転校を機にツッパることを決めた三橋は、相棒の伊藤と強敵たちに立ち向かう

伝説の漫画が連続ドラマ化、そして劇場版へ!
ツッパリの日常を描き、社会現象となった『今日から俺は!!』

2021/11/29 公開

世代や年齢を問わずに楽しめるドタバタな青春物語

1980年代の千葉の田舎町を舞台に、金髪の三橋とトゲトゲ頭の伊藤のツッパリコンビが数々の騒動を巻き起こすコメディドラマ「今日から俺は!!」。西森博之による伝説の漫画を、「銀魂」シリーズの福田雄一が脚本・監督を務めて実写化した。2018年10月期の全ドラマの中で視聴率1位に輝き、数々の賞を受賞。続く2020年7月には「今日から俺は!!劇場版』が公開され、当時、劇場の半分ほどの席しか販売できなかったコロナ禍の状況の中、興行収入53.7億円を突破する大ヒットを記録した。

コミックは1988年から1990年まで「週刊少年サンデー増刊号」に、その後1990年から1997年まで「週刊少年サンデー」に連載され、38巻で完結した。転校を機に、髪型を変え、憧れのツッパリデビューを果たす! そんなバカバカしくもかわいらしい夢を実現させた三橋貴志と伊藤真司が、偶然にも同じ高校で、同じクラスになってしまうところから物語は始まる。三橋が性格のひねくれた卑怯者なのに対し、伊藤はどこまでもまっすぐで誠実な男。そんな、キャラは正反対だがケンカは同じくらい強い2人は、自然な流れでコンビを組むことになる。いわゆる生粋の(?)不良ではなく、単に目立ちたい一心だった普通の高校生ゆえに、基本は仲間同士のワチャワチャした日常をギャグ満載で描く学園モノとなっている。主に90年代に大人気だった原作コミックだが、まさか連載開始から30年経ての実写化が、社会現象になるほどのメガヒットになるとは、原作者の西森も予想していなかったのではないだろうか。

トゲトゲ頭が印象的な伊藤は、まじめで正義感の強い男

物語の主なメンバーは主人公の三橋と伊藤のほか、同じ軟葉高校に通う合気道の達人・赤坂理子と、他校のスケバンで伊藤の恋人・早川京子、そして2人のライバルである紅羽高校の愛すべきバカ番長・今井勝俊と、その心優しき子分・谷川安夫という個性的な面々。ラブコメのような、のほほんと楽しい学校生活を送りたかったはずなのに、周辺地域の不良どもが引き起こした厄介事に巻き込まれ、いつの間にか激しい戦闘に身を投じることになる。そんなおバカな日常の描写と、バトルシーンの壮絶さとのギャップが本作の大きな魅力だ。

なかでも、普段は飄々とした態度で、伊藤や今井、理子に憎まれ口ばかりたたいている三橋が、仲間が傷つけられた時だけは怒りを露わにし、本気で敵に立ち向かっていく姿がたまらない。と言っても、自他ともに認める卑怯者の三橋だけに、ほとんどのケンカは伊藤たちに任せ、自身は最後の最後に登場して、いいところを全部かっさらっていく──というのがお約束。いわゆるヤンキー漫画の中では、バイオレンス描写はマイルドなほうで、大ケガはしても死者までは出ない。また、下ネタはほとんどなく、恋愛の描き方も健全でほのぼのとしていることも、男女問わず、幅広い年齢層が安心して楽しめるポイントだ。

伊藤と、その恋人である京子のラブラブ模様も見どころ

気鋭のキャストそろい踏みで、ツッパリたちのぶつかり合いを映し出す

実写ドラマ版の時代設定は、原作の連載時期より少しさかのぼった1980年代前半。三橋の短ラン、伊藤の長ラン、スケバンのロングスカートといった改造制服にはじまり、ペッタンコにつぶした学生カバン、理子の聖子ちゃんカット、京子のどぎついメイクなど、登場人物たちのザ・80年代なファッションやヘアスタイルは見ているだけで楽しい。ほかにも80年代ならではのカルチャーや風俗があちこちにちりばめられた世界観は、当時をリアルに体験した大人たちには懐かしく、それを知らない若者、子どもたちには斬新に映り、結果として幅広い世代が親子で視聴したことがヒットにつながったと言える。

