36年ぶりの続編が公開の『トップガン』
大空での迫力あるドッグファイトに心が躍る!
2022/03/28 公開
空での活躍、教官との恋、相棒との別れ──
5月27日(金)に、いよいよ公開予定の『トップガン マーヴェリック』。言うまでもなく、トム・クルーズ主演による1986年の大ヒット作『トップガン』の36年ぶりの続編で、待ちに待ったというファンも多いのではないだろうか。そもそも製作のニュースは10年以上前から伝えられ、2018年に撮影がスタートするも、2020年の劇場公開はパンデミックで延期を繰り返したのだから、何とも長い道のりだった。一本のハリウッド大作が日の目を見るまで、長い時間を費やすのはよくあることだが、それにしても長かった。公開が着々と近づいていることにファン目線で感慨もあるが、まずはオリジン、すなわち『トップガン』を知っておかないことには始まらない。というわけで、一世を風靡したこのスカイ・アクションを、じっくりと振り返ってみよう。
クルーズ扮する主人公マーヴェリックは米海軍の若き戦闘機パイロット。性格は生意気で無鉄砲だが腕は文句なしで、レーダー担当の相棒グース(アンソニー・エドワーズ)と共に手柄を立ててきた。上官の推薦により、より高いレベルの戦闘飛行技術を身につけるための訓練所、通称トップガンに送られた彼はライバルのパイロット、アイスマン(ヴァル・キルマー)とトップの座を競い合う。一方で、航空物理学の女性教官チャーリー(ケリー・マクギリス)と恋に落ちるマーヴェリック。そんなある日、演習飛行中の事故によりグースが命を落としてしまう。グースを死なせた自責の念に駆られて自信を失ったマーヴェリックは、恐怖から以前のような飛行ができなくなっていた。失意の中で、やがて迎えた卒業式の日、巡洋艦援護のための緊急出動命令が卒業生たちに下され…。
若者の心を掴んだドラマ性とトレンド性
『トップガン』の魅力を一つ挙げるとすれば、なんといっても大空を舞台にしたドッグファイトだ。そもそも本作の企画は『フラッシュダンス』(1983年)でヒットを飛ばしたプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーとドン・シンプソンが、実在するトップガンについて記した雑誌記事を読み、「これは地球版の『スター・ウォーズ』になる」と確信したことから始まった。ご存知のとおり、「スター・ウォーズ」には宇宙空間でのドッグファイトが描かれ、観る者を興奮の渦に巻き込んできた。『トップガン』は、このエキサイティングなアクションを現実的な世界で再現させる。冒頭の敵機との攻防からしてスリリングだが、演習中の極限状態、クライマックスの戦闘へとスケールはどんどん増していく。監督のトニー・スコットは本作でヒットメーカーの仲間入りを果たしたが、アクションを理解しやすく、なおかつ緊迫感を維持して、派手に演出する手腕が光った。
本作は青春ドラマの側面が非常に強い。1980年代半ばは、『アウトサイダー』(1983年)のヒットによりブラット・パックと呼ばれた若手スター群が一斉に世に放たれ、『ブレックファスト・クラブ』(1985年)などの青春映画で台頭した時期だ。クルーズは『アウトサイダー』に出演し、『卒業白書』(1983年)で注目されるも、次の一手に苦心していた。そんな折に舞い込んだのが、この企画。天才肌の若者が、挫折を乗り越えて、自分が何者かを見つけていく、そんなドラマはクルーズだけでなく、多くの若い観客の共感を引き寄せた。わかりやすいといえばわかりやすい成長ストーリーだが、それを丁寧に描くのは難しい。主人公マーヴェリックに、同じくパイロットだった父の死という「影」の要素を背負わせ、しのぎを削るライバルや厳しい教官らのキャラクターを的確に配置し、隠された秘密を明かしながら展開するドラマは絶妙で、その流れに熱くならざるを得ない。
一方で、『トップガン』は時代の大きなトレンドとなる資質を備えていた。たとえば、クルーズが劇中で着用していたMA-1ジャケットは、たちまち当時の流行アイテムとなる。ちなみに、同時期に日本公開された『ハスラー2』(1986年)にも彼は出演して魅力を放ったが、こちらの映画もヒットしてビリヤードが流行。当時のクルーズは、ある意味トレンドセッターでもあったのだ。もとい、『トップガン』に話を戻すが、サントラの大ヒットも触れないわけにはいかないだろう。人気アーティストの新曲が提供されたサントラのスタイルは、ブラッカイマーが製作した『フラッシュダンス』や『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)といった作品と同様に、ケニー・ロギンスの「デンジャー・ゾーン」やベルリンの「愛は吐息のように」など現在も耳にする機会の多いヒットナンバーが誕生。これらが若い観客を熱狂させる要素となったのだ。
さて2022年の『トップガン マーヴェリック』である。同作の詳細に関しては、現段階では秘密のベールに覆われているが、クルーズ扮するマーヴェリックがトップガンの教官となっているとのこと。ヴァル・キルマーが演じたアイスマンも再登場。さらに、グースの遺児がトップガンの生徒役として登場し、マーヴェリックと葛藤のドラマを演じるという。監督は亡きトニー・スコットに代わり、『オブリビオン』(2013年)に続いてクルーズとタッグを組むジョセフ・コシンスキー。すでに公開されているトレーラーからはスカイ・アクションのすごみも存分に伝わってくる。とりあえず、一時代を築いた原点『トップガン』を観直して、この新作を迎撃せよ!
文=相馬学
相馬学●1966年生まれ。アクションとスリラーが大好物のフリーライター。「DVD&動画配信でーた」、「SCREEN」、「Audition」、「SPA!」等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
<放送情報>
トップガン
放送日時:2022年4月16日(土)21:00~、22日(金)21:00~
(吹)トップガン
放送日時:2022年4月22日(金)12:30~、28日(木)12:30~
チャンネル:ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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