テレビだからといって侮るべからず!驚異的な進化を遂げるSFドラマの今とは?

沢な制作費はもとより、撮影技術やアイデア、ストーリーなど、あらゆる面で他国の追随を許さないアメリカのテレビドラマですが、中でもその圧倒的な制作規模と技術力を存分に楽しめるのがSFのジャンルと言っていいかもしれません。日本でも大ヒットした「LOST」('04〜'10)や「HEROES」('06〜'10)の終了でこの種の大型SFドラマのブームは終息傾向にあるとはいえ、'80年代の伝説的傑作ドラマをリメイクした「V」('09〜'11)やポリティカル・アクションとSFを絡めた「THE EVENT/イベント」('10〜'11)などが相次いで日本へ上陸。世界中で熱狂的ファンを生みだしている「FRINGE」('08〜)も、相変わらず根強い人気を誇っています。ちょっと前までは"メジャー映画並のスケール"なんてのがこうした作品を宣伝する際の常とう句でしたけど、もはやそんなのは常識。「V」や「FRINGE」なんかを見ていると、その見事な脚本や独特の世界観などを含めて、とうとうテレビドラマもここまで来たか…との感慨を抱かずにはいられません。そこで、今回はジャンルの歴史を早足に振り返りながら、驚異的な進化を遂げているSFドラマの"今"に迫りたいと思います。

つてはSFというとテレビドラマには向かないジャンルというのが定説だったそうです。その主な理由というのは、やはり予算や技術の問題。物理的に映画のような特撮技術を使うことが不可能であったため、どうしても子どもだましの代物にしかなり得なかったわけです。それでも、テレビ草創期にはちょっとしたSFドラマブームがありました。ただし、あくまでも子ども向けのヒーロー番組として。その中で最もヒットした"Captain Video and His Video Rangers"('49〜'55)は、アーサー・C・クラークやアイザック・アシモフといったSF小説の大家が脚本に参加していたものの、生放送であるがために特撮らしい特撮は一切使えず、作品のクオリティーそのものは酷い代物だったそうです。

かにも、戦前に連続活劇映画で好評を博した「フラッシュ・ゴードン」や「バック・ロジャース」などの宇宙ヒーローたちが子ども向けSFドラマとしてよみがえりましたが、そのおかげで長いことSFと言えば子どもの見るジャンルという偏見が定着することになったわけです。日本のテレビ草創期に輸入されてヒットした「スーパーマン」('52〜'58)もその系譜に入りますね。

'60年代には「宇宙家族ロビンソン」('65〜'68)や「原子力潜水艦シービュー号」('64〜'68)などのSFアドベンチャー作品も人気を集めましたが、いずれもやはり子どもをメインターゲットにしたファミリー向け。大人の鑑賞に耐えうる正統派SFドラマというのは、恐らく「宇宙大作戦(スタートレック)」('66〜'69)が最初だったのではないかと思われます。

球を含む様々な惑星が連邦国家を構成する23世紀を舞台に、カーク船長率いるU.S.S.エンタープライズ号が宇宙へ向けて未知の旅に出るという物語。その中で、当時の世界情勢や社会問題を巧みに反映させた奥の深いエピソードが繰り広げられていきます。その後のSFドラマに多大な影響を与えたと言われ、'80年代には映画版シリーズも作られて大ヒットした不朽の名作「宇宙大作戦」。ところが、実は放送当時の視聴率は全く奮いませんでした。質の高い社会派のストーリーが、逆に難解だという印象を与えてしまったんですね。冷戦時代の社会不安を異星人の地球侵略計画になぞらえた秀作「インベーダー」('67〜'68)も、その高い評価とは裏腹に短命で終わってしまいました。メッセージ性の高いSFドラマというものに、まだ一般の視聴者が慣れていなかったのかもしれません。

'70年代には映画「スター・ウォーズ」('77)の世界的ブームに乗って、「宇宙空母ギャラクチカ」('78〜'80)や「キャプテン・ロジャース」('79〜'81)というSFX(特殊効果)満載のスペースオペラ作品が相次いで放送されたものの、技術的な見せ場ばかりに気をとられて脚本や演出がおろそかになってしまったことが災いし、いずれも視聴率を伸ばすことは出来ませんでした。しかし、爬虫類型の異星人による大規模な地球侵略を描いたミニシリーズ「V」('83)が大ヒットし、その評判の高さからレギュラーシリーズ化もされた。さらに、映画版で人気を呼んでいた「スタートレック」のテレビ復活作「新スタートレック」('87〜'94)がファンからも批評家からも大絶賛され、いよいよSFドラマの黄金期が訪れます。

