




ラスベガスを舞台にした「CSI: 科学捜査班」、マイアミを舞台にした「CSI: マイアミ」、そしてニューヨークを舞台にした「CSI: ニューヨーク」。全米各地の大都市でストーリーの展開する「CSI」シリーズですが、実は全てロサンゼルスのスタジオで撮影されているってご存知でしょうか?
それぞれ、どうしても設定上で必要な場合にのみ現地でのロケ撮影を行うこともありますが、「CSI: 科学捜査班」はロスのユニバーサルスタジオ、そして「CSI: マイアミ」と「CSI: ニューヨーク」は同じくロス市内のCBSスタジオセンターを中心に撮影されており、別撮りされた現地の外観ショットを随所に織り込むことで、それらしく見せているというわけなんです。屋外シーンも基本的にロス近辺での撮影。なので、「CSI: マイアミ」に登場するマイアミビーチも実はカリフォルニアのロングビーチだったり、「CSI: 科学捜査班」のラスベガス市街地が実はユニバーサルスタジオの屋外セットだったり、「CSI: ニューヨーク」のニューヨーク街頭シーンも実はロスのダウンタウンだったりするわけです。
もちろん、屋内シーンもハリウッドでのセット撮影がメイン。オフィスの窓の外に見える風景などは、現地の風景写真を思いっきり引き伸ばした巨大カーテンなんですね。それでも、カメラで写して立体的に見えるように加工がされていて、実際に間近で見るとなかなか手が込んでいます。そしてさらに、スタジオ内の照明の色や強さなどを調節することによって、舞台となるラスベガスやマイアミ、ニューヨークの雰囲気を上手いこと再現しているわけなんですね。僕自身、「CSI」シリーズの撮影スタジオを初めて訪問した時には、文字通りご近所さん同士で撮影されていることに少なからず驚いた記憶があります。それでも、映像のマジックによってローカル色をしっかりと出しているわけですから、さすがハリウッドの仕事だな〜と逆に感心させられたことも事実なんですけれどね。
そして、このように舞台はアメリカの各地方都市だけど、実はロサンゼルスで撮影されているというパターンは、アメリカのテレビドラマ界では決して少なくありません。というよりも、ほとんどのドラマが同じようなスタイルで作られているといっても過言ではないんですよ。例えば、マイアミを舞台にした「デクスター〜警察官は殺人鬼」や「NIP/TUCK マイアミ整形外科」、ワシントンD.C.を舞台にした「NCIS〜ネイビー犯罪捜査班」や「ザ・ホワイトハウス」、ボストンを舞台にした「ボストン・リーガル」や「アリーmyラブ」、シアトルを舞台にした「グレイズ・アナトミー」なども、実際には大半がロサンゼルスやその周辺にて撮影されています。
シカゴを舞台にしたドラマ「サマンサ Who?」なんかも、上記の「CSI」シリーズと同じCBSスタジオセンターで撮影されていました。この作品で面白かったのは屋外シーンの撮影風景。映画やドラマの撮影所には屋内セットを組むためのサウンドステージと呼ばれる建物が敷地内に幾つも並んでいるんですけれど、そのサウンドステージとサウンドステージの間をストリートに見立てて、そこにシカゴのショッピング街を再現してしまったんです。前日まで何もなかったスタジオの屋外路地が、その翌日にはカフェやブティック、デパートの立ち並ぶショッピングストリートへと大変身。もちろん、随所にここがシカゴであることを示す標識や看板などが設置され、通りを行き交うエキストラたちの服装も都会的なカジュアルスタイルで統一。なにしろ、常夏のロサンゼルスでは一年中半袖に短パンの人だらけですから、エキストラの服装にも気を使わないと一発でバレちゃう(笑)。スタッフの苦労がいろいろと偲ばれる撮影現場でした。
それでは、なぜ現地でロケをせずにロサンゼルスで撮影を行う作品が多いのか? まず、ハリウッドで活躍する俳優やスタッフはみんな基本的にロサンゼルス在住ですから、それをそっくり移動させるには時間もお金もかかる。その上、テレビドラマは1ピソードを短期間で撮影しなくてはいけないし、しかも長期間に渡って制作され続けることが大前提ですから、各制作会社の本拠地であるロサンゼルスで撮影する方が何かと便利なわけです。撮影そのものが関係者の日常生活に組み込まれているという点が、一定の期間で集中的に撮影される映画作品との大きな違いかもしれません。
ただし、もちろん例外もあります。例えば、全編に渡ってニューヨークで撮影されている「Sex and the City」や「WHITE COLLAR 天才詐欺師は捜査官」。ニューヨークには大きな撮影スタジオもありますし、ブロードウェイを基盤にする役者の人材も豊富。また、どちらの作品もニューヨークの街そのものが重要な見せ場になっているため、現地での撮影は絶対に欠かせないわけです。マイアミを舞台にした「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」も、同じように街の風景や空気がドラマにとって重要な要素であることから、全篇に渡って現地でのロケ撮影が行われています。
また、近年はさらなるコストの削減を理由に、スタッフの人件費が安くて助成金も貰えるカナダで撮影される作品も増加中。トロントはニューヨークやシカゴに街並みがソックリだし、バンクーバーもシアトルに似ている。カナダにはハリウッドでも活躍する俳優が多いから、キャスティングも全く問題がない。まあ、カナダロケの増加というのは、テレビに限らず映画でも近年顕著な傾向ではありますよね。
ちなみに、現地ロケなのかそうでないのかを見分ける簡単な方法をご紹介しておきましょう。誰でも一目で分かる街の有名な観光スポット、例えばニューヨークのエンパイアステートビルやワシントンD.C.の連邦議会議事堂などの風景映像が、登場人物抜きで随所に挟み込まれているような場合は、まずロサンゼルスやカナダで撮影されているものと考えて間違いありません。なんて言ったら、海外ドラマファンの夢を壊してしまいますかね…(笑)。
文:なかざわひでゆき

1968年6月26日生まれ。旧ソ連のモスクワにて育つ。日大芸術学部映画学科および大学院卒業。'91年よりフリーライターとして映画や海外ドラマを中心に活動。『デジタルTVガイド』や『スカパー!TVガイド』、『TVガイド』など毎月多数の雑誌で執筆するほか、『スカパー!e2TVガイド』では9年近くに及ぶコラム「映画女優LOVE」を連載中。また、人気海外ドラマの公式ホームページなどでも数多く活躍中。