全米公開1か月前にこの世を去ったジェームズ・ディーンがアメリカン・ティーンエイジャーを演じた『理由なき反抗』

全米公開1か月前にこの世を去ったジェームズ・ディーンがアメリカン・ティーンエイジャーを演じた『理由なき反抗』

永遠のスター、ジェームズ・ディーンの代表作『理由なき反抗』

  • 青春シネマクロニクル

全米公開1か月前にこの世を去ったジェームズ・ディーンが
アメリカン・ティーンエイジャーを演じた『理由なき反抗』

2021/07/26 公開

「若者」時代の存在を描き、新しい時代の到来を告げた

17歳のジム(ジェームズ・ディーン)はロサンゼルスに引っ越してきた日の深夜、喧嘩をして警察署に連れていかれた。そこで彼は、子犬を拳銃で撃ち殺した少年プラトー(サル・ミネオ)、ひとり街を出歩いていて補導された少女ジュディ(ナタリー・ウッド)と知り合う。ふたりはジムの転校先の高校の生徒だった。

孤独なジムは、やり場のない想いを警察官に打ち明ける ※本編はカラー

翌朝、初登校したジムは、不遜な態度から不良グループのリーダー、バズから目をつけられ、ナイフでのバトルを強要される。ふたりは決着をチキンレースでつけようとするが、レースでバズは崖から車ごと転落してしまう。罪の意識から警察で事情を話そうとしたジムは両親から反対されて家を飛び出し、やはり家出していたジュディとプラトーの手引きで空き家に身を潜めるのだが……。

1955年10月にアメリカで公開された『理由なき反抗』は、新しい時代の到来を告げる作品となった。それまで無邪気な子どもはある年齢を境にいきなり大人になるものとされていた。しかしその間に、自分が何者なのか悩み、苦しむ「若者」時代が存在することが明かされたのだ。

もちろん若者を描いた映画は初めてではない。『理由なき反抗』の2年前には、革ジャンに身を包んだバイカー集団を描いた『乱暴者』がヒットしている。しかし主演のマーロン・ブランドはすでにアラサーのスター俳優。若者というよりは成熟した「アニキ」としての魅力を漂わせていた。

ディーンは、本作で「ファースト・アメリカン・ティーンエイジャー」と呼ばれた ※本編はカラー

一方、本作でジムを演じたジェームズ・ディーンは「若者」そのものだった。当時24歳の彼は、この年の3月に公開された『エデンの東』でいきなり主演に抜擢された新人俳優。身長が170センチ前後と、アメリカ人としては小柄なのに猫背でさらに小柄に見せ、相手を濡れた瞳で下から見上げる決めポーズは今観てもエモい。リーゼント、ジーンズ、赤のスウィングトップのファッションの着こなしもパーフェクトだ。しかもディーンの若さは永遠に続くことが保証されていた。彼は映画公開の1か月前に自動車事故でこの世を去っていたのだから。

こうした死因ゆえに、ディーンが劇中で挑む危険なチキンレースの描写は、若い観客たちに衝撃を与えた。そのため後続の青春映画でもチキンレースは描かれ続けた。『アメリカン・グラフィティ』(1973年)、『グリース』(1978年)、『フットルース』(1984年)、そして『クライ・ベイビー』(1990年)。いずれもチキンレースのシーンがクライマックスを成している。

度胸試しを競うチキンレースは今も多くの青春映画に登場

変化球的なフォロワー作として『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)も挙げられる。主人公マーティが「チキン」と呼ばれるとキレる設定は、本作のジムへのオマージュである。もっともマーティはチキンレースに挑まないことによって自分の未来を変えるわけだが。

青春映画のエポックメイキングとなった様々な理由

『理由なき反抗』が後世に与えた影響はほかにもある。それは映画内のタイムライン。事件が立て続けに起きる本作だが、実はオープニングからラストシーンまで24時間しか経過していない。限定されたタイムラインでこそ若さはスパークするのだ。前述の『アメリカン・グラフィティ』やジョン・ヒューズの諸作品、そして『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019年)といった一夜物の青春映画は、こうした意味では『理由なき反抗』の子どもなのである。

こうした後世への影響以上に『理由なき反抗』を語る上で欠かせないファクターがある。それは、アメリカのLGBTQコミュニティにおいてサブテキスト(台詞では語られないが明示されている)でゲイを描いた青春映画として崇拝され続けてきたことだ。

ジュディ役は、『ウエスト・サイド物語』(1961年)のナタリー・ウッド ※本編はカラー

キー・パーソンはジムではなく、サル・ミネオ演じるプラトー。彼は知り合ったばかりのジムに熱心に世話を焼きながら、彼とジュディが惹かれ合っていることを知ると一転半狂乱になってしまう。一見、奇妙な行動に見えるが、恋心ゆえの行動と解釈すればすべて説明がついてしまう。

こうした解釈は決してこじつけではない。劇中、パニックを起こしたプラトーに対して、心配したジムが「寒いか」と言いながら自分のスウィングトップを脱いで手渡すと、彼はその匂いを嗅いで抱きしめるようなアクションをするのだから。当時としてはかなり踏み込んだ描写だ。というか、サル・ミネオそっくりだった若き日のラルフ・マッチオがプラトー的なキャラを演じた1983年公開の『アウトサイダー』ですらこんなシーンはない。

アンチヒーローの座を不動のものに ※本編はカラー

監督のニコラス・レイはバイ・セクシャルで、サル・ミネオもキャリア初期からバイ・セクシャルであると言われていた。そしてジェームズ・ディーンその人も現在ではそうした傾向を持っていたとの説もある。当時時代を遥かに先駆けたシーンは、三人の共犯関係で生み出されたものだったのかもしれない。

なおニコラス・レイは、アルコール依存症に伴う奇行でハリウッドを追われ、本作の8年後に病気で商業映画の監督を事実上引退。ミネオは1976年に37歳の若さで暴漢に刺殺されている。

文=長谷川町蔵

長谷川町蔵●ライター&コラムニスト。「映画秘宝」「CDジャーナル」「EYESCREAM」などに連載中。著書に「インナー・シティ・ブルース」(スペースシャワーブックス)、「文化系のためのヒップホップ入門1~3」(アルテスパブリッシング/大和田俊之と共著)、「ヤング・アダルトU.S.A.」(DU BOOKS/山崎まどかと共著)など。人生で最も観た映画は『ブレックファスト・クラブ』。

<放送情報>
理由なき反抗
放送日時:2021年8月10日(火)9:00~、22日(日)7:00~
チャンネル:ムービープラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります