの相談相手になったり、気遣いをしてあげます。
さらに、ジヒョンとヒャンギの対照的な母親たちの存在も見ものです。キム・ヘスク演じるジヒョンの母はクールで道理をわきまえた知的な人物で、息子を叱ってもソヨンのことは叱らない理性を持っています。対して、イ・ミスク扮するヒャンギの母は感情のままに声を荒げて騒ぎ立てるヒステリックな女性。それぞれが自分の子どもを愛しているんですが、表現の仕方がまったく違うのがおもしろいです。
© 2011 All Rights Reserved YEINE Inc.
特集ページに使用する写真は、権利の都合上、掲載可能期間に限りがございます。そのため、バックナンバーでの写真掲載は控えさせていただきますので、何卒ご了承下さい。