キアヌ・リーヴスの超絶アクションが観客を圧倒!ストーリー性度外視の死闘に見惚れる『ジョン・ウィック』

キアヌ・リーヴスの超絶アクションが観客を圧倒!ストーリー性度外視の死闘に見惚れる『ジョン・ウィック』

キアヌ・リーヴスが超絶アクションを披露する記念すべきシリーズ第1作『ジョン・ウィック』

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キアヌ・リーヴスの超絶アクションが観客を圧倒!
ストーリー性度外視の死闘に見惚れる『ジョン・ウィック』

2021/09/27 公開

2014年、50歳のキアヌ・リーヴスが主演した『ジョン・ウィック』にはかなり度肝を抜かれた。演じるのは、引退した伝説の暗殺者。妻を病で亡くし、彼女の忘れ形見であった子犬をゴロツキに殺される。ゴロツキはロシアン・マフィアの親分の息子である。

その所業を聞いた親分は愚息に鉄拳制裁を加える。かつては鉛筆1本で敵を葬り、「ブギーマン」ないし「バーバ・ヤーガ」(いずれもザックリ言えば「鬼」という意味である)と呼ばれたジョン・ウィックの恐ろしさを、親分はよく知っていた。もはや生きた心地のしない彼らの心中などお構いなしに、復讐鬼と化したウィックはウルトラ暴力の封印を解き放つ。

妻が遺した愛犬を殺されたことへの復讐がすべての始まり(『ジョン・ウィック』)

伝説の殺し屋ジョン・ウィックが次々と立ちはだかる敵を血祭りに!

激しい訓練を経て最新のコンバット・シューティングや柔道、柔術のテクニックを体に叩き込んだリーヴスが、異常にスタイリッシュな画面の中で、それまであまり見たことのなかった殺しのテクニックを次々に披露する。『ジョン・ウィック』はそんな映画だった。

赤と黒のインテリアに飾られたあまり趣味のよくないクラブに単身殴り込み、立ちはだかるやくざを次々に血祭りに上げるウィック。胸の前で窮屈そうに構えた拳銃を敵に至近距離でだいたい2発ずつ(最初は胸に、次に脳天に)撃ち込む。あるいは関節技で飛びついた敵を瞬く間に無力化し、その体勢のままおまけとばかりに、やはり脳天を撃ち抜く。

こうして涼しい顔で無敵ぶりを見せつけ続けるのかと思いきや、意外と手傷を負う場面もあり、そのたびにド根性で反撃するくだりも異常に燃え上がる。これは間違いなく傑作であった。

マーシャルアーツや殺陣、ガンアクションなど様々な影響を感じさせるアクションが見どころ(『ジョン・ウィック』)

本作の世界には、やたらと厳しい掟に支配された暗殺者業界が存在するらしく、そのあたりの妙に頓智の効いた描写も大きな魅力だった。そうした世界観をさらに拡げてみせた続編が『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年)。ウィックが亡き愛犬の復讐を見事に果たした前作、その直後から物語は始まる。

暴力にまみれた殺し屋業界にはからずも復帰してしまったウィック。あれこれのしがらみにより、特技を活かした仕事を続けざるを得なくなる。神出鬼没のブギーマンとしてまたもや死体の山を築くけれども、諸々の成り行きから件の暗殺組合が次々と同業者を差し向けてくる。

第1作の完結直後からスタートする第2作『ジョン・ウィック:チャプター2』

ラッパーのコモン、最近ではTVドラマシリーズ「BATWOMAN/バットウーマン」でタイトルロールを演じたルビー・ローズら、錚々たるライバルたちとウィックが繰り広げる激闘。前作を超える銃撃戦と肉弾戦がこってり展開する。強敵を撃破しながら、ついに古巣たる暗殺組合の掟を破ってしまったことで、脱藩者として追われる身になるまでを描く。

荒唐無稽もここまでくれば逆にすべて受け入れざるを得ないし、何より無敵の主人公がかつてない危機に追い込まれるという、これは見事な第2部の幕切れであった。

暗殺者業界の掟を破ってしまったことで、狙われる身となったウィック(『ジョン・ウィック:チャプター2』)

超絶アクションを見せるために存在する映画…それが『ジョン・ウィック』!

第3作『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年)は、またまた前作の直後から続く物語を描く。14年の第1作から、我々の暮らす実時間では5年の月日が流れているわけだが、映画の世界では長めに見積ってもおそらく1週間程度の時間しか経過していないのである。その短い時間にどれだけの死体が積み重ねられ、またウィックその人もどれだけの傷を負ったのかを考えると、主人公の人生の壮絶さに思わず目眩がしてくる。

1400万ドルの賞金をかけられ、ありとあらゆる同業者から命を狙われる身となったウィック(石を投げれば殺し屋に当たるのではないかという勢いで、この作品世界にはヒットマンがひしめいているのだ。どうかしている)。

『仁義なき戦い』(1973年)で広能昌三(菅原文太)が言っていた「最後じゃけえ、言うとったるがの。狙われるもんより狙うもんのが強いんじゃ」という台詞を思い出す。これまで…とくに第1作においては、それこそ「狙うもん」として無敵の強さを誇ったジョン・ウィックが、いくつもの激戦を潜り抜けた結果として手傷を負い、殺し屋業界からもはみ出して世界中から狙われる対象となり、そろそろヤバいのではないか、と思ってしまう、そんな第3部の開幕である。

ウィックが馬に乗って逃走するアクションがさらに進化した第3作『ジョン・ウィック:パラベラム』

主人公の逃走経路はニューヨークからモロッコはカサブランカにおよぶ。謎に包まれていたその過去が、さらには暗殺者ギルドとその上部組織「主席連合」の知られざる全貌が、ここへ至って少しずつ明かされていく。物語はその広さと深さをさらに増している。

正直にいえば、シリーズもここまでくるとそろそろ映画としての綻びが多少なりとも見えてくる。しかし、スタントマン上がりの監督チャド・スタエルスキーと、それにスターとして二人三脚で入れ込むリーヴスの、とにかく誰も見たことのないアクションをスクリーンに、そして観客に叩きつけたいという願望と気合い。それがストーリーを超えて映画を支配しつつある。

もはや物語は未曾有のスタントとスタントの合間をつなぐものとしてのみ存在しているのではないか。この第3作を観ていると、どうにもそんなことを考えてしまう。ジョン・ウィックは世界を股にかけて大移動、行く先々でいちいち大バトルを見せつける。

1400万ドルの賞金をかけられ、次々と殺し屋たちの襲撃を受けてしまう(『ジョン・ウィック:パラベラム』)

新キャラクターのソフィア(ハル・ベリー)も2頭の愛犬と一心同体の見事なアクションを展開するし、新たな強敵ゼロ(マーク・ダカスコス)もウィックに憧れる徒手格闘のプロとして、己の身体能力の限界に挑むパフォーマンスを披露する。

とくに実写版『クライング・フリーマン』(1996年)や『ジェヴォーダンの獣』(2001年)でアクションスターとしての才能の片鱗を見せつけつつ、ついに第一線に躍り出ることのなかったダカスコスにもう一度スポットライトを当てたことに関してだけでも、この第3作は貴重な仕事をしてみせたといえる。たしかにこの人が演じる謎の板前ゼロと主人公とのいつ果てるともしれない肉弾戦は、見ているだけでどこか気が遠くなるような、そんな「アクション酔い」さえもたらすものだ。

物語は主にこうした異常なバトルを見せるためのお膳立てのために存在している。アクションが映画そのものを乗っ取ってしまった、そんな言い方もできるかもしれない。

しかしそれで何の問題があるのか。延々と続く肉弾戦まみれの第3作を観ていて、いっそ開き直ってそんなことを考える。そろそろ還暦近いリーヴスが激しい訓練を経て、人間の体の限界に迫るアクションに挑戦する。ストーリーは単なる方便として、リーヴスとスターたちが肉体で語り合う、あるいは殺し合う様を魅せる映画。『ジョン・ウィック』シリーズはそういう地平に到達しているのではないかと思う。

第4作も製作中とまだまだ続く『ジョン・ウィック』シリーズ(『ジョン・ウィック』)

製作中の第4作にはドニー・イェンと真田広之という、アジアが生んだ不世出の才能が集うという。それだけでも次はいったい何が起こるのか、思わず緊張してくる。しかし、スタエルスキ監督もリーヴスも、もはや体が動かなくなるまで続けるしかない!と、謎の決意表明を行っている。こうなってしまったら観客たる我々も四の五の言わず、シリーズの成り行きを最後まで見届けるしかない。

その決着が3年先ないし5年先、または10年先になろうとも。それが『ジョン・ウィック』第1作が魅せたアクションに喝采を送った者として、我々に課せられた責務なのである。

文=てらさわホーク

てらさわホーク●ライター。著書に「シュワルツェネッガー主義」(洋泉社)、「マーベル映画究極批評 アベンジャーズはいかにして世界を征服したのか?」(イースト・プレス)、共著に「ヨシキ×ホークのファッキン・ムービー・トーク!」(イースト・プレス)など。ライブラリーをふと見れば、なんだかんだアクション映画が8割を占める。

<放送情報>
ジョン・ウィック [R15+]
放送日時:2021年10月2日(土)16:30~、6日(水)21:00~

ジョン・ウィック:チャプター2 [R15+]
放送日時:2021年10月2日(土)18:30~、7日(木)21:00~

ジョン・ウィック:パラベラム [R15+]
放送日時:2021年10月2日(土)21:00~、8日(金)21:00~

チャンネル:ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります