番組の枠を超えた夢のコラボレーション クロスオーバー・エピソードの魅力に迫る!

なさんはクロスオーバーという言葉をご存知でしょうか? 本来は"交差"や"混合"などを意味する英単語なんですが、これがアメリカのテレビ業界だと、ある独立したドラマ番組に全く別のドラマ番組の登場人物が出てくることを言います。要は、ドラマ同士のコラボレーションというわけですね。人気のあるドラマ同士であれば注目度もおのずと高くなり、クロスオーバーの行われるエピソードは全米で話題を呼びます。

ういえば、日本のテレビ界でも昔から「仮面ライダー」や「ウルトラマン」などの特撮ヒーローものやアニメ作品で、しばしばこのクロスオーバーが試みられてきました。しかし、一般的なドラマ作品ではあまり例がありません。番組の放送形態や製作体制などの都合上、なかなかそういう企画は実現しずらい環境にあるのでしょう。

方、アメリカでは昔から、人気ドラマのクロスオーバー企画というものはさほど珍しくありません。特に最近は「CSI」シリーズなどのように、人気ドラマがスピンオフ番組を増やしていくビジネス展開、つまり米メディア界で言うところのフランチャイズ化が著しく、そうした作品群ではクロスオーバー・エピソードも半ば恒例行事のようになりつつあります。そこで、今回は米ドラマ界の内部事情や過去のユニークな実例などを絡めつつ、クロスオーバー・エピソードの魅力についてとことん迫ってみたいと思います。

ず、昔からよくあるクロスオーバーの典型的なパターンが、同じ製作会社やプロデューサー(クリエイター)の手によるドラマ同士のコラボというもの。特に近年の米ドラマ界は、知名度の高い大物プロデューサーが幾つもヒット作を抱える傾向が強いので、おのずとクロスオーバーもやりやすくなっています。当然、話題性による相乗効果も期待できる。長寿番組のマンネリ化解消なんかにはうってつけですね。ちなみに余談ですが、ドラマのフランチャイズ化が増えている理由も、このプロデューサー主導の制作体制にあると言えるでしょう。

てさて、そうした大物プロデューサーの中でも、先述した「CSI」シリーズのフランチャイズを展開するジェリー・ブラッカイマーなんかは、クロスオーバーを最大限に有効活用している一人ではないかと思われます。例えば、「CSI: 科学捜査班」シーズン2の第22話に「CSI: マイアミ」のメンバーが登場しますが、実はこれが「CSI: マイアミ」のパイロット版を兼ねていた。つまり、新しいスピンオフ番組を宣伝するためにクロスオーバーという手段を使ったんですね。さらに、「CSI: マイアミ」シーズン2の第23話では「CSI: NY」のメンバーを登場させ、同じようにパイロット版を兼ねさせています。その後も、マイアミとニューヨークの2度目のクロスオーバーがありましたし、2009年の11月には3番組の合同捜査なんていうファンにとっては夢のような企画も実現しました。

らに、ブラッカイマーは「CSI: NY」と「コールドケース」、「CSI: 科学捜査班」と「WITHOUT A TRACE/FBI失踪者を追え!」をクロスオーバー。まさに自社商品のフル活用といった感じですが、やはりそこはハリウッドきってのビジネスマンですね。

なみに、この「CSI」方式のフランチャイズ型クロスオーバーは、「NCIS〜ネイビー犯罪捜査班」とそのスピンオフ「NCIS:LA〜極秘潜入捜査班」、「グレイズ・アナトミー」とそのスピンオフ「プライベート・プラクティス」など、最近では他のプロデューサー作品でも行われています。

ブラッカイマー以外では、「アリーmyラブ」でお馴染みのプロデューサー、デヴィッド・E・ケリーもクロスオーバーを好んで使用。彼の場合は法律ドラマが多いので、「アリーmyラブ」のアリーが「ザ・プラクティス ボストン弁護士ファイル」に登場したり、その「ザ・プラクティス」とスピンオフ番組「ボストン・リーガル」のキャラがお互いを行き来したりと、同じジャンル同士という強みを生かしたクロスオーバーを楽しませてくれます。

こで、もしかしたらオヤッ? と気付いた方もいるかもしれません。実は、「アリーmyラブ」はFOX、「ザ・プラクティス」はABC、それぞれアメリカでは放送局が違うんですね。日本で言うならば、TBSのドラマとフジテレビがコラボするようなもの。ちょっとあり得ないようにも思えますが、日本と違ってアメリカではテレビ局がドラマの放映権しか持っていないため、同じプロデューサーの手掛けたドラマであれば十分に可能なんです。

ちろん、逆に同一の放送局で放送されていることが理由で実現したクロスオーバー企画も沢山あります。例えば、3年前にアメリカで話題になった「CSI: 科学捜査班」と「チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ」のクロスオーバーがこのパターン。確かに、放送局(CBS)以外は全く共通項の見当たらない異色の組み合わせですもんね(笑)。ちなみに、この企画ではそれぞれの脚本家チームが入れ替わって相手の番組のエピソード脚本を1話分書き、各番組の出演者が本人役で相手番組の該当エピソードにカメオ出演しました。

色といえば、お互いに制作会社も放送局も全く違うにも関わらず、同じ女優(リサ・クドロー)が出演しているというだけの理由でクロスオーバーしてしまった「フレンズ」と「あなたにムチュー」なんてのもありましたっけ。さらに、「ホミサイド/殺人捜査課」に初登場して以来、「X-ファイル」や「ブル〜ス一家は大暴走」、そして「LAW&ORDER: 性犯罪特捜班」など数多くのドラマを一人でクロスオーバーし続けている米ドラマ界きっての名物キャラ、ジョン・マンチ刑事なんてツワモノも。

にもかくにも、海外ドラマ・ファンにとってはお祭りイベント的に楽しめるクロスオーバー・エピソードですが、同時にその背景を知れば知るほど、米テレビ業界の懐の深さや独特の裏事情などが垣間見れるという面白さもあるように思います。さて、あなたはどんなクロスオーバー・エピソードを見てみたいですか?

文:なかざわひでゆき

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PROFILE

なかざわひでゆきHideyuki Nakazawa

映画/ポップ・ミュージック研究執筆家

1968年6月26日生まれ。旧ソ連のモスクワにて育つ。日大芸術学部映画学科および大学院卒業。'91年よりフリーライターとして映画や海外ドラマを中心に活動。『デジタルTVガイド』や『スカパー!TVガイド』、『TVガイド』など毎月多数の雑誌で執筆するほか、『スカパー!e2TVガイド』では9年近くに及ぶコラム「映画女優LOVE」を連載中。また、人気海外ドラマの公式ホームページなどでも数多く活躍中。

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