まさに映画界におけるエイリアン!?
アップデートを続ける映像作家としてのリドリー・スコット
2021/12/27 公開
いったいこの人の肉体と頭脳はどうなっているんだ?本当に一人の人間なのか?そう思う人は様々な分野の世界にいるけれど、映画界にも数人だけいる。今回取り上げるのは、その筆頭、リドリー・スコット監督だ。
この人の名前を知らない、という方はいるかもしれないけど、『エイリアン』(1979年)、『ブレードランナー』(1982年)、『グラディエーター』(2000年)といった作品名を、一度も聞いたことがないという人はたぶんいないだろう。どれも世界的に有名な映画で、すべてスコットが監督をしている。
いつ観ても斬新でエポックメイキングな『エイリアン』と『ブレードランナー』
スコットはイギリス出身、現在83歳で、今なおバリバリの現役。1977年に『デュエリスト/決闘者』でデビューして以来、今日までとてつもない世界的ヒット作を連発し、同時に、歴史に残る映画も作り続けている。特に、SF分野の映画での功績は語り尽くせない。
彼の監督作でもっとも有名なのは『エイリアン』だろう。劇場公開されたのは、1979年。この年は私が生まれた時だけど、驚くべきことに今観ても、SFとして何も古びていない。
当時はCG技術などがなかったにもかかわらず、暗黒を航海する宇宙船、エイリアンの描写など、すべてが斬新かつエポックメイキング的で目を見張る。多くのSF映画が時代の波に洗われて陳腐化する中で、この映画だけはずっと新しい。真に驚くべきことだ。SFの歴史は、『エイリアン』以前と以後に完全に分かれてしまっている。
スコットは『エイリアン』を世に放った数年後、またSF映画の歴史を更新する作品を作った。それがフィリップ・K・ディック原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を映画化した『ブレードランナー』だ。
ハリソン・フォードを主演に迎えた本作は、退廃的かつスモーキーな都市描写や、こだわりまくった美術の凄さで今なお伝説的な映画になっている。ディストピアを描いた映画は数あれど、この作品ほど世界観が徹底されていて、同時に謎に満ちたものもない。『エイリアン』同様、すでに劇場公開から40年が経とうとしているのに、今観ても「新しさ」に溢れているのが驚愕だ。
宇宙における人類の無力さ、社会の厳しさを惜しげもなく見せつける作家性
以後、『レジェンド 光と闇の伝説』(1985年)、『ブラック・レイン』(1989年)、そして『グラディエーター』などを作ったのち、スコットは今も最前線で活躍している。
個人的には、近年では『プロメテウス』(2012年)、『オデッセイ』(2015年)などの宇宙モノが大好きだ。前者は『エイリアン』の前日譚のような映画で、後者は火星に1人だけ取り残されてしまった宇宙飛行士の映画。
スコットが作るSF映画の特徴を一つだけ挙げるとすると、「宇宙は人間に全然やさしくない」ということになる。宇宙は冷酷なのだ。なんとなく私たちは人類を特別な存在と思いがちだが、一歩地球の外に出ると、そんなものは何の根拠もない思い込みにすぎず、宇宙環境は悲劇的なほど厳しい。そんな風に、スコットの映画は教えてくれる。
宇宙だけではない。マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、ブラッド・ピットなど大スターが勢揃いした『悪の法則』(2013年)では、そもそも「世界そのものが厳しい」ということを、余すところなく見せつけてくれた。小説家のコーマック・マッカーシーが脚本を書いた本作は、近年まれに見る「大人の映画」だった。『エクソダス:神と王』(2014年)などもそうだが、どこか神秘的な風格すらたたえている。
そうかと思えば、もうすぐ公開予定の新作は、かのファッションブランド、GUCCIの事件を扱った映画らしい(『ハウス・オブ・グッチ』)。宇宙から地球まで。エイリアンから人間同士の戦いまで。本当にリドリー・スコット監督は一人の人間なのだろうか?この人こそエイリアンなんじゃないか?そう思ってしまう。本当にバケモノのような映画監督だ。
文=入江悠
入江悠●1979年生まれ。映画監督。監督作に「SRサイタマノラッパー」シリーズ、『日々ロック』(2014年)、『ジョーカー・ゲーム』(2015年)、『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年)、『AI崩壊』(2020年)など。最新作『シュシュシュの娘』が全国ミニシアター公開のほか、『聖地X』も全国公開中。
<放送情報>
最後の決闘裁判
放送日時:2022年1月1日(土)21:00~、15日(土)21:00~
チャンネル:スターチャンネル1
(吹)最後の決闘裁判
放送日時:2022年1月16日(日)21:00~、20日(木)13:00~
チャンネル:スターチャンネル3
最後の決闘裁判
放送日時:2022年1月8日(土)20:00~、16日(日)16:45~
レジェンド 光と闇の伝説
放送日時:2022年1月2日(日)9:30~、8日(土)18:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
(吹)最後の決闘裁判
放送日時:2022年1月8日(土)13:00~、13日(木)17:15~
(吹)エクソダス:神と王
放送日時:2022年1月27日(木)15:15~
チャンネル:WOWOWプライム
エイリアン
放送日時:2022年1月1日(土)10:40~、8日(土)18:45~
チャンネル:ムービープラス
ブレードランナー
放送日時:2022年1月14日(金)10:15~、26日(水)7:45~
チャンネル:ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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