人喰いザメが漂う海底が舞台のスリリングな脱出劇『海底47m』

リアルなサメの恐怖を追求するパニックスリラー『海底47m』
「絶望のどん底」に突き落とされた姉妹の壮絶な運命…

2021/11/01 公開

海底47mの極限下で繰り広げられるサバイバル

スティーヴン・スピルバーグ監督による動物パニック映画の金字塔『JAWS/ジョーズ』(1975年)から45年超が経った今も、サメ映画はコンスタントに作られ続けている。このジャンルにおいてはワニ、ヘビ、クモ、クマなどの凶暴生物も根強い人気を誇るが、サメ映画は量のみならず、バリエーションの豊富さにおいても群を抜いている。とりわけ2000年代以降はサメの巨大化、生物兵器化、さらには奇想天外な突然変異が相次いでおり、自然災害とサメの脅威を合体させた『シャークネード』シリーズ(2013年~)、どんどん増えるサメの頭の数が売りの『ダブルヘッド・ジョーズ』(2012年)や『トリプルヘッド・ジョーズ』(2015年)といったアサイラム社の珍品も長寿化した。そもそもサメ映画は単純なジャンルなので、新味を打ち出しづらい。それならばと開き直って荒唐無稽なアイデアを前面に押し出し、サメ自体をモンスター化させたのがアサイラム社の方針だった。

海面で助けを呼ぶ人々のパニック光景は、サメ映画お約束のひとつ

その一方で、リアルなサメの恐怖を追求した作品も作られている。『オープン・ウォーター』(2004年)では、カリブ海でのダイビングツアーに参加した夫婦がスタッフの確認ミスによって、サメがうようよいる海域に置き去りにされてしまう。派手な見せ場は一切ないのだが、ひたすら海面を漂流する夫婦の心身両面の極限体験が生々しく描かれ、なおかつこれが実話であることも話題を呼び、世界的な大ヒットを記録した。また、ドイツで製作された『オープン・ウォーター2』(2006年)の登場人物は、メキシコ湾沖でクルーズを楽しむ男女6人。赤ん坊のみを残して全員が海に飛び込んだ彼らは、気がつけばサメから逃げられなくなっていた。何とハシゴを下ろすのを忘れ、ヨットの上に戻れなくなってしまったのだ!

比較的最近ではジャウマ=コレット・セラ監督、ブレイク・ライヴリー主演の『ロスト・バケーション』(2016年)もリアル系のサメ映画だった。穴場的な秘密のビーチに一人で訪れた医学生の女性が、岸から200m離れた小さな岩場で孤立。『オープン・ウォーター』同様、サメそのものには付加価値を与えず、現実に起こりうるかもしれない状況設定と、迫真のサスペンス&サバイバル描写でぐいぐい見せきる作品である。

海中にとどまるはずのサメ鑑賞用ケージが海底へ落下!姉妹は絶体絶命のピンチに

イギリス人のヨハネス・ロバーツ監督が放った今回のお題『海底47m』(2017年)もまた、そんなリアル系サメ映画の系譜に連なる一作だ。バカンスでメキシコを訪れた若い姉妹リサとケイトが、ケージに入って水中に潜り、野生のサメを鑑賞するツアーに参加。ところが水深5mでサメの迫力を無邪気に満喫していた彼女たちは、クレーンの故障によってケージごと落下してしまう。かくして海底47m、まさしく「絶望のどん底」に突き落とされた姉妹の壮絶な運命が描かれていく。

サメ映画史上でも珍しい「どんでん返し」の衝撃

刻一刻と減っていく酸素ボンベの残量が時限爆弾のカウントダウンのように数字で示され、閉所恐怖症的な視界不良のシチュエーションもスリルを増幅させる。「47mなら何とか自力で泳いで、水面に上がれるのでは?」と思う向きもあろうが、無理やりそんなことをすれば潜水病になり、下手すれば脳に障害を負ってしまう。しかも飢えた人食いザメが、浮上中にいつ襲ってくるかわからない。

脱出を何度か試みるも、そのたびに危険に見舞われる

脱出しようにもケージの外に出られない。しかし、酸素残量がゼロになれば命も尽きてしまうので、ただ引きこもって救助を待つわけにもいかない。この究極のジレンマをノンストップで描き続ける本作の重要なポイントは、幾度となくアタックを仕掛けてくるサメ以上に、姉妹のキャラクターにある。そもそも彼女たちがこのダイビングに参加した理由は、妹ケイトが恋人にフラれた姉リサを励ますためだった。その恋人を見返すため、インスタ映えするサメツアーを楽しもうというわけだ。一見どうでもいい理由のようだが、快活で何事にもポジティブなケイト、内向きでネガティブ思考のリサという対照的な性格付けが、単なる姉妹の絆や成長のドラマにとどまらず、のちのち衝撃的なまでに意外な展開を招き寄せるのだ。

シャークケージダイビングで非日常的な体験を楽しみたいと考えた2人だが…

多くのホラーやスリラーがそうであるように、ストーリーの最終的な焦点は登場人物が生きるか死ぬかだ。本作の場合、考えうるエンディングのパターンは次の4つである。①姉妹そろって歓喜の生還を果たす。②姉のみが生還し、妹が死亡。③妹のみが生還し、姉が死亡。④姉妹そろって無残な死を遂げる。

サバイバル映画として本作の優れた点は、終盤ギリギリまで上記の4パターンすべての可能性が保たれることだ。先ほど筆者は「サメ映画は単純なジャンル」と書いたが、本作ではラスト数分、あらゆる観客の認識をひっくり返すプロットのひねりが炸裂する。これには心底、仰天させられた。サメ映画の歴史上珍しい「どんでん返し」を、ぜひとも手に汗握って目撃してほしい。

4人の女子高生が盲目の巨大ザメと対峙する第2弾『海底47m 古代マヤの死の迷宮』も作られた

文=高橋諭治

高橋諭治●映画ライター。純真な少年時代にホラーやスリラーなどを見すぎて、人生を踏み外す。「毎日新聞」「映画.com」「ぴあ+〈Plus〉」などや、劇場パンフレットで執筆。日本大学芸術学部映画学科で非常勤講師も務める。人生の一本は『サスペリア』。世界中の謎めいた映画や不気味な映画と日々格闘している。

<放送情報>
海底47m
放送日時:2021年11月19日(金)23:00~、30日(火)9:30~

海底47m 古代マヤの死の迷宮
放送日時:2021年11月26日(金)23:00~、30日(火)11:15~
チャンネル:スターチャンネル1

(吹)海底47m
放送日時:2021年11月3日(水・祝)15:10~、8日(月)13:00~

(吹)海底47m 古代マヤの死の迷宮
放送日時:2021年11月3日(水・祝)17:00~、9日(火)13:50~
チャンネル:スターチャンネル3

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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