脚本・監督・主演を務めた『Ribbon』公開！
 のんが語る“映画を作りたい”という切実な気持ち

24時間まるごとのん出演作を放送！「１日付き合ってもらえたらうれしいです」

女優、創作あーちすと、そして近年では映画監督としても活動している、のん。2月25日(金)からは初の劇場長編監督作『Ribbon』が公開される。この映画でのんは脚本・監督・主演の三役を務めている。これを記念して、２月22日(火)よる10時から日本映画専門チャンネルで、１日まるごと彼女の出演作を放送する特集「24時間まるごと のん NON FES! THE MOVIES」が決定した。

放送される映画は、のんがアニメーション映画初主演を務めた『この世界の片隅に』に新カットを追加した新訂版『この世界の（さらにいくつもの）片隅に』（2019年）やのんがヒロインを務めた崖っぷちロマンス『私をくいとめて』（2020年）、そして、のん初監督作品『おちをつけなんせ』（2019年）などの５本。さらに、『Ribbon』で特撮を担当した樋口真嗣、特撮プロデューサーを担当した尾上克郎とのん、同級生の平井を演じた山下リオの４人が送るオリジナル番組『特撮いかがでしょう？』(2020年)と、『Ribbon』のメイキング番組、のんの特別インタビューも放送される。

「“１日のん”という特集はこれまでなかったので、なかなかない貴重な機会をいただけて、うれしすぎると思いました。１日付き合ってもらえたら、うれしいです！　作品は全部見てほしいですが、チラッと見た時になんか気になるな〜と感じて、そのまま最後まで見てもらえたらいいなと思います。全部ステキな作品ですので、面白いと思います！」

今回放送される作品の中には、岩井俊二監督の『８日で死んだ怪獣の１２日の物語 ―劇場版―』（2020年）も含まれる。コロナ禍にほぼリモートで撮影されたこの作品は、彼女に影響を与え、映画『Ribbon』を生み出すきっかけにもなった。

「岩井監督には、すごく勇気づけられました。どんな状況でも新しい形で映画を撮ろうとする、岩井監督の作ることへの想いに元気づけられました。みんなが凹んでいる時でも作っていることがステキだなとも思いました。（『Ribbon』に特撮チームとして加わった）樋口監督も尾上監督も同じで、忙しい日々から見ると休息が取れていたのかもしれませんが、映画の現場に戻りたいという感じだったと思うので、タイミングよく協力していただけてうれしかったです」

しかし、2020年の最初の緊急事態宣言下では、あらゆるエンターテイメントが制限されてしまった。のんが主催する音楽フェスも中止せざるを得なくなったなかで、彼女はエンタメや芸術の優先順位が下がっていくのをひしひしと感じた。それと同時に自分はエンタメや音楽、アートに支えられてきたことに改めて気付き、いてもたってもいられなくなり、脚本を書き始めたという。

「雑誌からオファーを受けてリボンを纏っている女の子の絵を描いたり、ギターで曲を作ったり、作ることでなんとなく日々をやり過ごしていたなかで、映画を撮りたいという意欲が湧いてきました。ここまでエンタメや芸術が好きだったんだ、やりたかったんだということを、制限されたからこそ実感することができた。これまでも“大好き”という真っ直ぐな気持ちで向き合ってきましたが、より切実さが生まれたんです。それで、どんな人を主人公にするのがいいかなと思った時に自分の憧れだった美大生がいいなと思い、コロナ禍の美大生の方々の状況を調べ始めたんです」

そして、卒業制作展ができなくなったことで、時間をかけて描いた絵がゴミのように思えてしまったという美大生の言葉に衝撃を受け、映画『Ribbon』のプロットが誕生した。撮影の際、監督の自分と俳優の自分がぶつかり合うことはなかったという。

「監督１作目の『おちをつけなんせ』に出演していただいた桃井かおりさんに『主演と監督、どっちもやるのは大変じゃないですか？』と質問したら、『楽ちんよ』と答えられたんです。『自分と同じ脳みそを持った味方が一人いるということは、すっごい楽なことよ』と。私は楽ちんとはいかなかったですが（笑）、完全にこう撮りたいということを、役の人（自分）はわかっているから、そこに向かって真っ直ぐ向かっていくという感じでした」

「コロナ禍であることがリアルに響く話にしたかった」

物語の主人公は、美大生の浅川いつか。コロナの影響で通学ができなくなり、卒展も中止。作品を自宅に持ち帰ることになるが、何もする気になれず、家族とも衝突。普段は冷静な親友の平井（山下リオ）もイライラを募らせている。そんなある日、絵を描くことの楽しさを教えてくれた友人との再会などを経て、いつかは未来への道を模索していく。

「コロナ禍であることがリアルに響く話にしたかったので、マスクで顔が半分見えなくなるのはちょっと怖かったですけど、皆さんにマスクをしていただきました。その分、マスクの形にはこだわって、いつかや平井は顔の形がわかるマスクにしています。渡辺大知さん演じる公園で出会う男性は顔の大部分が覆われているやつにしたり、キャラクターに合わせて、色や形を変えました」

『Ribbon』の大きな特徴は、いつかの感情をさまざまなリボンで表しているところ。のんのイメージをどう具現化するか、特撮チームが独自の方法を編み出していった。

「いつかは鬱々としているし、落ち込んだりもしちゃう。でも、それをハードなまま出したくなかったので、リボンに表現してもらうことで重たさが感覚的に伝わればいいなと思いました。樋口監督、尾上監督と何度もミーティングをした結果、ＣＧじゃないかもしれないねとなって、リボンの特撮をして合成することになりました。一本のリボンで表現しているものはほとんど水の中で撮ったのですが、同じ動きが二度とできないので、ここまでは良かったのに…ということもありました。それから、先にリボンを這わせて、引き抜いたものを逆再生したり…。そうすることで特撮だからこそ出せる空気感が出せたと思います」

こうして、彼女にしか作れない映画『Ribbon』が完成した。

「劇場公開される作品を目指して撮ったので、公開が決まった時はすっごくうれしかったです。よかったーと思いました。キャストの皆さんは素晴らしかったですし、スタッフの皆さんにもすごく支えられ、いい作品になっていると思います！」

取材・文＝及川静／撮影＝大川晋児

ヘア＆メーク＝菅野史絵　スタイリスト＝町野泉美

衣装協力＝kudos、SHINYAKOZUKA、atelier ST, CAT

のん●1993年生まれ。兵庫県出身。2016年公開の劇場アニメ『この世界の片隅に』で主人公・すずの声を演じ、第38回ヨコハマ映画祭「審査員特別賞」を受賞。映画で脚本、監督、主演するのは、『おちをつけなんせ』（2019年）に続いて２本目。2月25日(金)公開の『Ribbon』は、第24回上海国際映画祭に特別招待作品としてGALA部門に選出され、ワールドプレミア上映のチケットはわずか５分で完売した。

＜新作映画情報＞ 『Ribbon』2月25日(金)より、テアトル新宿ほかロードショー
監督・脚本：のん
出演：のん、山本リオ、渡辺大知、小野花梨、春木みさよ、菅原大吉

＜放送情報＞
「24時間まるごと のん NON FES! THE MOVIES」
2022年2月22日（火）22:00～

私をくいとめて　※本編前後にインタビューあり
放送日時：2022年2月22日（火）22:00～、2月23日（水）17:25～
「Ribbon」メイキング（仮）　無料放送
放送日時：2022年2月23日（水）0:35～、10:35～
おちをつけなんせ　無料放送　※本編前後にインタビューあり
放送日時：2022年2月23日（水）0:50～、10:50～
星屑の町　※本編前後にインタビューあり
放送日時：2022年2月23日（水）2:25～、12:25～
特撮いかがでしょう？
放送日時：2022年2月23日（水）4:35～、14:35～
８日で死んだ怪獣の１２日の物語 －劇場版－　無料放送　※本編前後にインタビューあり
放送日時：2022年2月23日（水）5:35～、15:35～
この世界の（さらにいくつもの）片隅に　※本編前後にインタビューあり
放送日時：2022年2月23日（水）7:25～、20:00～

チャンネル：日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります