ウィル・スミス&トミー・リー・ジョーンズ共演の大ヒット作『メン・イン・ブラック』

渋い男、トミー・リー・ジョーンズ
『MIB』に至るアクション・ヒーロー列伝

2021/04/26 公開

悪役、危険な男を演じて注目を集めたトミー・リー・ジョーンズ

古今東西のアクション・ヒーローにスポットライトを当てる当連載、第2回は『メン・イン・ブラック』シリーズを取り上げる。第1作が公開されたのは1997年。最近の映画だとばかり思い込んでいたが、もう四半世紀近い昔の作品になってしまったのだから恐ろしいことだ。しかし、ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズがタッグで右往左往していた記憶が比較的新しいものとして残っているのは、2002年、2012年と、それぞれ間を置きつつもコンスタントに続編が公開されているからだろう。それに2019年には、キャストを総入れ替えした『メン・イン・ブラック:インターナショナル』も作られている。

チャラいエージェントと真面目な新人がコンビを組む『~:インターナショナル』

なかなかどうして現役フランチャイズなのである。しかし、『MIB』がアクション?と思われる向きもあるかもしれないが、SFアクション・コメディという括りで考えれば何の問題もないだろう。それに今日はまず、トミー・リー・ジョーンズについてどうしても触れておきたいことがあるのだ。

今ではテレビCMでコーヒーを飲んだりして、すっかりお茶の間の顔になっているジョーンズだが、この人も実は長いアクション・ヒーローとしてのキャリアのなかで、非常に危険な魅力を長らく湛えてきた。

『メン・イン・ブラック』に至るまでのジョーンズ出演作として、この機会に無理矢理紹介したいのが、なんといっても『ローリング・サンダー』(1977年)。映画デビューから7年、なかなか仕事に恵まれなかったジョーンズはここで歴史に残る名演を見せる。

ゴロツキに妻子を殺され、自らも片腕を奪われたベトナム帰りの主人公チャールズ(ウィリアム・ディヴェイン)、その戦友のジョニーという役どころだった。今では実家に戻って妻と両親と暮らすジョニーだが、どうにも死んだような顔をしている。戦地で死線をくぐり抜けることが日常と化していたこの男からすれば、平和な田舎の生活の方がよほど地獄に近いものであったのだ。そこへチャールズが訪ねてくる。

「例のゴロツキの所在がわかった」と短く告げられるや、すぐに夕食を切り上げて軍服に着替え、武器を揃えてさっさと出かけるのである。「ちょっと出かけてくる」と、まるでコンビニにでも行くような様子で大殺戮に向かう。それまで石のような顔をしていたジョニーが、ここでようやく生き生きとした表情を見せるのだから戦慄させられる。

ジョーンズがやはり追い詰められたベトナム帰還兵に扮し、セントラルパークをたった一人で占拠する『ニューヨーク・コマンドー/セントラルパーク市街戦』(1985年)も印象深い。これは小説「公園(セントラル・パーク)はおれのもの」が原作のテレビ映画だが、とにかく今では考えられないほどに、かつてのトミー・リー・ジョーンズは危険な男を演じれば演じるほど光り輝く男であった。
(その本領は後年になっても発揮されている。連続爆弾魔に扮した1994年の『ブローン・アウェイ/復讐の序曲』、そしてバットマンの敵役トゥー・フェイスを演じ、ヒース・レジャーのジョーカーとはまた別のベクトルで狂いに狂っていた1995年の『バットマン フォーエヴァー』などなど。悪いジョーンズはいつでも理性のタガが吹っ飛んでいて最高だ)

という危険な男、トミー・リー・ジョーンズに、仕事のできる渋い親父というもう一つのイメージをもたらしたのは、1993年の『逃亡者』だろう。ハリソン・フォード演じる主人公を追う連邦捜査官という役どころだ。

猟犬のような執念深さで捜査に打ち込みつつ、どうやら濡れ衣を着せられたらしい逃亡犯の向こうに本当の巨悪の姿を見るや、忖度なしでそちらに照準を定める。アカデミー賞助演男優賞の獲得も頷ける好演だった。その後、1998年にはジョーンズが主役に格上げされたスピンオフ作品、『追跡者』も作られている。

