きっと美味しいものを食べて、恋をしたくなる『食べて、祈って、恋をして』

イタリア、インド、バリでパワーチャージ! 
『食べて、祈って、恋をして』が映す「人生の真理」

2022/02/21 公開

無味乾燥になってしまった人生をリセットするために、いざ旅へと出発!

映画の影の主役ともいうべきロケーションに注目し、「映画で旅をする気分を味わおう」というこのコラム。今回紹介するのは、ジュリア・ロバーツ主演作『食べて、祈って、恋をして』(2010年)。そこでしか味わえない「土地の息吹」を感じたら、きっと旅に出たくなる!

食はもちろん、どの訪問先も景色にうっとり…

2010年に公開された『食べて、祈って、恋をして』は、アメリカ人作家のエリザベス・ギルバートが世界各国を旅した回顧録「食べて、祈って、恋をして」を原作とするラブドラマだ。離婚によって自分を見失ってしまった主人公が、旅先で様々な人と出会い、自分なりの「人生の真理」を見出していく。作家を生業とする傷心の主人公リズにジュリア・ロバーツが扮し、ジェームズ・フランコ、リチャード・ジェンキンス、ハヴィエル・バルデムが彼女を取り巻く男性陣役で出演。監督はNetflixオリジナルのミュージカル映画『ザ・プロム』(2020年)で10年ぶりに映画監督に復帰したライアン・マーフィー。製作はブラッド・ピット率いる「PLAN B」ということで、ヒリヒリとした女性心理も巧みに織り交ぜた大人のトラベル・ムービーになっている。

ライターのリズは、バリ・ウブドに住む薬剤師クトゥ・リエの元を訪れる。クトゥの占いによると、彼女は世界を旅することになり、いったん全てを失うが復活して再びバリに帰ってくるのだという。そして半年後、ニューヨークに住むリズはほどなく結婚生活が破綻して泥沼の離婚調停へ。その最中に知り合った若き俳優デヴィッド(フランコ)と惹かれ合うも悲しい別れを経験。哀しみによって何もかもが停滞してしまったリズは、人生をリセットするため、航空券3枚を握りしめ1年間の旅に出る。

歴史を感じさせる石畳や建造物が立ち並び、イタリアらしい雰囲気が広がる!

リズがまず向かったのはイタリアだ。この国を選んだのはイタリア語を習得するためだったけれど、教養あふれる大人女性の傷心旅にローマはまさに打ってつけではないかと思う。ささくれだった心にそっと寄り添うような、歴史を感じさせる重厚感のある建造物や、石畳が敷き詰められた雰囲気のある街並み、そして開放感のあるレストランのオープンテラスはなんともおしゃれで、観ているだけで心を浮き立たせてくれる。

カジュアルなレストランもおしゃれな雰囲気で、一緒にピザを食べている気分に

そしてイタリアが魅力的なのは、「美食の国」というもう1つの顔だ。カフェのカプチーノ&ケーキにはじまり、ジェラート、バジルの乗ったトマトソースパスタ、ナポリのピッツァ、炒めたアーティチョーク、生ハムとメロン、ナスと燻製のリコッタ、兎のラグーのパッパルデッレ…と、垂涎のイタリアングルメが続々と登場して、観ているこちらも食欲を刺激されっぱなしに。

さらに旅のおもしろさといえば、現地で出会う異なる文化を持つ人々との交流だろう。劇中では、北欧から来た気さくな女性と知り合い、その伝でイタリア語教師も獲得。現地で友人ができれば旅は飛躍的に充実する。とりわけ収穫となったのは、イタリア男たちが口をそろえて語る「何もしないことの歓び、それがイタリア人」という言葉。まさに人生を謳歌することを第一とするラテンの考え方にニヤリとしてしまうけれど、時には贅沢に時間を使って自分を甘やかすことも必要なのは誰しも共感できるところ。そんな、自分とは違う考えを持つ他者から受ける刺激もまた、旅行ならではの楽しみだ。

現地で出会った友人たちとの出会いがリズを少しずつ変えていく

そんな素敵な仲間たちと別れる寂しさを噛みしめながらリズが次に向かったのは、エネルギッシュなインド。舗装されていない道路に舞う土ぼこりや渋滞する車のクラクション、タクシーの窓ガラスをたたいて手を差し入れてくる子どもたち。この地には熱気あふれるカオスが渦巻き、良くも悪くもエネルギーを注入してくれる。