北根壊高校の柳や大嶽らの登場により、三橋たちは波乱に巻き込まれていく

続く2020年公開の『今日から俺は!!劇場版』のストーリーは、原作ファンの間でも名作として語り継がれている「北根壊高校編」のエピソードを基に作られた。ようやく開久高校とのいざこざが収まって平和ムードが漂っていたところ、隣町の北根壊高校が校舎火災を起こし、新校舎再建までの間、三橋たちの町に引っ越してきたことから大騒動が勃発する。劇場版の新キャラ、北根壊高校の番長・柳鋭次役で登場するのは柳楽優弥。実は柳楽はドラマ版の第3話で、福田作品でもある主演ドラマ「アオイホノオ」の焔モユル、そのままのキャラクターでゲスト出演している。同シリーズ作品に、同じ俳優が別の役柄で再登場するという異例なキャスティングとなった。

劇場版はドラマと基本路線は変わらぬまま、アクションのスケールがパワーアップ。福田監督は、原作の「北根壊高校vs三橋&伊藤」という構図を、「北根壊高校vs三橋と伊藤の軟葉高校&開久高校」へと大胆に変更。ドラマ版では三橋と伊藤の最大の敵だった開久高校の番長・智司とNo.2の相良が、三橋たちと共闘するというファン歓喜の胸アツな展開を用意した。あの相良の登場を、これほどうれしく思う時が来るとは…感無量である。クライマックスとなる3校入り乱れてのド派手なバトルシーンは大迫力!手に汗握る、リアルで熱いアクションは胸が躍る。

なお、多くのキャスト陣にとって「今日俺」は、その後のキャリアにおいて大きな意味を持つ出世作となった。主人公の三橋を演じた賀来賢人、その相棒・伊藤役の伊藤健太郎、三橋を好きになるヒロインの理子役の清野菜名、伊藤の恋人・京子役の橋本環奈。紅高の今井役の仲野太賀、谷川役の矢本悠馬、開久高校の智司役の鈴木伸之、相良役の磯村勇斗など、みんな「今日俺」出演後さらなる目覚ましい活躍を見せている。

合気道の使い手である理子。三橋に思いを寄せているが口ゲンカが絶えない

そして、映画では多くの人気作を輩出している一方、ドラマでは深夜枠作品が多かった福田監督にとっても、初めて視聴率に手応えを感じた作品だったとのこと。これはひとえに、バカバカしいギャグとシリアスなバトルシーンが融合する原作のスピリットと、コメディにこだわる福田監督との相性そのものが抜群に良かったからと言えるだろう。

「今日俺」の魅力のひとつであるキャスト陣によって結成された「今日俺バンド」によるオープニング曲『男の勲章』と、劇場版の特典として新たに収録されたエンディング主題歌『ツッパリHigh School Rock’n Roll(登校編)』の映像の盛り上がりも最高!インターネットもケータイもなかった時代、ガチでぶつかり合う拳と拳をコミュニケーションツールとして、若者たちがお互いを理解し、絆を深めていく青春の姿は、いつだって普遍的で、観る者の胸をジーンと熱くしてくれる。

文=石塚圭子

石塚圭子●映画ライター。学生時代からライターの仕事を始め、さまざまな世代の女性誌を中心に執筆。現在は「MOVIE WALKER PRESS」、「シネマトゥデイ」、「FRaU」など、WEBや雑誌でコラム、インタビュー記事を担当。劇場パンフレットの執筆や、新作映画のオフィシャルライターなども務める。映画、本、マンガは日々を元気に生きるためのエネルギー源。

<放送情報>
今日から俺は!!劇場版
放送日時:2021年12月11日(土)21:00~

チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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