Vol.65
圧勝劇 〜フォーミュラ・ニッポン2011年シーズン統括〜
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2011年シーズンのフォーミュラ・ニッポンは、東日本大震災の影響で予定より1か月遅れの開幕となった。(C)Formula NIPPON

 東日本大震災の影響を受け当初の予定より1か月遅れで開幕した2011年のフォーミュラ・ニッポンだが、予定外はこれだけに留まらなかった。後半戦でも大型台風の上陸により第5戦が中止になるなど、波乱に満ちたシーズンとなった。

 予想外は戦況についてもそうだった。シリーズをリードしたのはここ数年常に2強を築いてきたインパルとナカジマの各エース、ディフェンディングチャンピオンのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラでも小暮卓史でもなく、トムスのアンドレ・ロッテラーだった。開幕戦、第3戦を制し第4戦で2位。ランキングトップでシーズンを折り返すと、後半戦でもその勢いは留まることなく第6戦でも勝利。圧倒的優位に立ち最終戦を迎えたのである。この時点でポイントはロッテラーが38点。2位がチームメイトの中嶋一貴で34点。3位オリベイラが25点。ダンディライアンの塚越広大が23点。最終戦で獲得可能なポイントは通常の倍近い18ポイントということでこの4人に権利が残されていたわけだが、ロッテラーの今季の活躍ぶりを見ていた者にとっては、現実的に可能性があるとすれば中嶋のみがかすかに…といった予想であっただろう。中嶋も初参戦ながら優勝1回に加え全ての戦いで表彰台を獲得するなど安定した速さを見せていたが、課題は予選。抜きにくいもてぎでのスプリント2本の戦いとあっては、これまでのように予選で中団に埋もれてしまえば、可能性はないに等しかった。

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圧倒的な強さを見せたトムスの両ドライバー! ドライバーズランキングはA.ロッテラー(左)が王者に輝き、元F1ドライバーの中島一貴(右)が2位に入った。(C)Formula NIPPON
▼トムスで始まりトムスで終わった2011年

 レース距離やピットイン義務の有無等、各戦が異なるレースレギュレーションであることで面白味が増したフォーミュラ・ニッポン。最終戦では距離とルールの異なる2レース制が採用された。第1レースが110km(23周)のピット義務なし、第2レースが163km(34周)のタイヤ4本交換義務というものだ。そしてノックアウト方式による予選で、Q1の順位が第1レースのグリッドとなり、Q3までの総合順位が第2レースのグリッド。したがって、従来の戦いではバトルの序章にすぎなかったQ1からデッドヒートが展開されることになる。ところがやはり、ここでも主役はロッテラーだった。プレッシャーをものともせず、見事に両方のポールを奪って見せるのである。そして第1レースは予選で2位に入った中嶋とのマッチレースとなり盛り上がりを見せたが、最後までトップを譲ることなく第2レースを待たずして初タイトルを決める。さらには消化試合となった第2レースも、スタート直前に振り出した雨により大荒れとなる中、これに全く動じることなく連勝。王者らしくシーズンを締めくくったのだった。

 ロッテラーは第2戦を欠場しており、そこで中嶋が勝利したことと第5戦が中止になったことで最終戦までタイトル決定が持ち越されることとなったが、この2つが通常であったとすればもっと早々に決着がついていたであろうことは誰の目にも明らかである。実力が拮抗しているといわれるフォーミュラ・ニッポンで、これほどまでの圧勝劇は稀なことである。

 ロッテラーは2003年より、フォーミュラ・ニッポンに参戦開始。初勝利を挙げた翌年以降常にタイトル争いに加わりながらも、同時期に来日した外国人ドライバー、ブノワ・トレルイエやロイック・デュバルがタイトルを獲得したのに対し、栄冠はここまでロッテラーに輝くことはなかった。今季、その2人のライバルは不在。しかし決してそれが初戴冠の要因ではない。ロッテラーのドライビング技術、レース巧者ぶりに年々磨きがかかり円熟に達していたことはもちろん、トムスというチーム自体も参戦6年目を迎え、いよいよ名門チームの真の実力が花開ひらいたと見るべきだろう。

 スーパーGTや全日本F3ではトップの実績を持つトムスだが、フォーミュラ・ニッポンは一筋縄ではいかない。参戦初年度の2006年はロッテラーが2勝を挙げたものの、シーズンを通しての安定感はなかった。要因はやはりデータ不足。2006年よりワンメイクマシンは新たなモデルとなっていたが、2003年から使用されていたマシンの正常進化版であったために、過去3年間のデータは重要だった。これがない新参チームはこの部分で圧倒的に不利であったのである。ところが、2009年から採用の「スウィフトFN09」はそれまでとは大きく異なるマシン特性であり、ここから状況は一変。全てのチームが同じ位置からスタートすることになり、本来のチーム力をより発揮しやすくなったことは言うまでもない。またチーム力は、レギュレーション変更でも活きることとなった。レース距離が短くなったことで、ピットイン義務のレースでは今までよりピットワークの速さや正確さ、タイミング等がよりクローズアップされることになった。トムスのピットワークがいかに秀逸であったかは、今季全般的に予選成績が悪かったチームメイトの中嶋が、決勝では全戦表彰台を獲得したという事実が証明するものである。

▼システムEでレースは変わるのか

 さて来シーズンだが、マシンレギュレーションに大きな変化がないことでやはりトムス優位なのだろうか。いや、決してそうとも言えないのがフォーミュラ・ニッポン。確かに獲得ポイントの上ではトムスの圧勝だったが、タイムは相変わらず僅差であった。今季、予選ではロッテラー以外に山本尚貴、塚越、オリベイラ、大嶋和也がトップを奪っている。また特別戦のスプリントカップではオリベイラが勝利。いずれもタナボタ的な結果ではなく、しっかりとそのセッションで速さを見せた結果である。やはり混戦と見る方が良さそうだ。

 また勢力図そのものに影響があるかは分からないが、マシンにおいてもある変化が訪れる予定である。従来のオーバーテイクシステムとは別に、新たな電子デバイス「システム-E」が搭載されるのである。システム-Eは電池とモーターの力で50馬力程度を数秒間アシストするというもので、充電はブレーキング時の制御により行われる。サーキットにもよるが、約3周に1回ほど使用できるようだ。オーバーテイクシステムはドライバーの心理状態が見る側に伝わってくるなどレースをより盛り上げることに大いに貢献したが、決定的なオーバーテイクの武器というまでには至っていない。50馬力が追加されることにより、果たして真の武器となりえるのだろうか。もともとは2012年開幕から搭載される予定だったようだが、これもまた震災の影響によりテストがキャンセルとなるなど開発が遅れた。主催者によれば来期中の実戦投入を目標にしているとのことだが、終盤戦のクライマックスシーンで投入され、より戦いがスリリングとなれば、タイトル争いもより楽しめそうだ。

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