観る者を興奮へと誘う圧倒的なエンタメ力!『トップガン』を生んだ名匠トニー・スコットの真髄を語ろう

観る者を興奮へと誘う圧倒的なエンタメ力!『トップガン』を生んだ名匠トニー・スコットの真髄を語ろう

『トップガン』を大ヒットさせたトニー・スコット監督のフィルモグラフィを振り返る

  • 監督が語る巨匠の仕事

観る者を興奮へと誘う圧倒的なエンタメ力!
『トップガン』を生んだ名匠トニー・スコットの真髄を語ろう

2022/08/01 公開

トム・クルーズ主演の最新作『トップガン マーヴェリック』(2022年)が劇場公開され、大ヒットを記録している。前作『トップガン』が公開されたのが1986年。続編が36年越しで実現したのもすごいし、それがいまの多くの観客に受け入れられているのもすごい。なにより同一人物を、主役としてトム・クルーズが演じているのが驚異的だ。

ライバル、アイスマンとマーヴェリックの友情は『トップガン マーヴェリック』でも続いていた(『トップガン』)

36年前の『トップガン』とはどんな映画だったのか?舞台となるのは、「トップガン」と呼ばれる米海軍のエリートパイロット養成学校。トム・クルーズが演じるのは、自信家でスピード狂のマーヴェリックという新人パイロットだ。無鉄砲な彼が仲間たちと切磋琢磨し、恋もしたりして、人として成長していく。

世界最高のパイロット養成所を舞台に、厳しい訓練に挑む血気盛んな青年の恋や成長が描かれる(『トップガン』)

友情と恋とバトル、という少年漫画みたいな構成だけど、『トップガン』の魅力は実はストーリーではない。見どころは、海軍の協力を得て撮影された戦闘機のスピードと迫力。バイクを疾走させ、海辺で汗をかくクルーズとそのライバルたちのキラキラ感。そして、80年代を鮮やかに彩る音楽だ。本作を作った映画監督はというと、『トップガン マーヴェリック』の最後に「In memory of Tony Scott」という字幕が出たことに気づいた観客も多いだろう。トニー・スコット監督だ。

R・レッドフォードとB・ピットが共演する緊迫感あふれるサスペンス『スパイ・ゲーム』

「アメリカ映画の作り手で一番好きな映画監督を挙げろ」と聞かれたら、私はトニー・スコット監督の名をためらわずに挙げる。本当に大好きな監督で、その作品群はいつ観返しても面白い。彼は『トップガン』の大ヒット以降、様々な大作を手がけたが、その中でもベスト級にオススメしたいのが、『スパイ・ゲーム』(2001年)だ。

ロバート・レッドフォードとブラッド・ピットがCIA工作員の師弟を演じる『スパイ・ゲーム』

CIAで働くスパイ役として、ロバート・レッドフォードとブラッド・ピットという2大スターが競演している。本作には、冷戦下の作戦や紛争地での工作など派手なシーンもたくさんあるが、なにより面白いのが複雑に伏線の張られたストーリーだ。スコット監督の映画は、活劇的なめまぐるしさやカッティングのキレ味に注目が集まりがちだけど、実はきめ細かい演出も全編にちりばめられている。本作を最後まで観れば、誰もがニヤリと微笑み、「映画っていいなぁ」とつぶやくことになるのは間違いない。

潜入先で逮捕されたエージェントを救うため、退職間際のベテランエージェントが壮大な救出作戦を計画する(『スパイ・ゲーム』)

スコット監督は、いまから10年前の2012年8月に亡くなった。享年68。現役監督としてまだまだ刺激的な映画をバリバリ撮りまくる。誰もがそう思っていた矢先の訃報だった。これほど逝去のニュースが悲しかった映画監督はいない。以来、私のひそかな願いは、誰かが「映画監督トニー・スコット」を正当に評価し、その演出術について緻密に分析した評伝が書かれることだ。しかし、10年経ってもまだ日本では出版の兆しすらない。だったらいつか私が書こう。それを老後の楽しみにしよう。いまはそう思っている。

盟友、デンゼル・ワシントンを主演に迎えた遺作『アンストッパブル』

遺作となったのは、デンゼル・ワシントン主演『アンストッパブル』(2010年)。実際の列車暴走事故を基に映画化した作品だ。スコット監督とワシントンはこれより前にも、『クリムゾン・タイド』(1995年)、『デジャヴ』(2006年)、『サブウェイ123 激突』(2009年)などでタッグを組んできた。その集大成となっているのが本作。

些細な整備ミスによって重量級の列車が暴走し始めた。止めようとするが不運が重なって止まらない。このまま暴走が続くと、やがてあるポイントで大事故が起こることは確実。という、まるでサイレント映画期にタイムスリップしたかのようなシンプルな物語が、名匠の手にかかると見事な現代活劇になる。

化学物質を大量に積んだ無人貨物列車をベテラン機関士と新米車掌が止めようとする『アンストッパブル』

乗り物が走る。人間がその上で右往左往する。それだけで映画は十分に面白くなり、サスペンスが生まれる。その教科書のような作品だ。いくら有望な新人監督が出てこようと、確固たる技術を持った古参監督はまだまだ止まらない。まさにアンストッパブルな映画監督トニー・スコットのフィルモグラフィを締めくくるにふさわしい傑作といえる。

ぜひこの機会に、まだトニー・スコットの真髄を知らない多くの方に、その映画の魅力を知っていただき、過去の名作を振り返ってほしいと、心の底から思う。

文=入江悠

入江悠●1979年生まれ。映画監督。監督作に「SRサイタマノラッパー」シリーズ、『日々ロック』(2014年)、『ジョーカー・ゲーム』(2015年)、『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年)、『AI崩壊』(2020年)、『聖地X』(2021年)など。

<放送情報>
トップガン
放送日時:2022年8月21日(日)23:30~、24日(水)17:00~

スパイ・ゲーム
放送日時:2022年8月7日(日)1:00~、29日(月)18:45~
チャンネル:ザ・シネマ

デイズ・オブ・サンダー
放送日時:2022年8月8日(月)21:00 ~ 、8月18日(木)9:15 ~
チャンネル:ムービープラス

デイズ・オブ・サンダー
放送日時:2022年8月6日(土)1:15~、15日(月)9:00~
チャンネル:スターチャンネル2

アンストッパブル
放送日時:2022年8月3日(水)15:45~、13日(土)2:15~
チャンネル:スターチャンネル1

(吹)アンストッパブル
放送日時:2022年8月8日(月)23:00~、14日(日)12:00~
チャンネル:スターチャンネル3

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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