アカデミー賞作品賞を含む4部門を獲得!鬼才ポン・ジュノによる衝撃作『パラサイト 半地下の家族』

アカデミー賞作品賞を含む4部門を獲得!鬼才ポン・ジュノによる衝撃作『パラサイト 半地下の家族』

カンヌ国際映画祭では韓国映画史上初の最高賞パルム・ドールを受賞

  • 今月の韓国映画

アカデミー賞作品賞を含む4部門を獲得!
鬼才ポン・ジュノによる衝撃作『パラサイト 半地下の家族』

2022/05/02 公開

格差がある二つの家族の「強烈な対比」

アカデミー賞で濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(2021年)が国際長編映画賞を受賞したというニュースを聞きながら、2年前のことを思い出した。新型コロナウイルス感染症がまだどこか他人事のように感じられていた2020年2月20日(現地時間)に行われたアカデミー賞授賞式では、『パラサイト 半地下の家族』が国際長編映画賞、脚本賞、監督賞、そして、作品賞に選ばれた。このニュースは日本でも大きく報道され(ポン・ジュノ監督のものまねをする人まで現れた!)、前月から公開されていた映画も大ヒットした。このコラムを読んでいる方の中にも「すでに見ている」という人も多いことだろう。また、テーマや背景などについても様々な角度から論じ尽くされた感もあるが、やはり、「韓国映画誕生100周年」を記念する年に誕生したこの重要な作品を取り上げないわけにはいかない。ポン・ジュノ監督の過去作とも重ね合わせながら、見ていくことにしよう。

全員が失業中のキム一家は、電波もあまり届かない半地下が住み家

事業に失敗し、転職を繰り返してきたギテク(ソン・ガンホ)と、彼の妻チュンスク(チャン・ヘジン)、大学入学のための能力試験に落ち続けている長男ギウ(チェ・ウシク)、美術の才能がありながらも進学できない長女ギジョン(パク・ソダム)。経済的に困窮し、窓の外には街を歩く人の足しか見えない半地下の部屋で内職をしながら暮らしていた一家だったが、ある日、ギウが友人の紹介で会社社長であるドンイク(イ・ソンギュン)の娘の家庭教師を始めたことから、その生活が一変する。

「寄生」の始まりは、長男ギウがIT企業社長の娘の家庭教師になったことだった

若手プロデューサーたちの台頭と、彼ら彼女らに見出された才能ある新人監督たちの活躍が続いた90年代後半には、これまで本コラムで紹介してきた、イム・サンス、キム・ジウンに加え、ホン・サンス、イ・チャンドン、ホ・ジノといった監督たちが次々と登場した。『パラサイト』を手掛けたポン・ジュノは、この時期、先輩たちの作品に共同脚本の立場で参加するなどしながら過ごし、ようやく2000年に、団地を舞台にした才気あふれるコメディ『ほえる犬は噛まない』でデビューを果たした。以後、『殺人の追憶』(2003年)、『グエムル-漢江の怪物-』(2006年)、『母なる証明』(2009年)、『スノーピアサー』(2013年)、『オクジャ/Okja』(2017年)、そして、『パラサイト』と、7本の長編映画を発表している。

高台にあるモダンな豪邸で、二つの家族の思惑が入り乱れる

ポン・ジュノはデビュー作から一貫して「エリート、あるいは知識人グループに属すことのできない『はみだしもの』たち」への関心と愛情を持ち続け、頑なに彼ら彼女らの視点から物語を描こうとしてきた監督だが、『パラサイト』では初めて「金持ち」であるキム社長の一家を主要キャラクターとして登場させた。今作のプロモーションで来日したポン・ジュノ監督にこのことについて尋ねたところ、「金持ちたちの世界自体を描くというよりも、(二つの家族の)強烈な対比を求めたわけです」との答えが返ってきた。『パラサイト』は、その全貌が明らかになるまで「二つの家族が出会ったことによって起こる悲喜劇」というキャッチフレーズのみが知られていたが、この一文に監督が描こうとしたもののエッセンスが凝縮されているということだろう。ちなみに、作品の構想が始まった当初は、二つの家族についてのストーリーを行ったり来たりするような内容で、それがある時点から「貧しい一家と共に、観客とカメラが金持ちの家に侵入していく話にしないといけない」と考えるようになり、半地下の部屋から始まる現在の形になったそうだ。二つの家族が出会って以降のストーリー展開については、監督直々の「ネタバレ注意!」コメントが出ているので、見ていない人は、ぜひ、ご自分の目で確かめていただきたい。

『パラサイト』と『グエムル-漢江の怪物-』の比較で見えてくるもの

「家族」は、ポン・ジュノ監督のほとんどの作品に登場する重要なテーマだが、なかでも『グエムル-漢江の怪物-』は、経済的に恵まれない一家が一致団結して危機を乗り越えようと奮闘すること、そして、ポン・ジュノ監督の盟友である俳優ソン・ガンホが父親役を演じている点で、『パラサイト』とも重なるところが多い作品だ。

家族を守るため奔走するダメ親父をソン・ガンホが演じた『グエムル-漢江の怪物-』

ソウルの中心を東西に流れる漢江(ハンガン)の河川敷で父ヒボン(ピョン・ヒボン)を手伝って売店を営むカンドゥ(ソン・ガンホ)。どこか抜けたところがある男だが、一人娘のヒョンソ(コ・アソン)を深く愛する父親でもある。ある日、多くの市民が集まっていた昼下がりの川辺に奇怪な姿の「怪物」が現れ、恐ろしいスピードで疾走しながら人々を飲み込み、騒ぎを聞きつけて現れたヒョンソを尻尾で捕らえると姿を消してしまう。その後、カンドゥは、怪物が人々を死に至らしめるウイルスの宿主だと判断した政府の命令に従って家族たちと共に病院に隔離され、そこで死んだと思っていたヒョンソからの電話を受ける。

序盤から姿を見せる巨大怪物のインパクトも強烈(『グエムル-漢江の怪物-』)

韓国での公開当時、1300万人という記録的な数の観客を集め、日本でも鳴り物入りで公開された『グエムル』。『パラサイト』と合わせて見返してみると、前述した点以外にも、いくつかの共通点があることがわかる。例えば『パラサイト』の冒頭近くで、消毒薬が町内に撒かれ、一家が粉だらけになるシーンは、『グエムル』でウイルスに感染したと考えたカンドゥが消毒薬を浴びる姿と重なる。また、『グエムル』ではペ・ドゥナ扮するガンドゥの妹ナムジュがアーチェリー選手、『パラサイト』では母チュンスクがハンマー投げの元選手という設定で、その能力がのちに発揮される。

一方、13年という時間を挟んで作られた両作には、韓国社会の変化を感じさせるような違いもある。『グエムル』の家族が、小さいながらも自分たちの店を営んでいたのに対し、『パラサイト』の一家は生計を立てる手段を持たず、結局、キム社長の家に「寄生する」ことで生きていこうとする。そして何よりも、『グエムル』で「怪物」や「アメリカ」といった姿で社会の外にあるものとして描かれていた「敵」が、『パラサイト』では社会の内部にある「格差」として、主人公たちの前に立ちはだかる。もちろん、同じ監督が手掛けたといっても、まったくジャンルの違う作品同士をこのように比較するのは、少し乱暴なことかもしれない。しかし、「どちらの家族の方がより困難な状況に置かれているだろうか?」と、考えずにはいられない。

文=佐藤結

佐藤結●映画ライター。韓国映画やドキュメンタリーを中心に執筆。「キネマ旬報」「韓流ぴあ」「月刊TVnavi」などの雑誌や劇場用パンフレットに寄稿している。共著に「『テレビは見ない』というけれど エンタメコンテンツをフェミニムズ・ジェンダーから読む」(青弓社)がある。

<放送情報>
パラサイト 半地下の家族
放送日時:2022年5月20日(金)13:30~、25日(水)21:00~

グエムル-漢江の怪物-
放送日時:2022年5月12日(木)18:45~、16日(月)4:00~

殺人の追憶
放送日:2022年5月4日(水・祝)5:30~、13日(金)18:30~

(吹)殺人の追憶
放送日:2022年5月30日(月)1:30~

スノーピアサー
放送日:2022年5月9日(月)3:45~、11日(水)9:00~

(吹)スノーピアサー
放送日:2022年5月27日(金)18:45~

チャンネル:ムービープラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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