素朴ながら、エネルギッシュな雰囲気を持つインド

ここでのリズの目的は、かつての年下の恋人デヴィッドに影響され、ハマってしまったヒンズー教を習うこと。彼女はアシュラム(修行所のある寺院)に滞在して「メディテーション(瞑想)」にふけるのだが、いまひとつ集中できない。そんな時に出会い、リズに「祈り」の意義を教えてくれたのが、テキサスから来た偏屈な修行者リチャード(ジェンキンス)と、望まぬ結婚をさせられる17歳のインド人少女の存在だ。リチャードは何かと皮肉を言ってリズにつっかかるが、デヴィッドへの未練で苦しむ彼女に「転機を迎えた君は、いつか人知を超えた愛で満たされるだろう」とアドバイスする。

この章では、リズが心の平安を得るまでの軌跡とスピリチュアル&女性差別という慈愛の国・インドの持つ二面性が描かれている。神を肯定し、全てを許容する懐がありながらも、大学に進学して心理学を学びたかったという少女の願いが聞き届けられることはない。

現地でしか味わえない体験を、観て楽しめるのも本作の魅力

そんな、背景の異なる2人との出会いに動かされていくリズだが、ここではインドでの「体験」を通じて彼女の変化を表している。例えば、現地について早々、リズは「グルギータ」と呼ばれる詠唱の時間に参加する。これはヨガでも使用される呪文のようなもので、心を鎮めたい時に唱えられる。また、その後、24時間開いているというエアコン付きの瞑想室で瞑想に挑戦するも、1分と経たずあきらめてしまうリズの姿も描かれている。こういったイタリアとはまた異なる、自分自身と時間をかけて丁寧に向き合う文化は、インド独自のものだろう。建造物やファッションにはエスニックな雰囲気が漂い、人々は様々な場所で修行などに励んでいる。

これらの経験で少しずつ変わっていくリズは、複雑な思いを抱える真っ赤な結婚衣装を身にまとった若き友人へ、“グルギータで彼女の幸せを心から祈る”ことをはなむけとして贈るのだった。

イタリア、インドを経て、再びバリに戻った彼女が感じるもの

こうして食べて、祈ったリズは、ついにバリ・ウブドに戻ってくる。ライス・テラスやモンキー・フォレスト、ヤシの並木道、ヒンズー教の信仰を表す「割れ門」など、ここにしかないバリ特有の景色が旅情を誘う。

田園や雑木林が広がり、穏やかな空気感に包まれる

さっそくリズは、師と仰ぐクトゥ・リエのもとへ(余談だが、クトゥは世界的に有名な占い師で、惜しむらくも2016年に亡くなった)。そしてリズの来訪を喜んだ彼は、「バリは天と地が出会う場所だから、調和が完璧である」こと、「神と煩悩がほどほどなのがちょうどいい」のだと告げる。そしてリズは彼の言葉通り、朝はガゼボでインドの瞑想、昼はバリを楽しみ、1日の終わりに新しい瞑想に勤しんで、ようやく念願叶って「調和」を手に入れる。

旅先で出会った考え方の違う人々との交流も旅の醍醐味!

そしてひょんなことからセクシーなフェリペ(バルデム)と運命的に出会う。リズがフェリペと再会を果たした夜のバーで飲むライムたっぷりのテキーラのロック、フェリペが晩餐として料理してくれた魚のバーベキュー、2人きりの海水浴、自然とつながるバリ家屋での鳥の鳴き声や虫の音を聞きながらの読書など、ウブドでも大人の女心をくすぐる仕掛けが満載。日本ではどうしたって味わえない、その土地ならではの空気が画面越しにも伝わってくる。

そしてリズはフェリペと愛し合うことで満たされるが、また新たな悩みを抱え込むことになる。だが、喜怒哀楽あってこその人生。人はそうして長い旅路の中でつまずき、何かを学びながら歩んでいくのだと思う。

イタリア、インド、バリと、景色も文化も料理もまったくタイプの異なる3つの国を巡ったリズ。『食べて、祈って、恋をして』を観れば、国々を渡り歩いた気分になれるはず! リズの自分探しを見届けながら、海の向こうの美しい国に想いを馳せてみてはいかがだろうか。

文=足立美由紀

足立美由紀●ライター。映画情報サイト「MOVIE WALKER PRESS」、「Real Sound映画部」、「シネマカフェ」、「MOVIE Collection」ほかにて映画コラムや俳優&監督のインタビュー記事を執筆。最近までアレハンドロ・ホドロフスキーの沼にハマっていた。ちなみにペドロ・アルモドバル、ジム・ジャームシュ、フランソワ・オゾンも大好物。

<放送情報>
食べて、祈って、恋をして
放送日時:2022年3月7日(月)21:00~、15日(火)23:15~

チャンネル:ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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