記憶消去装置「ニューラライザー」を掲げるジョーンズ演じるK(『メン・イン・ブラック』)

男2人のかけ合いにオフビートな世界観、宇宙人の造形も魅力な『MIB』

『メン・イン・ブラック』シリーズはこの渋い男路線、最大のヒット作だ。当時すでに飛ぶ鳥を落とす勢いであったウィル・スミスとコンビを組み、地球に飛来した宇宙人関連の事件を解決する秘密機関「メン・イン・ブラック」、略して「MIB」のエージェントに扮する。

黒スーツに黒タイ、レイバンのサングラス「プレデター2」(映画のヒットで同モデルはそれまでの5倍近くを売り上げたという)でビシッと固めた2人だが、口八丁で街を泳ぎ回るスミスに対して、いつも瓦煎餅のような顔で黙々と働くジョーンズ、というコントラストこそが映画最大の見どころだと言える。

ウィル・スミス演じる新人Jとの凸凹コンビぶりが最高!(『メン・イン・ブラック2』)

本作はもともと同名のコミックシリーズを原作としている。出版元は、後におなじみのマーベルに買収されることになるマリブ・コミックス。いまや完全に隆盛を極めるアメコミ原作映画の、これはそういえば黎明期の1本だった。

主人公たちの名前と基本設定を残して、あとはほぼ映画オリジナル展開となる1作目の脚本はエド・ソロモンが書いた。この人は同じく脚本家のクリス・マシスンと組んで『ビルとテッド』シリーズを生み出した偉人である。考えてみれば、男2人のコンビが軽妙かつ間抜けなやり取りを繰り広げ、渦中でおかしな人々に出会う『ビルとテッド』の展開には『MIB』に通じるものがある、かもしれない。

オリジナルシリーズ3作品に次々登場する、様々な宇宙人の造形にも触れておきたい。これらは特殊メイクアーティストの名手中の名手、リック・ベイカーが手がけたものだ。スミスとジョーンズの軽妙な掛け合い、監督バリー・ソネンフェルド以下が作り出すオフビートで小洒落た世界観と並んで(あるいはそれ以上に)、ベイカーが生み出した異星人たちのユニークな造形が、本作においては極めて重要な要素となっている。

過去にタイムスリップしたJが若き日のKと共闘(『メン・イン・ブラック3』)

若き日のジョーンズをジョッシュ・ブローリンが演じ、新旧渋い男が顔を揃えてすばらしかった第3作を最後にオリジナルシリーズは休止している。クリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンが取って代わった新シリーズにもがんばってほしいが、そろそろジジイだらけの元祖『MIB』を観てみたいところではある。もちろん、リック・ベイカーの再登場も願って。トミー・リー・ジョーンズも、いつまでも缶コーヒーばかり飲んでいるわけにもいかないのではないか。

文=てらさわホーク

てらさわホーク●ライター。著書に「シュワルツェネッガー主義」(洋泉社)、「マーベル映画究極批評 アベンジャーズはいかにして世界を征服したのか?」(イースト・プレス)、共著に「ヨシキ×ホークのファッキン・ムービー・トーク!」(イースト・プレス)など。ライブラリーをふと見れば、なんだかんだアクション映画が8割を占める。

<放送情報>
メン・イン・ブラック
放送日時:2021年5月3日(月・祝)15:00~、14日(金)19:00~
(吹)メン・イン・ブラック
放送日時:2021年5月23日(日)17:00~

メン・イン・ブラック2
放送日時:2021年5月3日(月・祝)17:00~、14日(金)21:00~
(吹)メン・イン・ブラック2
放送日時:2021年5月23日(日)19:00~

メン・イン・ブラック3
放送日時:2021年5月3日(月・祝)19:00~、14日(金)22:45~
(吹)メン・イン・ブラック3
放送日時:2021年5月23日(日)21:00~

メン・イン・ブラック:インターナショナル
放送日時:2021年5月3日(月・祝)21:00~
(吹)メン・イン・ブラック:インターナショナル
放送日時:2021年5月9日(日)11:00~、23日(日)23:00~
チャンネル:ムービープラス

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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