王道パニック映画から「空飛ぶサメ」まで…『JAWS/ジョーズ』などサメ映画が持つ最強のエンタメ力

王道パニック映画から「空飛ぶサメ」まで…『JAWS/ジョーズ』などサメ映画が持つ最強のエンタメ力

実際に存在するサメが題材になることで、身近な恐怖に感じられる(『JAWS/ジョーズ2』)

  • もはやジャンル化!? サメ映画の魅力

王道パニック映画から「空飛ぶサメ」まで…
『JAWS/ジョーズ』などサメ映画が持つ最強のエンタメ力

2022/07/04 公開

映画史に残る傑作を皮切りに、進化し続けるパニック・サメ映画

1975年、映画の歴史を変える作品が公開された。これが監督2作目となるスティーヴン・スピルバーグの『JAWS/ジョーズ』。アメリカ東海岸のビーチに体長7.6mの巨大なホオジロザメが現れ、平和だったビーチが血で染まった。警察署長のブロディ(ロイ・シャイダー)は、海洋学者フーパー(リチャード・ドレイファス)、漁師のクイント(ロバート・ショウ)と共に人喰サメの退治に向かう。シンプルなストーリーながら緊迫感ある演出、リアリティある映像、効果的な音楽で、完璧な映画とも言われるほどの名作となった。「ジョーズ」とは本来、サメの最大の武器で特徴でもある顎のことだったが、いまやサメを意味する言葉となってしまったほど。製作費900万ドルで4億7500万ドルを稼ぎだし、歴代興収1位の記録的ヒットとなった。

すると、これに便乗しようとサメをシャチに変えた『オルカ』(1977年)、「たくさん出てくりゃもっと怖いだろう」と『ピラニア』(1978年)が作られ、「ピラニアが飛んできたらさらに怖いだろう」と『殺人魚フライングキラー』(1981年)が作られてしまう。共に低予算のB級ホラーだが、『ピラニア』はのちに『グレムリン』(1984年)や『インナースペース』(1987年)を撮るジョー・ダンテで、『フライングキラー』に至っては『ターミネーター』(1984年)や『タイタニック』(1997年)を撮るジェームズ・キャメロンのデビュー作なのだから世の中わからない。この流れはやがて、パニック・サメ映画とトンデモ・サメ映画という2つのジャンルを生むこととなる。

「JAWS/ジョーズ」シリーズも、ブロディ署長が一家総出でサメに立ち向かう『JAWS/ジョーズ2』(1978年)、成長したブロディの息子がサメに挑む『JAWS/ジョーズ3』(1983年)、そしてブロディ署長の妻エレン(ロレイン・ゲイリー)が引っ越し先まで追ってきたサメと戦う『JAWS/ジョーズ’87 復讐編(現在は『JAWS/ジョーズ4 復讐編』に変更)』(1987年)と作られ、本家もだんだんとトンデモ化していっている。一方、正統派パニック・サメ映画としては、1999年に『ダイ・ハード2』(1990年)のレニー・ハーリン監督による『ディープ・ブルー』が作られている。アルツハイマーの特効薬開発のため海底の研究所でアオザメを使って実験を行っていたが、実験のなかで高い知能を持ってしまったサメが研究所から逃げてしまう。人間の罠の裏をかいてくるサメと、ろくな武器もない人間との戦いが見どころ。だが最大の見ものは、仲間割れを起こした所員たちを奮い立たせようと、サミュエル・L・ジャクソン演じる社長が熱く語るシーンだろう。この直後、とんでもない何かが起こる。

『オープン・ウォーター』はなんと実話ベース。事実は映画より奇なりだ

サメは現実に存在するモンスターなので実話を基にした映画も多い。『オープン・ウォーター』(2003年)は、カリブ海にダイビングに来ていた夫婦が船員の不注意で置き去りにされたことで、サメがいる海での絶望的サバイバルが始まってしまう。撮影は実際にサメのいる海で行われていて、リアルな恐怖が味わえるが、役者も命懸けである。なお、基になった事件では懸命の捜索にもかかわらず夫婦は発見されなかったという。…ということは置き去りにされた後の様子は誰が見てたの!?ん?ん?
なお、直接的なつながりはないが、乗客6人が乗船用のはしごを出し忘れて(!)ダイビングに行き、船上に戻ることができずに遭難した実話を映画化した『オープン・ウォーター2』(2007年)も作られている。

サメ映画はディザスタームービーでもあるようだ(『シャークストーム』)

時に台風はいろんなものを運んでくるが、大波が運んでくるものでもっとも恐ろしいものを考えたのが『シャークストーム』(2021年)。バカンスでビーチハウスにやってきたサムソン一家だったが、天気予報を見ていなかったのか、運悪く超大型台風がやってきてしまう。雨風に続いて高波がビーチハウスを襲った。家の中に海水が流れ込んできたが、彼らはその中にサメがいることに気づく。慌てて2階へと避難するが、さらに高波は押し寄せてサメも2階へやってくる。逃げ場を失った一家はサメに戦いを挑む。サムソン一家もまさか家の中でサメと鬼ごっこをするとは思ってもみなかっただろう。ひと夏のいい思い出ができたはずだ。

イケメンの誘いに乗ってしまったことが恐怖の始まりに…(『海底47m』)

こちらもバカンス先でサメと出会う映画。ダイビングをしたことないのに、イケメンの誘いに「やったことあるわよ」とウソをついたばかりにとんでもない目に遭う「置き去り」系パニック・サメ映画の傑作が『海底47m』(2016年)。傷心旅行のためメキシコに来たリサ(マンディ・ムーア)とケイト(クレア・ホルト)は、イケメンの誘いでサメをケージの中から鑑賞するケージ・ダイビングに行くことに。ところがリサとケイトが入ったケージのワイヤーが切れ、海底47mに落ちてしまった。しかも、サメを寄せるために撒いたエサにつられサメが集まってくる。だが2人に海上の男たちと連絡を取る手段はなく、酸素も減っていく。ケージの中で助けを待つか、ケージを出て自力で海面まで行くか…。サメの恐怖と酸素のタイムリミットのスリルに加え、ラストには予想外の展開が待っている。
また、海底のマヤ遺跡でサメに襲われる『海底47m 古代マヤの死の迷宮』(2019年)もある。続編だけに設定をちょっと捻った、盲目のサメが登場するのだが、もともとサメは視覚よりも嗅覚に優れているので実はあまり関係ない?

いまとなっては「これぞ!」となったトンデモ・サメ映画

これらのパニック・サメ映画とは少し趣向が異なり、現在、サメ映画の主流となっているのがトンデモ・サメ映画だ。本家『JAWS/ジョーズ』には演出力も俳優陣もSFX技術も予算も何一つ敵わないと考えたB級映画専門会社が、必死に絞り出した珍妙奇抜なアイデア一発で作り続けているトンデモ・サメ映画。大勢でツッコミながら観るのに最高な「酒の肴」映画である。

まず彼らは考えた。どんなサメが怖いかを。そこで思いついたのが「頭が2つあるサメはきっと怖いに違いない」だった。『ダブルヘッド・ジョーズ』(2012年)は冒頭から2つ頭のサメが大暴れし、裸の女の子も血しぶきもいっぱいの大サービス映画。なぜそんなサメが誕生したのかなんて面倒なことはどうでもよく、ただただ89分間存分に楽しませてくれる。2つ頭が成功したなら「次は3つ頭だ!」というわけで『トリプルヘッド・ジョーズ』(2015年)もある。3つ頭なので前作以上に人間を喰って喰って喰いまくる。しかし今回はちょっと違う。人間側も黙っていない。『マチェーテ』(2010年)などのロバート・ロドリゲス作品でおなじみ「漢の中の漢」ダニー・トレホがサメの頭をぶった切る。実はこのシリーズは一つ飛んで『ファイブヘッド・ジョーズ』(2017年)、『シックスヘッド・ジョーズ』(2018年)と続いている。何十年後かには全方位頭だらけのサメが出てくるに違いない。

空飛ぶサメにナチスの恰好をしたゾンビが…と、トンデモ度が過ぎる『スカイ・シャーク』

さらに彼らは考えた。「サメが飛んできたら怖いんじゃなかろうか?」。珍しいドイツ製トンデモ・サメ映画が『スカイ・シャーク』(2020年)。北極で蘇ったナチスのゾンビが空飛ぶサメに乗って世界を襲う。映画の中の悪者としてよく登場するナチスとゾンビとサメの夢のコラボ!…というか、思いついたモノ全部入れてみました的映画。しかもこのゾンビ、超能力を使う。もはやゾンビである必要さえない。だが想像していただきたい。ナチスの恰好をしたゾンビがサメに跨っている姿を。これだけでごはん3杯はいける。

ゴンドラが有名な「水の都」ベニスでサメが踊る(『シャーク・イン・ベニス』)

彼らはまたも考えた。「サメが街の中に現れたら怖いんじゃないか」。だが水のない街にどうやってサメを…、だがそれが可能な街があった…!それが、「水の都」ベニスを舞台にした『シャーク・イン・ベニス』(2008年)だ。ベニスの美しい風景のなか、サメがゴンドラごと人間を喰いちぎる。次々と起こるサメの襲撃に対し、街のお偉いさんも警察も動かない。その理由は「ベニスにサメはいない」。うん、みんな知っている。それを知らないのはこの映画を作った彼らだけなのかもしれない。だがつかみはOKである。しかし、ベニスとサメだけでは弱いと思ったのか、イタリアらしくマフィアと警察の銃撃戦に、海底洞窟に隠されたメディチ家の財宝探しと全部乗せ状態、てんこ盛りのトンデモ・サメ映画となった。

『MEGALODON ザ・メガロドン』で登場するのは、実在した超大型ザメのメガロドン

次のサメ映画を考えていた彼らは知ってしまった。「太古にはメガロドンとかいう全長40mのサメがいたらしい」。そこで作ったのが『MEGALODON ザ・メガロドン』(2018年)と続編の『ザ・メガロドン 怪獣大逆襲』(2021年)。第1作ではロシアの陰謀で太古のメガロドンが目覚め、ロシアとアメリカの艦隊を襲う。第2作では緊張状態にあったアメリカ軍の艦隊と中国の艦隊がにらみ合っている最中にメガロドンが現れる。もしかすると米中の仲裁に来たのか。この映画に出てくるメガロドンはただの超巨大古代ザメではない。出てくるシーンによって大きさが自由自在なのだ。海中では設定通り40mだと思われるが、戦艦を襲う時は同じくらいかそれ以上の大きさに見えるので300m以上にもなる。もしかすると戦艦が20mくらいなのかもしれないが。それでも戦艦を次々と喰いちぎるメガロドンの姿はなかなかの迫力だ。だが作った彼らは知らなかった。メガロドンの化石で見つかったのは歯だけで、その歯から推測した最大体長が40mで、識者の間では10~16m説が有力とされている。うーむ、ちょっと大きいサメですな。

もはやアメリカ軍艦隊、中国艦隊、メガロドンの三つ巴の戦い(『ザ・メガロドン 怪獣大逆襲』)

数あるトンデモ・サメ映画の中でも群を抜いて傑作・怪作・迷作と言われるのが『シャークネード』(2013年)。メキシコ湾で発生した台風の影響で竜巻が起こってしまう。台風はロサンゼルスを襲うが雨風と共に、海から吸い上げたサメを街中に降らせた。小雨ではなく大サメだ。屋根やガラスを突き破ってサメが人々を襲う。ライフガードのフィン(アイアン・ジーリング)は家族を守るためサメに戦いを挑むが、このフィンだが実は武器と戦いのエキスパートだった!この際、エラ呼吸のサメが上空では生きられるのか…なんてことは忘れよう。バカバカしいバトルを大真面目にやったことで人気シリーズとなった。後のシリーズでニューヨークも救ってすっかりサメ退治の専門家になり、大統領から勲章をもらってしまう。こうなるとフィンはシャークネードと裏でつながっているんじゃないかとさえ思えてくる。シリーズは完全にコメディと化し、サメに喰われたはずのフィンの元妻エイプリル(タラ・リード)は戦闘サイボーグになったりとやりたい放題。やがて人類は太古からシャークネードと戦ってきたことが発覚する(いやいや自然現象だっただろ!)。そして完結編第6作『シャークネード ラスト・チェーンソー』(2018年)では元凶である最初のシャークネードを倒すために過去へと向かう(えっ!?)。毎回、何か起こるエイプリルにもまさかの展開が待っている。どんな結末を迎えるのか、ご自分の目で確かめていただきたい。

サメ映画を振り返ってきたが、『JAWS/ジョーズ』第1作以外はどれもトンデモ映画だったかもと思えてくる。非日常的なスリルや、ありえない設定で我々を楽しませてくれるサメ映画。ほとんどはアメリカ映画だが、最大のお得意様はなんと日本だったらしい。もっともサメ映画に喰われていたのは我々、日本人だったりして…。

文=竹之内円

竹之内円●映画ライター。雑誌・WEBでは「MOVIE WALKER PRESS」、「シネコンウォーカー」、「HiVi」、「月刊スカパー!」など、劇場用パンフレットでは「SAW ソウ」シリーズや「平成ガメラ三部作 オフィシャル・パンフレット」、『キングスマン:ファースト・エージェント』、ムック「ジェームズ・ボンドは永遠に」などで執筆。また「デモンズ1©2 4Kリマスター・Ultra HDパーフェクトBOX」封入ブックレット、「サンダーバード」、「謎の円盤UFO」などバリー・グレイ作品や『ジュラシック・ワールド/炎の王国』、「ウォーキング・デッド」などのサウンドトラックCD封入のライナーノーツもときどき書いている。人生、ほぼSFホラーと特撮とビートルズでできている。

<放送情報>
グレート・ホワイト
放送日時:2022年7月17日(日)23:15~、21日(木)7:00~

MEGALODON ザ・メガロドン
放送日時:2022年7月18日(月・祝)4:30~、27日(水)23:15~

ザ・メガロドン 怪獣大逆襲
放送日時:2022年7月18日(月・祝)6:15~、28日(木)1:00~

シャークストーム
放送日時:2022年7月17日(日)17:00~、28日(木)19:15~

海底47m
放送日時:2022年7月18日(月・祝)1:00~、28日(木)22:45~

(吹)海底47m
放送日時:2022年7月5日(火)11:45~

海底47m 古代マヤの死の迷宮
放送日時:2022年7月18日(月・祝)2:45~、29日(金)0:30~

(吹)海底47m 古代マヤの死の迷宮
放送日時:2022年7月5日(火)13:30~

JAWS/ジョーズ
放送日時:2022年7月27日(水)18:45~

JAWS/ジョーズ【滝田裕介 地上波吹替版】
放送日時:2022年7月17日(日)18:45~

JAWS/ジョーズ2
放送日時:2022年7月8日(金)13:30~、27日(水)21:00~

JAWS/ジョーズ2【滝田裕介 地上波吹替版】
放送日時:2022年7月17日(日)21:00~
チャンネル:ムービープラス


オープン・ウォーター
放送日時:2022年7月18日(月・祝)10:00~

オープン・ウォーター2
放送日時:2022年7月18日(月・祝)11:30~

ディープ・ブルー(1999)
放送日時:2022年7月18日(月・祝)13:15~

シャーク・イン・ベニス
放送日時:2022年7月18日(月・祝)15:15~

シン・ジョーズ 最強生物の誕生
放送日時:2022年7月13日(水)11:30~
チャンネル:WOWOWシネマ

ディープ・ブルー(1999)
放送日時:2022年7月29日(金)3:20~
チャンネル:WOWOWプライム

スカイ・シャーク[R15+指定版]
放送日時:2022年7月5日(火)21:00~、11日(月)9:00~
チャンネル:スターチャンネル1

ディープシャーク
放送日時:2022年7月14日(木)2:00~
チャンネル:ザ・シネマ

※放送スケジュールは変更になる場合があります