




いよいよ年末が迫ってまいりました。世界的に広がる格差社会への反発や経済不安などなど、本当に多くの深刻な問題を抱えながら2011年も終わろうとしています。しかし、いつの時代でも大衆は良質なエンターテインメントを求めるもの。それは時代や社会を如実に映し出す鏡でもあります。そこで、今回は2011年の日本における海外ドラマの動向を振り返りつつ、アメリカで始まったばかりの最新シーズンの様子を分析しながら、2012年に日本でも話題を呼びそうな作品を紹介していこうと思います。
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011年に最も日本で話題を呼んだ海外ドラマといえば、間違いなく「Glee」('09〜)ですよね。欧米での過熱ぶりに比べると日本での人気は一歩出遅れた感じでしたけど、今年は期間限定で渋谷に公式ショップがオープンしたり、映画「glee/グリー ザ・コンサート 3Dムービー」('11)も劇場公開されるなど、すっかり日本での人気や知名度も定着してきたと思います。落ちこぼれ高校生たちが音楽を通じて自分らしさを見出していくというポジティブなストーリー、ただ前向きなだけの夢物語に終始しないシニカルなユーモアセンス、そして見る者を圧倒する元気でパワフルな歌とダンス。まさに社会の閉塞感を吹き飛ばすような勢いを持つドラマであり、今の時代に生まれるべくして生まれた傑作だと言えるでしょう。今年の11月にパラマウント・スタジオに建てられたマッキンリー高校の屋内セットを訪問し、メインキャストほぼ全員にインタビューできたばかりか、ミュージカルシーンの撮影風景まで見学させてもらったということもあり、個人的にも今年最も印象に残る作品となりました。
海外ドラマ全般を見渡してみると、人気の長寿シリーズや新作シリーズに関係なく今年も質の高い作品が多かったし、ジャンルそのものの人気も安定していますね。アメリカ産だけでなく、最近では世界的に定評のあるBBC作品を中心とした英国ドラマも次々と見応えのある新作が輸入されています。もはや地上波の国内ドラマでは飽き足らないし、昔の日本のドラマを焼き直したような韓流はちょっと違う…という目の肥えたファン層が定着しているのかもしれません。そういった意味では、海外ドラマファンにとって非常に充実した1年だったと言えるでしょう。
ちなみに、私のお気に入りを挙げるとすると、新作ドラマなら「ブルーブラッド〜NYPD家族の絆〜」('10〜)と「V」('09〜10)。特に親子3代に渡るニューヨークの警官一家の目を通して、犯罪捜査の最前線に立つ人々の苦悩や葛藤を描いた「ブルーブラッド」はジンワリと胸に沁みわたる素晴らしい作品です。人気シリーズだと「FRINGE/フリンジ」('08〜)のシーズン3が過去最高の傑作に仕上がっていたし、「トゥルーブラッド」('08〜)のシーズン2も社会派ホラーとして実に良く出来ていた。「BONES」('05〜)や「デクスター〜警察官は殺人鬼」('06〜)、「NCIS〜ネイビー犯罪捜査班」('03〜)などの最新シーズンも、いずれも高い完成度だったと思います。
次に、去る9月から始まった米テレビ界の最新シーズン(2011〜12年)がどうなっているのかを見ていきましょう。ただ、ケーブル局の作品も含めると語りきれなくなってしまうため、今回はあえてネットワーク局の作品のみに言及したいと思います。
まず、全体的な傾向としてはコメディーが圧倒的に強いようです。チャーリー・シーンに代わってアシュトン・カッチャーが新たに加わった「ハーパー★ボーイズ」('03〜)や「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」('07)、エミー賞のコメディー部門作品賞を獲得した「モダン・ファミリー」('09〜※'12年2月よりFOXで放送予定)といった鉄板の超人気ドラマは勿論のこと、この秋スタートの新作でも、どん底の貧乏生活を送る若い2人組のウェイトレスが自分たちの店を出すという夢に向かって奮闘する「2 Broke Girls」や、その製作総指揮を手掛けたコメディエンヌのホイットニー・カミングスが架空の自分を演じるという「Whitney」、彼氏の浮気が原因で家を飛び出したことから3人のワケあり独身男たちと同居生活することになる風変わりな女の子をズーイ・デシャネルが演じる「New Girl」('※'12年4月よりFOXで放送予定)といった、女性を主人公にしたシットコム(シチュエーション・コメディー)がメチャクチャ大好評なんです。いずれの作品も、まるでルシール・ボールやメアリー・タイラー・ムーア、キャロル・バーネットといった往年の大物コメディエンヌたちのシットコムを彷彿とさせるような懐かしさが漂います。「New Girl」のズーイ・デシャネルも、自身の役柄をM・T・ムーアにインスパイアされたと言っていました。また、日本でも「ギルモア・ガールズ」のスーキー役でお馴染みのメリッサ・マッカーシーが主演する、メタボ体型男女の恋愛模様をユーモラスに描いたラブコメならぬデブコメ(?)「Mike & Molly」('10〜)もシーズン2に突入して絶好調。やはり今のような困難な時代だからこそ、大らかで屈託のない笑いが求められるのかもしれません。
一方、シリアス系の新作ドラマで健闘しているのが、犯罪捜査ドラマに管理社会への不安を絡めたJ.J.エイブラムス製作の異色作「Person of Interest」。これがテレビシリーズ初出演となるジェームズ・カヴィーゼルと「LOST」のベン役が印象的だったマイケル・エマーソンの共演も話題です。また、アレクサンドル・デュマの小説「モンテクリスト伯」を下敷きにしたマデリーン・ストウ主演による愛と復讐の女性ドラマ「Revenge」(※'12年3月よりDlifeで放送予定)も好評だし、スピルバーグ製作総指揮の「Terra Nova〜未来創世記」もジワジワと視聴率を伸ばしています。とはいえ、シリアスな作品は概ね苦戦を強いられているものも少なくないようです。
いずれにせよ、「NCIS〜ネイビー犯罪捜査班」や「THE MENTALIST/メンタリスト」、「キャッスル〜ミステリー作家は事件がお好き」などユーモアセンス溢れる定番ドラマが相変わらず視聴者数ランキング上位を占めていることを鑑みても、今シーズンの米ドラマ界は"笑い"と"安定感"がキーワードだと言えるかもしれません。大型連続ドラマがすっかり鳴りを潜めてしまった中で「Terra Nova」が健闘しているのも、あえて古典的な家族アドベンチャー路線を狙ったおかげなのでしょう。
そ
して、最後に2012年日本へやって来るであろう&来て欲しい作品を駆け足でご紹介。まず、先述したエミー賞受賞作品「モダン・ファミリー」。親子ほど年の離れた子連れのラテン系セクシー美女と再婚した70過ぎの父親、同性婚をしたゲイの長男夫婦(?)、難しい年頃の子どもを3人も抱えた長女家族という、ちょっと風変わりなファミリーの日常をシュールな笑いで描くコメディーなんですが、日本でどう受け止められるのか興味津々といったところ。また、同じく先述した最新ドラマ「New Girl」や「2 Broke Girls」は日本でも女性を中心に人気を呼ぶのではないかと思います。特に「New Girl」はハチャメチャな笑いが最高。日本ではなかなかアメリカのコメディードラマは受けませんけれど、これはイケるのではないかと思います。既にCSで放送が始まっている「Terra Nova」も来年の夏にはDVD-BOXが発売されるので話題になることは間違いないでしょうし、「Glee」のライアン・マーフィが製作を手掛けた「アメリカン・ホラー・ストーリー」もカルトな人気を集める可能性が十分にあります。加えて、昨シーズンの新作ドラマの中でも特に評価の高かった法医学ドラマ「Body of Proof」や全米ブレイク中のコメディー「Mike & Molly」の日本初上陸にも期待したいです。
さらに、年明けに全米での放送が始まるスピルバーグ製作総指揮のミュージカルドラマ「Smash」や、キーファー・サザーランド主演の「Touch」、そして往年のメガヒット作「ダラス」の新シリーズといった話題作も、本国の反響次第では年内に日本上陸するかもしれません。個人的にはホラー&ファンタジーの分野も大好きなので、グリム童話を下敷きにしたファンタジー風の犯罪捜査ドラマ「Grimm」や、現代のボストンに暮らす白雪姫の娘を主人公にした異色の御伽噺ドラマ「Once Upon A Time」といった今シーズンの新作ドラマも、是非日本へ来て欲しいと思いますね。とにもかくにも、面白そうな新作ドラマは他にもたくさん待機しているし、お馴染みのヒット作の新シーズンだって次々と始まることでしょう。きっと、どれを見ようか迷ってしまうはず。どうやら、2012年も海外ドラマ・ファンの嬉しい悲鳴が聞こえてきそうです(笑)。
文:なかざわひでゆき

1968年6月26日生まれ。旧ソ連のモスクワにて育つ。日大芸術学部映画学科および大学院卒業。'91年よりフリーライターとして映画や海外ドラマを中心に活動。『デジタルTVガイド』や『スカパー!TVガイド』、『TVガイド』など毎月多数の雑誌で執筆するほか、『スカパー!e2TVガイド』では9年近くに及ぶコラム「映画女優LOVE」を連載中。また、人気海外ドラマの公式ホームページなどでも数多く活躍中。