現代社会を鋭く捉える女性ドラマの数々

「Sex and the City」や「デスパレートな妻たち」が大成功したおかげで、今や米ドラマ界はウーマン・パワーに圧倒されていると言ってもおかしくありません。例えば、昨年の新作ドラマ計63本(ケーブル含む)のうち、実に半数以上の37本が女性をメインにしてます(筆者調べ)。ニールセンの視聴率ランキングでも、「デスパレートな妻たち」や「グッド・ワイフ」などの女性ドラマが常にトップ20圏内へランクイン。ウーマンリブ全盛期の1973年でさえ、アメリカのプライムタイム・ドラマに登場するキャラクターの74%は男性という統計が出ていましたから、まさに隔世の感ありといった感じですね。そこで、今回はティーン向けと大人向けに大きく分け、女性を主人公にした海外ドラマの魅力を分かりやすく語ってみたいと思います。

ず、今のティーン向け作品の方向性を決定づけたのは、'03年に放送の始まった「The O.C.」と言われています。高級住宅街に住むリッチな主人公たち、未成年のセックス&ドラッグといった社会問題に鋭いメスを入れた物語など、そのルーツは90年代の「ビバヒル」にあると言えますが、この作品の場合はミーシャ・バートン演じるヒロインに焦点を絞ったことが成功の鍵でした。ミーシャは一躍全米のファッション・アイコンとなり、青春ドラマにおける女性の役割の大きさを広く知らしめることに。その女性ドラマ的要素をさらに充実させたのが、今人気の「ゴシップガール」というわけです。

レブな女子高生たちのリッチな生活や泥沼の愛憎劇が展開する一方、セックスやドラッグ、イジメなど現代の若い女性の直面する問題を赤裸々に描いている点が「GG」の人気の秘密。また、中流階級の平凡な女子高生を主人公にした「The Secret Life of the American Teenager」(日本放送未定)も10代のセックスと妊娠を取り上げ、全米の若い女性やティーンの間で「ゴシップガール」に匹敵するほどの支持を得ています。

近では、親友の死をきっかけに仲良し女子高生グループの秘密が暴かれていく「Pretty Little Liars」(日本放送未定)も評判に。いずれのドラマも衝撃的な題材を取り扱いつつ、若い女性の本音や心の成長がしっかりと描写されているのが魅力です。

方、大人向け女性ドラマに目を移せば、まず「Sex and the City」と「クローザー」の影響を抜きに語ることはできないでしょう。中でも、犯罪ドラマという枠組みの中で社会的地位のある女性が直面する苦悩や葛藤を描いた「クローザー」は、米ドラマ史における画期的な作品の一つ。

去にも70年代の「女刑事ペッパー」や80年代の「女刑事キャグニー&レイシー」など強い女性を主人公にした刑事ドラマはありましたが、「クローザー」のように女性がトップに立つ作品は殆どありませんでした。しかも、従来ならば働く女性がいかにして男性社会のルールと折り合いをつけていくのかという問題に焦点が当たるところを、この作品では犯罪捜査チームを率いる主人公ブレンダ自身がルールを決めていく。女性の会社経営者や重役も珍しくない現代アメリカを象徴しているわけですね。

来、大女優グレン・クローズが冷酷な凄腕弁護士を演じる「ダメージ」や有能な主婦弁護士を主人公にした「グッド・ワイフ」など、私生活で様々な問題を抱えながら働く女性を描いた作品が急増。仕事と私生活の両立、夫や恋人との愛情や不和、そして今なお根強い女性への差別や偏見など、働く女性ならば誰もが直面するであろうジレンマが率直に描かれるようになりました。カナダ産の「ビーイング・エリカ」もそうしたテーマをファンタジックかつコミカルに取り上げており、アメリカではリメイク版の企画が持ち上がるほど話題に。

た、「Sex and the City」のように大人の女性の友情や恋愛を大胆に描くドラマ群も健在で、今や長寿番組となった「デスパレートな妻たち」やバツイチ女性の波乱万丈な恋愛を描く「クーガータウン」など、人生の酸いも甘いも噛み分けた大人の女たちの赤裸々なドラマが次々と誕生しています。

ずれにせよ、ティーン向け大人向けを問わず、これらの女性ドラマに共通して言えることは、現代社会の問題やそこに生きる人々の本音を女性ならではの視点で鋭く捉えていること。男性視聴者が共感できるような点も少なくないはずです。

た、企画不足に悩まされる映画界とは対照的に、今の米テレビ界は優れた脚本が溢れており、もちろん女性ドラマもその例に漏れません。サリー・フィールドやホリー・ハンターといったオスカー女優たちが次々とテレビ界へ転身しているのもその証拠。最近ではキャシー・ベイツが法律ドラマ"Harry's Law"(日本放送未定)でテレビ初主演を果たし、大変な話題を集めています。

た、仕事人間だったせいで家庭も前職も失った女医が、そのトラウマに苦しみながら法医学者として活躍する犯罪ドラマ「Body of Proof」(日本放送未定)も、個人的におススメしたい最新ドラマの一つ。女性たちのパワフルな活躍が、ますます海外ドラマを面白くしているわけです。

文:なかざわひでゆき

第2回 あの人気ドラマも帰ってくる!? ドラマのリメイクブーム、その“光と影”

PROFILE

なかざわひでゆきHideyuki Nakazawa

映画/ポップ・ミュージック研究執筆家

1968年6月26日生まれ。旧ソ連のモスクワにて育つ。日大芸術学部映画学科および大学院卒業。'91年よりフリーライターとして映画や海外ドラマを中心に活動。『デジタルTVガイド』や『スカパー!TVガイド』、『TVガイド』など毎月多数の雑誌で執筆するほか、『スカパー!e2TVガイド』では9年近くに及ぶコラム「映画女優LOVE」を連載中。また、人気海外ドラマの公式ホームページなどでも数多く活躍中。

海外ドラマをみるならスカパー! 海外ドラマ

コラム アーカイブ

Pagetop