原作コミックのハイテンションをそのままに!三池崇史×宮藤官九郎×生田斗真が描き出す『土竜の唄』

原作コミックのハイテンションをそのままに!三池崇史×宮藤官九郎×生田斗真が描き出す『土竜の唄』

主人公・菊川玲二が潜入した先で抗争に巻き込まれていく第1作『土竜の唄 潜入捜査官 REIJI』

  • コミックが生みだすヒットムービー

原作コミックのハイテンションをそのままに!
三池崇史×宮藤官九郎×生田斗真が描き出す『土竜の唄』

2021/10/25 公開

最強の布陣で描かれる、カオスな「潜入捜査官=モグラ」の奮闘

このところ、絶え間なく封切られているコミック原作の実写映画。コミックと映画のメディアミックスによってヒット作を生み出すという流れは、映画業界における一つの型となっている。すでに固定ファンがいる人気コミックの映画化は手堅いマーケットであり、映画化されたのを機に新たなファンがつくことも多く、双方に大きなメリットがあると言える。今や切っても切れない関係性にあるコミック×映画の作品群から、おすすめのヒット作を紹介していきたい。

この秋、三部作の完結編が公開される「土竜の唄」は、高橋のぼるのシリーズ累計発行部数950万部突破の大人気コミックを、監督・三池崇史×脚本・宮藤官九郎×主演・生田斗真で実写映画化した予測不能なお祭りエンタメムービー。前2作『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』(2014年)と『土竜の唄 香港狂騒曲』(2016年)は、ともに大ヒットを記録した。

原作コミックは、2005年に「週刊ヤングサンデー」にて連載を開始し、現在も「ビッグコミックスピリッツ」で連載中。既刊72巻の長大なシリーズとして、根強い人気を誇っている。主人公は交番勤めの若手巡査・菊川玲二。始末書枚数ワーストワンの問題児だった彼は、ある日、極秘で潜入捜査官(通称:モグラ)に任命され、日本最凶の暴力団・数寄矢会に潜って、会長・轟周宝を挙げることを命じられる。

パワフルな先輩たちが、玲二の潜入捜査の任務をサポートする(『土竜の唄 潜入捜査官 REIJI』)

ヤクザ組織のトップを逮捕する!という、主人公が目指すゴールが最初に決まっている「逆算型バトルマンガ」の王道ストーリー展開もさることながら、なんといっても読者を惹きつけるのは、主人公・菊川玲二のチャーミングなキャラクター像。バカでスケベだけど、正義感の強さは人一倍。本当は怖がりなのに、どこか肝が据わっていて、数々のピンチをハッタリと機転で切り抜けていく玲二の熱い生き方は痛快だ。そんな玲二を取り巻く登場人物たちも、一風変わった濃ゆいメンツぞろい。極道側も警察側も、敵味方にかかわらず、みんな妙に人間臭くて憎めないところがあるのがおもしろい。

そんな個性派キャラがスクリーン狭しと大暴れする劇場版1作目『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』は、一介の巡査だった玲二が、警察と厚生労働省の麻薬取締部による潜入捜査官の適性試験で太鼓判を押され、轟周宝(岩城滉一)率いる数寄矢会直属の組、阿湖義組に潜入。若頭の日浦匡也(堤真一)との出会いを経て、組とロシアンマフィアとの錠剤型合成麻薬の売買阻止に挑む。

続く『土竜の唄 香港狂騒曲』は、原作コミックの「チャイニーズマフィア編」を映画化。旧・阿湖義組の日浦匡也が立ち上げた日浦組の若頭に出世し、さらに数寄矢会の轟周宝のボディガードに任命された玲二が、人身売買を行うチャイニーズマフィア・仙骨竜に立ち向かう。

第2作『土竜の唄 香港狂騒曲』で登場する、蹴り技と電撃ムチを武器とする胡蜂(菜々緒)

ワケの分からないパワーと熱がグルグル渦巻きながら、すさまじい勢いで進んでいく物語は、徹頭徹尾、ハイテンション。麻薬や人身売買といったシリアスな背景、緊迫感あふれるハードなバイオレンス場面に、バカバカしいギャグとコテコテの下ネタが大量に投入されるカオスな世界を、原作コミックのエッセンスを損なうことなく実写映画化できる人物は誰なのか? その答えが、三池崇史監督と脚本の宮藤官九郎、そしてクドカン作品のコメディ演技で輝く役者・生田斗真という、これ以上はない最強の布陣だった。

ヤクザものを得意とする三池監督ならではの迫力あるバイオレンス&バトルシーン、ギラギラしたド派手な世界観は、まさに原作コミックのテイストにぴったり。イラストやアニメーション、CGとミックスしたポップな映像で、怖くて痛いグロテスクなシーンでも笑わせるなど、三池節が炸裂している。

そして、シリアスと熱血とコメディの絶妙な配分に定評がある宮藤官九郎は、本シリーズでもその手腕を遺憾なく発揮。「人は殺さない」という玲二のポリシーのとおり、バイオレンスシーンの激しさに対し、人が死なないところは観ていて安心できる。「鳥肌が立つほどカッコよく生きてみたいんだ」、「どんな人間だって、お天道様の下で、希望を持って生きることができる」など、クドカン作品に通じるまっすぐで熱い名台詞も満載だ。

ほぼ裸で車のボンネットに拘束されるシーンなど、衝撃的なシーンを全力で演じた生田(『土竜の唄 香港狂騒曲』)

個性豊かなキャラクターたちを体当たりで表現するキャスト陣

そんな三池×クドカンワールドのド真ん中に身を置き、完全に振り切ったガチンコ演技で玲二を体現しているのが生田。冒頭シーンでは決まって、とんでもない状況に置かれ、かろうじて局部だけが隠れた裸姿で登場。全編を通して彼の顔芸で見せる、玲二の尋常ではない表情の変化もマンガそのものだ。その一方、「この世に正義は存在する」と信じる玲二のひたむきでピュアな魅力もたっぷり。玲二が決して下品なキャラにならず、観る者の共感を呼ぶ若きヒーローとして成立しているのは、生田の個性によるところが大きい。

数寄矢会日浦組の組長のヤクザだが、義理人情に篤い男である日浦匡也(右)(『土竜の唄 潜入捜査官 REIJI』)

そんな玲二の童貞喪失の相手である最愛の恋人・純奈(仲里依紗)や、玲二が狙う数寄矢会の轟周宝など、重要キャラクターを挙げていくとキリがないが、あえて一人選ぶとしたら、やはり堤真一が演じるクレイジーパピヨンこと日浦匡也だろう。いつも蝶柄の服を着て、背中にも蝶の刺青を入れている蝶オタクの日浦は、麻薬嫌いで義侠心あふれる漢。原作コミックでもファンが多く、2013年から日浦を主人公にしたスピンオフ『土竜の唄外伝 狂蝶の舞~パピヨンダンス~』が連載されたほどの人気キャラクターだ。「おもしろいこと」が大好きで、そのおもしろさゆえに玲二と義兄弟の契りを交わしてからは、玲二にとって最も心強い味方となる。

飄々としているのに、極道の中でも圧倒的に強く、いざという時には命懸けで玲二を守ってくれる日浦。その日浦に警察という自らの正体を隠しながら、彼の男気にどんどん惹かれていく玲二。魂の兄弟となったコンビの関係性も本シリーズの大きな見どころだ。

ちなみに玲二を潜入捜査官の道に引き込んだ警察署署長の酒見(吹越満)、潜入捜査官養成係の赤桐(遠藤憲一)、麻薬取締官の福澄(皆川猿時)の3人が、玲二を応援する時に、作品タイトルにちなんだ「土竜の唄」を1曲丸々(1作目は1番、2作目は2番の歌詞で)大熱唱する演出もクドカンらしい映画のオリジナル。警察学校創立以来、最低の成績で卒業したというおバカな玲二が、いろんな漢字が読めなくて怒られるというお約束のギャグもおかしい。

コミック原作らしく、何もかもが大仰でぶっ飛んだキャラクターたちが繰り広げるハチャメチャな『土竜の唄』は、ちょっと疲れている時に観ても、思わず声に出して笑ってしまう楽しさ。アドレナリンが出て元気になれる。コロナ禍が続き、閉塞感が高まっている今こそ観たい、カンフル剤ムービーなのである。

文=石塚圭子

石塚圭子●映画ライター。学生時代からライターの仕事を始め、様々な世代の女性誌を中心に執筆。現在は「MOVIE WALKER PRESS」、「シネマトゥデイ」、「FRaU」など、WEBや雑誌でコラム、インタビュー記事を担当。劇場パンフレットの執筆や、新作映画のオフィシャルライターなども務める。映画、本、マンガは日々を元気に生きるためのエネルギー源。

<放送情報>
土竜の唄 潜入捜査官 REIJI
放送日時:2021年11月7日(日)19:30~、14日(日)21:00~

土竜の唄 香港狂騒曲
放送日時:2021年11月14日(日)23:15~、19日(金)1:15~

チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります