『BLUE/ブルー』で敗者を演じた松山ケンイチが語る「負け」や「失敗」をエネルギーに変える不幸ではない生き方

『BLUE/ブルー』で敗者を演じた松山ケンイチが語る「負け」や「失敗」をエネルギーに変える不幸ではない生き方

松山ケンイチが主演最新作やお気に入りの映画について語る

  • インタビュー

『BLUE/ブルー』で敗者を演じた松山ケンイチが語る
「負け」や「失敗」をエネルギーに変える不幸ではない生き方

2021/04/05 公開

主演最新映画『BLUE/ブルー』で、情熱があっても試合にまったく勝てないプロボクサーの瓜田信人を全身全霊で演じた松山ケンイチさんを直撃!映画の撮影秘話や共演者たちとのエピソードから、何度でも繰り返し観る「ヘビロテ映画」や4月にスカパー!で放送される『うさぎドロップ』(2011年)、『関ヶ原』(2017年)の話までたっぷり聞いた。

負けても負けても闘い続けるボクサーを演じる松山

「『BLUE/ブルー』を観て、自分なりの強さを手に入れてもらいたい」

『ヒメアノ~ル』(2016年)、『犬猿』(2018年)などの𠮷田恵輔監督が自らのオリジナル脚本を映画化した『BLUE/ブルー』は、松山ケンイチが演じる主人公の瓜田信人を中心に、挑戦者を象徴するボクシングの「青コーナー」側で戦い続ける男たちの生き様を鮮烈に切り取った人間ドラマ。松山はどこに惹かれて、この作品への出演を決めたのか?話はそこから始まった。

「『BLUE/ブルー』で描かれているのは負けていく人たちの話です。だけど、台本を読んだ時に、ボクシングで負け続ける瓜田の生き方にポジティブなものを感じました。僕は勝負ということは普段あまり考えずに生きていますが、成功し続けているわけではないし、失敗したことをどうやって前向きに自分のエネルギーに変えていくか?ということが自分の中のテーマとしてあるんです。だから負けているのに不幸ではない、そんな瓜田に興味があった。なぜ、負け続けているのに不幸ではないのか?瓜田を通して、自分もその理由を知りたいなと思ったんです」

一方、東出昌大が演じる小川一樹は、瓜田の誘いでジムに入り、持ち前の才能とセンスで日本チャンピオンの座に一気に王手をかける。瓜田をボクシングの世界へ導いた初恋の女性・千佳(木村文乃)は、いまは小川の婚約者だ。

瓜田は小川に対して様々な思いが入り混じった感情を抱いている

「瓜田は小川に対してすべての感情を持っています。小川は尊敬するボクサーだし、彼の才能も認めている。好きな女性の彼氏でもあるから支えていきたいとも思っている。でも一方では、自分が欲しいものをすべて手に入れた彼に嫉妬もしている。そういう友情や愛情、憎しみみたいなものがすべて瓜田の中にはあると思います」

だが、瓜田はそんな複雑な内面を吐露しない。

「瓜田はずっと秘めていますよね。自分の悔しさや気持ちを表にほとんど出さない。そこにも実は幸せになるヒントが隠されているんじゃないかと思ったし、瓜田は負けた時の負の感情の逃がし方が上手いですよね。『負け』や『失敗』をどう受け止めるかでダメージがまったく違う。それに彼は、不満や怒りを吐き出さない。そこが瓜田の強さなのかなと思います。『強さ』には定義がないから、この映画を観て、自分なりの強さを手に入れてもらいたいし、そこを意識して観て頂けたらうれしいです」

瓜田にボクシングを始めるきっかけを与えた千佳は、いまは小川の婚約者

トレーナーも兼任している瓜田は、後輩のボクサーから心ないひどい言葉を吐かれても決してキレることなく、丁寧に指導を続けていく。

「瓜田は自分の弱さを客観的に認めていると思うんですよね。自分が弱いことは本人も分かっている。だから、自分よりも上手い相手には素直にそう言えるし、自分のことをバカにする後輩もちゃんと認めて、『パンチ力がある』って褒めることが出来たんだと思うんです。ああいう言葉は物事を客観的に捉えていないとなかなか出てこないと僕は思うし、実際、結果を出せていないから、瓜田の意識は自分がボクシングで勝つことよりも、ボクシングの技術を次の世代に繋いでいくということに変わっていっているような気がします」

「チャップリンの『独裁者』は何度でも観てしまいます」

過去の共演者も多かったことで現場は安心感があったそう

小川役の東出昌大、モテるためにボクシングを始めた楢崎剛役の柄本時生とは『聖の青春』(2016年)に続いての共演だ。

「最初からそういうアドバンテージがあったのはよかったですね。千佳役の木村文乃さんとも以前ほかの作品でご一緒していて信頼や安心感があったので、打ち合わせなどは特にしていなくて。それよりも、バッと対峙した時に、相手が何を出してくるんだろう?ということを楽しみにしていたところがあります。それに、ここでこういう芝居をしてみよう、といったこだわりみたいなものを作ると、僕個人が出てしまって瓜田らしさが消えてしまう。それはイヤなので、そうならないように意識しました」

もともと敬愛していた𠮷田恵輔監督の現場も、松山の肌にフィットした。

「𠮷田監督自身がすごくフラットで、空き時間があったらポケモンを探しに行っちゃうような人なんですよね(笑)。監督はいつも自然体だったし、楽な気持ちで居られる居心地のいい現場だったから、いい意味で、芝居をしてないじゃん!って思われるような自然な動きや言葉が何度も出せたんです。普通は、監督に怒られそうで怖いからできないんですよね。でもそれが出来たので、最高の現場だったと思います」

繰り返し観てしまう映画はチャップリンの『独裁者』

そんな松山に、「瓜田のように失敗しても何度も何度も繰り返しやってしまうことはありますか?」と問うと、即答だった。

「この仕事じゃないですかね。ほかのことにもいろいろ挑戦したけれど、何度も失敗すると飽きちゃうし、それで僕はどれもやめてきました。だけど、この仕事だけはずっと続いている。たぶん、居心地がいいんじゃないですかね。自分の居場所だと思っています(笑)」

さらに、「何度も繰り返し観る映画は?」と問うと…。

「チャールズ・チャップリンの映画は何度も観ています。こういう時に観る、というのはないんですが、ふと観てみようかなと思う時があるんです。特に『独裁者』(1960年)は最初に衝撃を受けた、チャップリンのことが好きになった映画だし、最後の演説のシーンは何度も観てしまいますね」

チャンネルNECOで放送される『うさぎドロップ』では、松山は亡き祖父の幼い隠し子を必死に育てる主人公を熱演。また『関ヶ原』では、岡田准一演じる主人公の石田三成と深い友情で結ばれていた直江兼続を演じている。

当時まだ6歳の芦田愛菜と親子を演じた『うさぎドロップ』

「『うさぎドロップ』のSABUさんは俳優出身だから、俳優目線で現場を作ってくれたんです。だからすごく心地よかったし、映画の世界に上手く入っていくことができました。共演した芦田愛菜ちゃんは当時6歳だったけど、6歳の愛菜ちゃんに衝撃を受けることもたくさんありましたね。そうそう、香里奈さんの息子を演じていた佐藤瑠生亮くんに3、4年前に偶然再会して。彼からカポエラを教えてもらったんですよ(笑)」

司馬遼太郎のベストセラーを監督・脚本:原田眞人で映画化した『関ヶ原』

「『関ヶ原』には苦い思い出があります。『聖の青春』の撮影が終わった後、増量した体重を落とす為に糖質をカットした状態で現場に入ったので、セリフが全然出てこなくて、いつものように演技ができなかったんです。だから、岡田准一さんにも原田眞人監督にもすごく迷惑をかけてしまいました。ただ、原田監督はすごく面白い人で、とても楽しみながら演出されていたのが印象に残っていますね」

取材・文=イソガイマサト/撮影=中川容邦

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松山ケンイチ●1985年生まれ、青森県出身。2002年に俳優デビュー、『デスノート』シリーズのL役でブレイクし注目を集める。2016年には『聖の青春』で第40回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。近年のおもな出演作に『怒り』(2016年)、『ユリゴコロ』(2017年)、『宮本から君へ』(2019年)、『ホテルローヤル』(2020年)、『ブレイブ -群青戦記-』(公開中)など。公開待機作に『川っぺりムコリッタ』(2021年公開)がある。

<新作映画情報>
『BLUE/ブルー』4月9日(金)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー
監督・脚本:吉田恵輔
出演:松山ケンイチ、木村文乃、東出昌大、柄本時生ほか

<放送情報>
うさぎドロップ
放送日時:2021年4月8日(木)6:00~、4月20日(火)18:25~
関ヶ原
放送日時:2021年4月11日(日)9:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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