「心は子供、見た目は大人」のヒーローが活躍する『シャザム!』の新録吹替版が登場!』

新録吹替版で見つける新たな魅力
大人で子供なヒーローの活躍を描く『シャザム!』

2021/10/25 公開

「担当声優」システムによるキャラクター性の補強

かつて民放テレビで洋画番組が数多く放送されていた頃、「この俳優の声は、この声優が担当している」というセオリーのようなものがあった。「その声優の声を聞けば、担当するハリウッド俳優の姿を思い浮かべる」。そうした連想につながるほど、当時の吹替えでの「担当声優」のポジションは重要だった。もちろん、そのシステムは現在でもあり、映画のソフト化では担当声優が演じた吹替版が収録されているものも多い。一方で、吹替版を担当する音響演出や映画会社の意向によって、残念ながら担当声優が演じられなかったケースもいくつか存在する。

DCコミックス原作のアメコミ映画『シャザム!』(2019年)に登場するヒーロー、シャザムを演じたのは、ザッカリー・リーヴァイ。愛嬌のある表情とコミカルな演技が特徴のリーヴァイの出世作といえば、全5シーズンにわたるロングランヒットを記録した、スパイアクションドラマ『CHUCK/チャック』だ。同作にて、リーヴァイ演じるチャック・バトウスキーの吹替えを担当し、頼りないけどスパイとして優秀な能力を兼ね備えるキャラクターを長きにわたって演じてきたのが声優の草尾毅。草尾の声によってリーヴァイの演じるチャックのキャラクター性が補強され、さらに5シーズンの放送のうちに声と演者がなじみ、リーヴァイ=草尾がベストと感じているファンも多いはずだ。

「SLUM DUNK」の桜木花道役や「ドラゴンボール」のトランクス役などでも知られる草尾毅

『シャザム!』の劇場公開時の吹替えは、音響演出を日本のコメディ映画の第一人者である福田雄一が担当したことから、彼が懇意にしている俳優の菅田将暉が担当していたが、やはりザッカリーを演じ慣れている草尾に吹替えをしてほしいと思っていたファンも多かった。その思いが、今回のザ・シネマの新録吹替え企画で実現。オリジナル版とはひと味違う、民法テレビの洋画番組のような吹替えを楽しむことができる。

子供が大人になってヒーロー活動をすることの意味

『シャザム!』は、アメコミヒーロー映画の中でも特異な作品だ。その最大のポイントは「変身」。多くのアメコミ映画において、ヒーロー自身の年齢は大人であり、コスチュームをまとってヒーロー活動を行うというのがセオリーとなっている。そんななか、シャザムは少し捻くれてはいるものの純粋で優しい心を持つ少年ビリーが、後継者を探す魔術師シャザムから6人の神々の力を継承したことで誕生したヒーロー。特殊な能力や才能を持つ大人がコスチュームを着てヒーローになるのではなく、普通の少年が魔法の力でシャザムへ変身することでヒーローとして行動することができる。つまり、ヒーローコミックスを読む子供たちが、より感情移入しやすいキャラクター設定となっている。

「子供に見せたいアメコミヒーロー映画」との評価も得ている『シャザム!』

しかし本作は、単なる「心は子供、見た目は大人」のヒーローが活躍するだけの物語にはなっていない。子供であるビリーがヒーローとして選ばれた理由は、ヒーローになって終わりではなく、ヒーローとして在り続けるにはどんな困難があるのか? 少年たちにとっての等身大の存在であり、「自分がヒーローになるとはどういうことなのか?」を考えさせてくれることが、『シャザム!』という作品の重要なテーマだと言えるだろう。

シャザムへ変身する能力を身につけたビリーは、新たな家族となった養兄弟でヒーローオタクのフレディの知識に助けられながら能力の使い方を学び、一方で大きな力を得た過信から間違いや敗北も味わっていく。ヒーローの姿と能力を手に入れても、本当のヒーローにはすぐになれない。「経験」や「学び」の重要性を、『シャザム!』ではヒーローになった少年の心を通して描いていく。そうした要素があるため、一部のアメコミファンは本作を「子供に見せたいアメコミヒーロー映画」として評価している。

そして、やはり子供に見せるならば、重要となるのが日本語吹替えの存在だ。「映画は字幕派だ」という方もいると思うが、吹替版には字幕版では欠けてしまう情報を補う魅力がある。一つは、画面に映し出される映像情報を余すことなく「見る」ことができること。字幕を読みながらだと、どうしても画面の中に映し出される情報を見落としてしまう。子供であればなおのこと、字幕を読みながら映画を観るのは難しいに違いない。吹替版は、子供が映像に集中して観るためには、やはり欠かすことができないものだ。

アフレコに臨む草尾。彼が見せるテクニックにも耳を傾けたい

吹替えについてもう一つ重要なのが、役者と声のシンクロ度。主演級の役者に担当声優がいることで、声と顔の違和感を少なくする効果がある。また、担当声優にとっても、自身が何度も同じ俳優に声をあてることによって、しゃべりのクセや独特のニュアンスなどを熟知していく。その結果、より自然に役者の声を吹き替えられるメリットもあるのだ。シャザムを演じるリーヴァイは、見た目は大人なのに純粋な子供の心を持つという絶妙(?)なニュアンスを演技で見事に表現している。吹替えにあたってそのニュアンスを表現するには、やはり長年リーヴァイの演技に声をあててきた草尾ほど最適な声優はいないだろう。

なお共演には、草尾と『CHUCK/チャック』のドラマを盛り上げたベテラン声優陣が集結し、ドラマシリーズを共に演じたからこその見事なチームワークを発揮。信頼感のある声優同士のアンサンブルによって生まれ変わった『シャザム!』は、吹替えによる違和感を覚えず、それでいて絶妙さを味わえる素晴らしい仕上がりになっている。

粟野志門(左)や魏涼子(右)ら『CHUCK/チャック』でおなじみの面々が集結

吹替え洋画の楽しみを改めて確認することができる『シャザム!』の新録吹替版を、ぜひチェックしてみてほしい。

文=石井誠

石井誠●1971年生まれ。アニメ、アメコミ、アクション、ミリタリーなどのジャンル系映画を好むホビー系映画ライター。「シネコンウォーカー」、「MOVIE WALKER PRESS」、「映画秘宝」、「月刊ニュータイプ」、「アニメージュプラス」などで執筆。著書に「安彦良和 マイ・バック・ページズ」(太田出版)などがある。

<放送情報>
(吹)シャザム! 【ザ・シネマ新録版】
放送日時:2021年11月7日(日)21:00~

チャンネル:ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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