イバーパンク的世界観の中でメディアと権力を鋭く風刺した「マックス・ヘッドルーム」('87〜'88)、異なる宇宙種族同士の争いと平和への模索を描いた「バビロン5」('93〜'99)、アメリカ軍VSエイリアンのバトルを通して壮大な文明論にまで物語を展開させた「スターゲイト SG-1」('97〜'07)などの野心作が続々と生まれ、「スタートレック」シリーズも「スタートレック:ディープ・スペース・ナイン」('93〜'99)、「スタートレック:ヴォイジャー」('94〜'01)などのフランチャイズを順調に展開。その頂点を極めたのが、日本でも大ブームとなった「Xファイル」('93〜'02)と言えるかもしれません。

して、近年も先述したように「LOST」や「HEROES」といった変化球的なSFドラマが話題を集め、ハリウッドの大作映画と比べても遜色のないビジュアルで視聴者を圧倒。ただ、実を言うとこの数年間でSFドラマの制作本数は急速に減少しています。ブームの沈静化に加えて、世界的な不況による制作費の締め付けも影響していると考えられるでしょう。

れでも、SFドラマ全体のクオリティーは飛躍的に進歩しつつあります。なんといっても圧巻だったのは、「宇宙空母ギャラクチカ」をリメイクならぬ"リ・イマジニング"と銘打って再構築した「GALACTICA/ギャラクティカ」('04〜'09)。オリジナルの基本コンセプトだけを抽出し、人類対人型ロボットの壮絶な戦いの物語を文明論的な一大叙事詩にまで昇華させたストーリーは、実に見応えのあるものでした。

メイク版「V」にしても、ナチスの台頭と支配、侵略、それに対するパルチザンの戦いをモチーフにしたオリジナル版とは打って変わり、情報操作やイメージ戦略を駆使したエイリアンの巧みな地球侵略計画を通じて、グローバル化した現代社会における文化や思想の侵略というものに強い警鐘を鳴らしています。また、当初は非科学的な超常現象の謎を最先端科学にて解明していくという「Xファイル」的内容だった「FRINGE」ですが、シーズン3では我々の住む世界とパラレルワールドとの対立を軸にしながら、人間という存在の極めて複雑な本質というものにグイグイと迫っていきます。

れらの作品に共通しているのは、もはやメジャー映画並のVFX(視覚効果)なんていうのは当たり前だということ。そればかりか、長期間に渡って人間ドラマを掘り下げていくことが出来るというテレビの利点を存分に生かし、映画では表現することのできない領域にまで世界を広げつつあるわけです。見る側の知性や教養、読解力を必要とするという点で、単純明快な往年のSFドラマとは決定的な違いがあるわけですが、それだけ今の視聴者は目が肥えているのだと言っていいでしょう。また、視聴者の知的レベルを見くびらない制作側の姿勢というのも高く評価されるべきだと思います。

後も、スピルバーグが制作総指揮を手掛けた"Terra Nova"('11〜)や"Falling Skies"('11〜)といった大型のSFドラマが日本へと上陸する予定。ますます、ジャンル的に面白くなっていくことが期待できます。なお、アメリカ以外ではイギリスでも、「ドクター・フー」('63〜'89、'05〜)や「謎の円盤UFO」('70〜'71)、「スペース1999」('74〜'75)、「宇宙船レッド・ドワーフ号」('88〜'99)、「秘密情報部トーチウッド」('06〜)といったSFドラマの名作が多数生まれていることを、最後に申し添えておきたいと思います。

文:なかざわひでゆき

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PROFILE

なかざわひでゆきHideyuki Nakazawa

映画/ポップ・ミュージック研究執筆家

1968年6月26日生まれ。旧ソ連のモスクワにて育つ。日大芸術学部映画学科および大学院卒業。'91年よりフリーライターとして映画や海外ドラマを中心に活動。『デジタルTVガイド』や『スカパー!TVガイド』、『TVガイド』など毎月多数の雑誌で執筆するほか、『スカパー!e2TVガイド』では9年近くに及ぶコラム「映画女優LOVE」を連載中。また、人気海外ドラマの公式ホームページなどでも数多く活躍中。

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