日本人の知らない日本が見えてくる!?アメリカンドラマで描かれるエキゾチック・ジャパン

回はアメリカのドラマにおけるロケ地と舞台設定の"舞台裏"について触れたわけですが、今回はそこから広げてアメリカのドラマで描かれる日本にスポットを当ててみたいと思います。

存知の通り、アメリカのドラマは日本をはじめ世界各国で放送されており、もはやそのマーケットはアメリカ国内にとどまりません。特に近年は膨大な制作費を注ぎ込んだ大作も増えており、そもそもアメリカ国内だけでは利益が回収できないという作品も少なくないんですね。なので、おのずと企画当初から世界で売ることを視野に入れ、舞台設定やキャストを国際色豊かにした作品が増えているんです。近年のアメリカのドラマではイギリスやヨーロッパのみならず、インドやブラジルに絡んだエピソードもよく見られますが、その理由はストーリー上の必然性もさることながら、それらの国々が経済的に力を持っており、なおかつアメリカのドラマをよく見てくれるお得意さんだという側面もあるわけです。

して、当然のことながらアメリカのドラマが大好きな国・日本もそこに含まれるんですね。それどころか、日本はアジアにおけるアメリカンドラマの最重要マーケットといっても過言ではないかもしれません。キーファー・サザーランドが来日時に"アジアでの「24」人気は日本から火がついた"と語っていたのも、決して単なるリップサービスではなく、日本の市場にそれだけの影響力があるということなんです。

なみに僕自身、取材でアメリカのドラマ撮影現場へ招いてもらう機会がたびたびあるのですが、中にはアジアから来たジャーナリストは日本人だけというケースもあったりします。それほど日本の視聴者は大切にされているわけで、そのことを我々は誇りに感じてもいいと思いますね。逆に、違法ダウンロードなどの問題が根強い中国や韓国の取材陣とは一度も会ったことがありません。

ょっと話が横道に逸れましたが(笑)、ここからが本題です。もともとアメリカには日系人が数多く住んでおり、さらに戦後の日米は同盟関係にあることから、アメリカのテレビドラマにも早い時期から日本人のキャラクターが登場してきました。とはいっても、ほとんどが召使や運転手などのチョイ役。本格的に日本という国をクロースアップした最初の作品は、恐らく'60年代の人気スパイドラマ「アイ・スパイ」('65〜68)ではないかと思います。

れは国際的なテニス選手とそのマネージャーに扮したCIAスパイのコンビが、世界各地を巡りながら諜報活動を繰り広げていくという作品。数年前に映画でリメイクされました。実はこれ、アメリカで最初に本格的な海外ロケを敢行したテレビドラマであり、香港やイギリス、イタリア、スペインなどと並んで日本でもロケ撮影が行われたんです。日本が舞台となるエピソードは幾つかあって、主演のロバート・カルプとビル・コスビーが銀座や有楽町、築地などを駆け巡るほか、日光東照宮を散策しながら美女とデートするなんてロマンチックなシーンも。ただ、どうやら屋内シーンの多くがロスのスタジオで撮影されたらしく、旅館の部屋着に火消の半纏が使われていたり、大浴場の床がなぜか全面畳張りだったりという妙な勘違いも結構目立ちます。まあ、この手の勘違いは昔から映画でも多いですよね。

降、最近までは日本でロケ撮影されたアメリカのドラマといえば、江戸時代の日本を舞台にした「将軍 SHOGUN」('80)くらいのものでしたが、エピソードの中で日本や日本人が描かれることは少なくありませんでした。「女刑事ペパー」('74〜78)では日本の売春組織による白人女性の人身売買が描かれましたし、ハワイを舞台にした「ハワイ5-0」('68〜80)や「私立探偵マグナム」('80〜88)などでは日本のヤクザが敵役として登場することもありました。確か、「マイアミ・バイス」('84〜90)にもヤクザが出てきましたね。そう、ある時期までの日本はヤクザや売春というネガティブなイメージで捉えられることが多かったんです。

んな中、警察の検視官を主人公にした犯罪ドラマ「ドクター刑事クインシー」('76〜83)では、主人公クインシーの優秀な右腕としてサム・フジヤマという日系人ドクターがレギュラーで登場。演じる日系人俳優ロバート・イトーがとてもハンサムかつスマートで、当時としては非常に珍しい二枚目のアジア人キャラクターとして描かれていました。いずれにせよ、かつての日本はアメリカ人にとって身近なようでいて実は遠い国だったわけですね。

かし、21世紀に入ってからはインターネットなど情報網の発達によって世界の距離が狭まったこともあり、以前に比べるとだいぶ日本文化や日本人への理解が深まって来たように思います。銀座など都内各所で撮影された「FBI失踪者を追え!」('02〜09)や、隅田川のほとりや新宿で撮影された「サンクチュアリ」('08〜)のように、日本で実際にロケをする作品も少しづつながら増えました。とはいえ、明らかにロサンゼルス周辺を日本に見立てた「HEROES」('06〜10)はやっぱりどこか変だし、同じくロスで撮影された「フラッシュフォワード」('09〜10)でもいったいいつの時代ですか!?という珍妙な日本が描かれていて、なんだかんだ言ってもまだ誤解は多いな〜と実感することもしばしば。

れでも、美術デザインなどに携わる現場のスタッフは日本のことをかなり勉強していますし、「HEROES」のマシ・オカさんや「LOST」('04〜10)の真田広之さんなどによれば、日本語のセリフも含めて日本人出演者のアドバイスもだいぶ取り入れてくれるようになったそうです。実際、「HEROES」なんかは英語で書かれたセリフをマシ・オカさんや田村英里子さんが日本語に翻訳したとのこと。ただ、日本人役を演じる俳優には他のアジア人も含まれているので発音がおかしくなるのは仕方ないですし、あくまでもアメリカの視聴者が思い描く日本のイメージが最優先されるため、どうしても日本人には違和感のある日本が描かれてしまうんですね。

かしながら、日本人や日系人の俳優が重要な役を演じる機会も増えましたし、オタク文化や食文化の積極的な海外輸出によってサムライやヤクザだけではないリアルな今の日本文化というものも浸透しつつあります。最近のアメリカでは「America's Next Top Model」や「I Survived a Japanese Game Show」などのリアリティー番組でクールかつ刺激的な日本が紹介されることも増えましたが、同じようにドラマで等身大の日本が描かれる機会もさらに増えていくのではないでしょうか。

文:なかざわひでゆき

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PROFILE

なかざわひでゆきHideyuki Nakazawa

映画/ポップ・ミュージック研究執筆家

1968年6月26日生まれ。旧ソ連のモスクワにて育つ。日大芸術学部映画学科および大学院卒業。'91年よりフリーライターとして映画や海外ドラマを中心に活動。『デジタルTVガイド』や『スカパー!TVガイド』、『TVガイド』など毎月多数の雑誌で執筆するほか、『スカパー!e2TVガイド』では9年近くに及ぶコラム「映画女優LOVE」を連載中。また、人気海外ドラマの公式ホームページなどでも数多く活躍中。

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