




既にご存知の方も多いかもしれませんが、今年の3月からマイアミで「チャーリーズ・エンジェル」のリメイク版シリーズの撮影がスタートしました。「チャーリーズ・エンジェル」('76〜'81)と言えば、かつて日本でも大変なブームを巻き起こした大ヒットシリーズ。"ファラ・カット"と呼ばれる髪型を大流行させたファラ・フォーセットをはじめ、歴代エンジェルからはジャクリン・スミスやシェリル・ラッドなどのトップ・スターが生まれました。10年ほど前には映画版シリーズも作られてヒットしましたが、テレビシリーズとして蘇るのは実に30年ぶりのこととなります。
実は、この「チャーリーズ・エンジェル」に限らず最近の米ドラマ界では、往年の人気ドラマのリメイクが秘かなブームとなりつつあります。その中でも最も成功しているのが、日本でも5月から放送の始まるアクション大作『HAWAII FIVE-0』。これは往年の犯罪ドラマ「ハワイ5-0」('68〜'80)のリメイク。アメリカでは昨年秋に放送が始まったばかりですが、新作ドラマの中では断トツの視聴率を誇っています。
また、やはり6月に日本で放送がスタートする「NIKITA/ニキータ」も好調。こちらはフランス映画「ニキータ」('90)をテレビリメイクしたスパイアクションで、'90年代にも一度テレビシリーズ化されて大ヒットしました。ほかにも、'08年に全米放送が始まった「新ビバリーヒルズ青春白書」も人気ですし、そのオリジナル版('90〜'00)の姉妹編「メルローズ・プレイス」('92〜'99)まで新シリーズとして復活しました。
このようにリメイクドラマの制作が盛んになりつつある背景には、やはり「24-TWENTY FOUR-」や「LOST」のような大型ドラマの相次ぐ終了が大きく影響しているのではないかと思います。相変わらず優れたドラマをコンスタントに送り出している米テレビ界ではありますが、その一方で「24」クラスのブロックバスター級ヒットを生み出すのは至難の業。なので、既に世界的な知名度のある人気ドラマのリメイクというのは、国際マーケットで展開する大作ドラマの企画として受け入れられやすいのかもしれません。ただ、やはりリメイクだからといってヒットするとは限らないですよね。そこで、リメイクドラマにおけるヒットの法則について検証してみましょう。
人気ドラマのリメイクというのは、「ミッション・インポッシブル」('96)や先述した「チャーリーズ・エンジェル」('00)、最近だと「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」('10)など、映画界では'90年代から枚挙にいとまありません。中には「おしゃれ㊙探偵」('61〜'69)をリメイクした「アベンジャーズ」('98)ような失敗作もありますし、どれもオリジナルのファンからは賛否両論あるものの、興行的には成功を収めている作品がほとんど。やはり、映画とテレビというメディアの違いから原作と切り離して考える観客が多いのかもしれません。
一方、テレビ界に目を移してみると、リメイク物は5〜6年前辺りから徐々に増えてきています。ただし、こちらは成功作と失敗作ではっきりと明暗が分かれている様子。例えば、「地上最強の美女バイオニック・ジェミー」('76〜'78)のリメイク版('07)、「ナイトライダー」('82〜'86)のリメイク版('08)はそれぞれ鳴り物入りでスタートしたものの、どちらも視聴率の伸び悩みから1シーズンで打ち切られてしまいました。先述した「メルローズ・プレイス」のリメイク版も同じく1シーズンで終了。その失敗の原因は、やはりキャスティングにあると言えるでしょう。
テレビドラマというのは映画と違って長い期間に渡り放送されるため、脚本や演出の良し悪しと並んで登場人物がいかに魅力的であるかが成功の鍵。すなわち、ヒットしたドラマには抜きん出たキャラクターがおり、それを演じる俳優とは切っても切れない関係になるわけです。なので、視聴者の脳裏にはバイオニック・ジェミー=リンゼイ・ワグナー、マイケル・ナイト=デヴィッド・ハッセルホフというイメージが強烈に焼き付いているわけで、それを払拭するのは極めて困難。同じことは他のドラマにも言えると思います。全く別の媒体である映画では通用しても、やはりお茶の間のファンにとってオリジナル版キャストのイメージは絶大なんですね。
それでは、なぜ「HAWAII FIVE-0」や「新ビバヒル」は成功しているのか? リメイクドラマがヒットする法則は、大きく分けて2つあると思います。1つは、制作サイドがオリジナルのイメージに囚われず、改めて作品全体を今風に再構築すること。「HAWAII FIVE-0」なんかはまさにこのパターンですし、リメイクではなくリ・イマジニングと銘打った「バトルスター・ギャラクティカ」や最近の「V」も同系列に当てはまると言えるでしょう。
もう1つは、オリジナル版のタイトルとコンセプトを受け継ぎ、全く新しい登場人物を配した続編もしくはスピンオフとして制作すること。「新ビバヒル」はこのタイプに当てはまるし、どうやら今度の「チャリエン」もスピンオフ的内容となる模様。そういえば、筆者が3年前にロスで「新ビバヒル」の取材をした際、現地制作会社の広報担当者から"これはリメイクじゃなくてスピンオフだから! 間違えないでね!"と再三念を押されました。当時はなぜそんなことにいちいちこだわるんだ?と首を傾げたもんでしたが、やはり彼らはリメイク作品の危険性というものを十分に理解していたんですね。
なお、今年は先述した「チャリエン」のほかにも、「ワンダー・ウーマン」('76〜'79)や映画「ティーン・ウルフ」('85)のリメイクシリーズがアメリカでスタートする予定。また、かつて世界中に一大ブームを巻き起こした愛憎ドラマの大傑作「ダラス」('78〜'91)も、ラリー・ハグマンやパトリック・ダフィーなどのオリジナルキャストを従えて、新シリーズとしてテレビ界へ戻って来るようです。最近は全米メディアもその話題ですっかり持ちきり。もしかすると、21世紀に再び「ダラス」旋風が巻き起こるかもしれませんね。しかし、「チャリエン」に「ダラス」の復活と、まるで'70〜'80年代に逆戻りしたみたいで不思議な気分です(笑)。
文:なかざわひでゆき

1968年6月26日生まれ。旧ソ連のモスクワにて育つ。日大芸術学部映画学科および大学院卒業。'91年よりフリーライターとして映画や海外ドラマを中心に活動。『デジタルTVガイド』や『スカパー!TVガイド』、『TVガイド』など毎月多数の雑誌で執筆するほか、『スカパー!e2TVガイド』では9年近くに及ぶコラム「映画女優LOVE」を連載中。また、人気海外ドラマの公式ホームページなどでも数多く活躍中。