演じる側も観る側も、歌って踊ってノリノリに!これぞ「カタログ・ミュージカル」の王道2部作

演じる側も観る側も、歌って踊ってノリノリに!これぞ「カタログ・ミュージカル」の王道2部作

ドナと親友トリオ「ダイナモズ」がとことんパワフル!(『マンマ・ミーア!』)

  • 今月の5つ星

演じる側も観る側も、歌って踊ってノリノリに!
これぞ「カタログ・ミュージカル」の王道2部作

2021/06/28 公開

ほかのミュージカル映画との成り立ちの違いが生んだ「独自性」

ABBAの大ヒット曲に乗せて歌い踊るミュージカル「マンマ・ミーア!」は、英国ウェストエンドで初演の幕を開け、その後ブロードウェイ進出でスケールアップ。劇団四季の舞台ミュージカルで日本でもなじみ深く、それぞれを見てきた私には、メリル・ストリープの主演で映画化されるというニュースを聞いてワクワクしながら待ちかねた。

実際、映画もABBAの音楽でほぼ全編が埋め尽くされ、そのことを映画的に揶揄する声も挙がったが、そもそもこの作品は「音楽をノリノリで楽しむための映画」。さらに言えば、通常のミュージカルは物語に沿いオリジナル楽曲が作られるわけだが、『マンマ・ミーア!』(2008年)は、「ダンシング・クイーン」、「チキチータ」、「テイク・ア・チャンス」など、すでに大ヒットしていたABBAのナンバーのみを基に新たにストーリーが構成されている。この形式は「カタログ・ミュージカル」(または「ジュークボックス・ミュージカル」)と呼ばれ、『マンマ・ミーア!』は、まさにその代表格。一緒に歌い、踊り出すくらいの気持ちで楽しめれば、それで良し。そのことを観ていて実感させられた。

もちろんストーリーも、このミュージカルの愛される要素。舞台はエーゲ海の美しい小島。父親を知らずに育ったソフィは、母親のドナが日記に記していた建築家のサム、実業家のハリー、作家のビルの「3人の父親候補」を自分の結婚式へこっそり招待する。これを知ったドナは大慌て。奔放で多感、キラキラ輝くような少女だった若き日のドナは、3人それぞれと関係を深め、誰が娘の父親かわからない。やがてソフィとドナ、そして3人は、ドナの親友ロージー&ターニャも巻き込み、結婚式へ向けてそれぞれの思いが交錯する。

ベッドの上でハジけるストリープの姿はとても新鮮で愛らしい(『マンマ・ミーア!』)

エネルギッシュな魅力を創出した「女性たちの力」

「鉄の女」と呼ばれた宰相や「悪魔」呼ばわりされた編集長など、タフでコワモテの女性役の印象が強いメリル・ストリープが、この作品では陽気な母親ドナを演じ、ロージー役のジェリー・ウォルターズ、ターニャ役のクリスティーン・バランスキーと共に肉食系オバサマトリオとして「ダンシング・クイーン」を喜々と熱唱する。これぞ大人の女性の魅力と言わんばかりの光景に、このミュージカルが全世界で大ヒットした理由がよくわかる。楽曲に包まれるだけでハッピーになれるのだ!

すべてのキャストが吹き替えなしで歌って華やかに気分を盛り上げる。ソフィ役のアマンダ・セイフライドは若々しく「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」を歌い上げ、男たちと再会したドナがドギマギした思いを込めて歌う「マンマ・ミーア!」では気付けば島中の人々が歌唱に参加して…などなど、ABBAの全18曲がバリエーション豊かに流れる。舞台版からのファンの期待を裏切らない演出が、エーゲ海の島の美しい映像にいきいきとまとめあげられている。

ドナの愛娘であるソフィの自分探しの物語としての側面も(『マンマ・ミーア!』)

これは『マンマ・ミーア!』の舞台演出から映画監督へ進出した英国の女性フィリダ・ロイドの確かな演出力によるものだろう。脚本のキャサリン・ジョンソンも女性、そして主演は日頃からミュージカル大好きと言っているストリープ、と「女性の力」で映画化された本作。彼女たちのエネルギーが伝わり、誰もが観ているうちに元気になってしまうはず。

10年越しでキャストが再結集した『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』

10年越しの続編は、映画の大ヒットが生んだオリジナル

映画『マンマ・ミーア!』の成功から10年後。主だった出演者全員が再集合した映画オリジナルの続編『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』(2018年)が誕生した。今回はソフィを中心に、ドナが島で切り盛りしてきたホテルのグランドオープンを巡る後日談と、若い日のドナと3人の父親候補の出会いを描いた前日談と、現在と過去を交錯させながら物語が紡がれる。

大学を卒業し、島を訪れた若い日のドナがステージで「マンマ・ミーア!」を歌い仕事を掴んだり、ホテルのグランドオープンのパーティに駆け付けた人々が船上から「ダンシング・クイーン」を大合唱したりと、前作でも用いられたABBAの楽曲が新たな演出でたっぷり楽しめるのも心憎い。監督は『マリー・ゴールドホテルで会いましょう』(2011年)の脚本家オル・パーカー(彼は男性)に引き継がれたが、前作を見返したくなるような構成で、「母と娘の物語」としての『マンマ・ミーア!』の魅力をさらに引き出している。

『~ヒア・ウィー・ゴー』で若き日のドナを演じたのはリリー・ジェームズ(中央)

2作ともエーゲ海の小島で撮影され景色の美しさは言わずもがな。ストリープ、セイフライドのほか、舞台が本職のオバサマたちも熱唱する大ヒットナンバーの数々。そんななか、一人だけ歌は多少難あり、の元ボンド俳優が混ざっているのもご愛嬌。わざと外している?とお思いでしょうが、この音痴はアカデミー賞の反対側にあるラジー賞に選ばれたお墨付きの本物。こんなところもお楽しみよね!と思える、力強い2作である。

文=渡辺祥子

渡辺祥子●1941年生まれ。好きな映画のジャンルはサスペンス&ミステリー。今の夢は『007/ノータイム・トゥ・ダイ』を大スクリーンで見ること。日本経済新聞、週刊朝日、VOGUEなどで映画評を執筆。「NHKジャーナル」(NHKラジオ第1)に月1回出演。

<放送情報>
マンマ・ミーア!
放送日時:2021年7月3日(土)19:00~、8日(木)21:00~

マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー
放送日時:2021年7月3日(土)21:00~、9日(金)21:00~

チャンネル:ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります