サントラも大ヒット! MTV感覚にあふれた青春映画の傑作『フットルース』

サントラも大ヒット! MTV感覚にあふれた青春映画の傑作『フットルース』

1980年代を代表するダンス映画『フットルース』

  • 青春シネマクロニクル

サントラも大ヒット!
MTV感覚にあふれた青春映画の傑作『フットルース』

2021/05/24 公開

ハリウッドとMTVによるコラボで、若者たちを虜に!

MTV感覚。かつてそんな言葉が流行した時代があった。
1981年にアメリカで開局したミュージック・ビデオ専門テレビ局「MTV」は、ティーンの音楽の聴き方だけでなく映像の見方を変えた。ミュージック・ビデオのスピーディーなカット割とノリの良さに魅せられた彼らは、従来の映像作品を「古臭い」と遠ざけるようになってしまったのだ。要するに、現在におけるYouTubeみたいなものである。ハリウッドはMTV感覚を取り入れた映画の製作を迫られた。その最初の返答が1983年公開の『フラッシュダンス』、第二弾が本作『フットルース』(1984年)だった。

名曲「ネヴァー」に乗せて、レンが怒りをダンスで表現するシーンは圧巻!

主演を務めたのは、舞台出身で、『ダイナー』(1982年)で注目されたケヴィン・ベーコン。映画は、ベーコン扮する高校生レンが、シカゴから中西部の田舎町に引っ越してくるシーンから始まる。髪の毛を立てて、革ジャンに細いネクタイを締めた彼のファッションは、当時のMTVに登場するクールなティーンそのものだ。ところが町は厳格な牧師によってロックやダンスが禁止されており、レンは偏狭な風習に立ち向かわざるを得なくなる。

本作の特徴は、音楽の使い方にある。劇中曲は、どれも人気アーティストによる新曲で、登場人物の境遇や心情を代弁したナンバーだ。こうした曲が劇中に流れ出すと台詞は消え、細かいカットを積み重ねたダンスシーンやモンタージュ・シーンになる。そしてそれは曲が終わるまで続く。

映画会社はこのシーンを切り取ってミュージック・ビデオとしてMTVに提供した。MTVを観た若者たちは画面に流れる映像が劇場映画の一部であることを知り、全貌を知ろうと映画館に押し寄せた。ハリウッドとMTVによるこうしたコラボは1980年代いっぱい続くことになる。

ケヴィン・ベーコン扮するレンの髪型は、スティングを意識していたとか

『フットルース』は、こうしたコラボの中でも空前の成功を収めた作品だった。映画の興行収入は本国だけで8000万ドル、ケニー・ロギンスが熱唱するタイトル曲をはじめ2曲のナンバーワンヒット曲を含むサントラアルバムは900万枚を売り上げたのだから。

日本でも大ヒット!楽曲は次々と人気ドラマの主題歌に

成功の余波は日本にまで届いた。映画もサントラも日本で大ヒット。レンがトラクターのチキンレースに挑むシーンで流れるボニー・タイラーの「ヒーロー」は麻倉未稀によってカバーされ、大映ドラマ「スクールウォーズ」の主題歌に使われた。レンが倉庫でオリンピック級の体操を披露するシーンで流れるムーヴィング・ピクチャーズ「ネヴァー」は元ピンクレディーのMIEによってやはり大映ドラマ「不良少女とよばれて」の主題歌になった。そしてプロム・シーンで流れる「パラダイス~愛のテーマ」はそのまま「金曜日の妻たちへII 男たちよ、元気かい?」の主題歌に使用されたのだ。

正直言うと、こうした楽曲のアレンジは当時最先端を行っていた英国産のものに比べると、ギターやシンセの使い方が大袈裟すぎて繊細さがない。でもだからこそJポップ前夜の日本の歌謡曲リスナーのハートを撃ち抜いたともいえる。

大映ドラマや歌謡曲をバカにしていた当時の洋楽リスナーや洋画ファンはこうした『フットルース』ブームにこぞって批判を浴びせた。そうした批判意見の筆頭となったのが「今どきダンスが禁止されている町なんて、設定に無理がある」という意見だった。

しかしその批判は的外れだった。なぜなら本作は「1979年にオクラホマの田舎町が、ティーンエイジャーの運動によって80年間守っていたダンス禁止令を廃止した」実話をベースにしていたからだ。この設定は2011年のリメイク版『フットルース 夢に向かって』でも変えられていない。アメリカの田舎町の保守性、閉鎖性はそれほど根深いのである。

レンとエリエルは、自由を勝ち取りダンスパーティを成功させる

そんな同作の脚本と挿入歌の作詞を手がけたディーン・ピッチフォードは、もとはボブ・フォッシーの弟子筋にあたるダンサーで、ブロードウェイの作詞家を経て『フェーム』(テレビ版に出演していたロリ・シンガーは本作のヒロイン、エリエルを演じた)に関わったことをきっかけに脚本家になった人物。監督のハーバート・ロスもダンサーから振付師を経て映画監督になった人で、『愛と喝采の日々』(1977年)ではアカデミー賞監督賞にノミネートされ、本格的なミュージカル映画『ペニーズ・フロム・ヘブン』(1981年)も撮っている。ジョン・リスゴーやダイアン・ウィーストといった実力派俳優がエリエルの両親役で出演しているのも、ロスの人望の高さゆえだ。

つまり『フットルース』の「MTV感覚」とは、旧体制であるブロードウェイやハリウッドの才能が職人気質で作りあげたものだったわけだ。だからこそ最先端の表現ではなくなっても本作は鑑賞に耐えうる普遍性を保っているのかもしれない。

最後に、本作に出演した一人の俳優について書いておきたい。若き日のサラ・ジェシカ・パーカー扮する女子ラスティに恋するウィラードを演じたクリス・ペンだ。撮影当時18歳の彼は、名字と顔を見ればわかる通り、ショーン・ペンの実弟。本作や『ワイルド・ライフ』(1984年)の快演で注目されたものの、1990年代に入ると別人のように太ってしまい、2006年に心臓肥大とオーバードーズが重なって40歳の若さで急死してしまった。

だが「ロミオのようにロマンティックではないけど素敵な人なの」と歌われるデニース・ウィリアムズ「レッツ・ヒア・イット・フォー・ザ・ボーイ」(この曲がもうひとつのナンバーワンヒット曲だ)に乗って、彼がダンスを特訓するシーンは永遠に観客を魅了し続けることだろう。

文=長谷川町蔵

長谷川町蔵●ライター&コラムニスト。「映画秘宝」「CDジャーナル」「EYESCREAM」などに連載中。著書に「インナー・シティ・ブルース」(スペースシャワーブックス)、「文化系のためのヒップホップ入門1~3」(アルテスパブリッシング/大和田俊之と共著)、「ヤング・アダルトU.S.A.」(DU BOOKS/山崎まどかと共著)など。人生で最も観た映画は『ブレックファスト・クラブ』。

<放送情報>
フットルース
放送日時:2021年6月15日(火)17:00~
チャンネル:ザ・シネマ

※放送スケジュールは変更になる場合があります