音楽コミックの金字塔「のだめカンタービレ」 原作を忠実に再現しつつ実写ならではの表現が響く

音楽コミックの金字塔「のだめカンタービレ」 原作を忠実に再現しつつ実写ならではの表現が響く

それぞれ優れた音楽の才能を持ちながら活かしきれずにいた男女が出会い成長していく(『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』)

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音楽コミックの金字塔「のだめカンタービレ」
原作を忠実に再現しつつ実写ならではの表現が響く

2022/1/5 公開

日本中に「クラシックブーム」を巻き起こした「のだめ」

クラシックをテーマにした青春音楽コメディ「のだめカンタービレ」。原作コミック、ドラマ、映画、アニメ、そのすべてが大ヒットし、深く愛され、ファン層がどんどん拡大していった幸せな作品だ。映像化成功の最大の理由は、原作を心から大切に思う制作者たちが、とにかくできる限り原作に忠実に物語を描ききったことにある。

二ノ宮知子による原作は、2001年から2010年まで「Kiss」で連載された少女マンガ。単行本は本編23巻+番外編2巻で完結した。2004年には第28回講談社漫画賞少女部門を受賞するなど、作品的にも高く評価され、現在の累計発行部数は3700万部を突破。連載終了から10年以上が経ったいまもなお、高い人気を誇る不朽の名作だ。

容姿端麗かつ頭脳明晰、家事までこなす俺様キャラな千秋真一は、日本中の女性の心を鷲掴みに(『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』)

子どもの頃の体験がトラウマで飛行機恐怖症になったため、海外留学ができない不遇のエリート音大生・千秋真一と、天才的なピアノの才能がありながら、楽譜を読むことを大の苦手とする天真爛漫な不思議少女・野田恵(通称:のだめ)。同じマンションの隣室に住む2人を中心に、個性豊かな音大生たちや、彼らの指導者となる先生、音楽家たちが繰り広げるカラフルな日常ドラマは、クラシックの堅苦しいイメージを軽やかに覆し、クラシック音楽ファンはもちろん、それまでクラシックなんてちっとも興味がなかった読者をも魅了。世の中に一大クラシック・ブームを巻き起こした。

2006年10月からフジテレビの月9で放送されたドラマ版(全11回)は、平均視聴率18.9%、最終回は21.7%という高視聴率を記録し、2008年1月には2夜連続で続編のスペシャルドラマ「のだめカンタービレ 新春スペシャル in ヨーロッパ」を放送。そして、2009年12月と2010年4月には、スペシャルドラマの続編という形で劇場版『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』と『~後編』が公開された。劇場版の監督は、ドラマ版の演出に引き続き、前編を『翔んで埼玉』(2019年)の武内英樹、後編を『海月姫』(2014年)の川村泰祐が務め、ともにこれが映画監督デビュー作となった。連続ドラマ+スペシャルドラマ+映画2部作が、ちょうど1巻から23巻までの本編にあたる。(ちなみに「アンコール オペラ編」と名付けられた番外編の2巻では、さらに最高のハッピーエンドが描かれている。こちらも実写版が観たかった…!)

のだめに扮した上野樹里、千秋を演じた玉木宏はともに超がつくほどのハマり役であった(『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』)

実写版の上野樹里と玉木宏というキャスティングが、のだめ&千秋のイメージにぴったりだったことも原作ファンを大いに喜ばせた。ドラマ開始当時は20歳で、のだめと同世代だった上野樹里の可憐でハツラツとした魅力。20代半ばだった玉木宏のまぶしい白シャツ姿からこぼれる清潔感ある色気。二ノ宮知子の描く絵は、いわゆるキラキラした華麗な少女マンガとは違う、あっさり、さっぱりしたスタイルが特徴なので、むしろ実写版の2人のほうが、ビジュアル的にはずっと華やかで少女マンガ的だったといえるかもしれない。

掃除が嫌いで、ハエが飛び交うゴミだめのような部屋に住み、身体から悪臭を発していても全然気にしない女のコと、自分では「オレ様」と言いながら、家事が得意で、彼女のために掃除、料理、洗濯までやってあげてしまう面倒見のよい青年、という組み合わせも、当時にしてはかなり新しかったのではないだろうか。舌足らずな口調でのんびりと話す、どこかオフビートなヒロイン・のだめ役があまりにハマっていた上野は、天然キャラのイメージがさらに強まり、「なんでオレがこんなこと…」とぼやきつつ、のだめに毎日料理を作るエプロン姿の玉木は、理想の男子として世の女性たちの憧れの対象となった。

風変わりなドイツ人指揮者を演じた竹中直人の存在感が爆発!(「のだめカンタービレ in ヨーロッパ Special Lesson2」)

千秋が指揮者志望という設定上、オーケストラがいくつも登場するため、シリーズを通して登場人物の数は多い。ロック志向のヴァイオリン奏者・峰龍太郎役に瑛太(現・永山瑛太)、千秋を熱烈に慕う乙女な打楽器奏者・真澄役に小出恵介、コントラバス奏者・桜役にサエコ、実力派ヴァイオリン奏者・清良役に水川あさみ、オーボエ奏者・黒木役に福士誠治、チェロ奏者・菊地役に向井理といった多彩なキャスト陣によるアンサンブル演技も見どころ。また、千秋とのだめの運命を大きく変える世界的なドイツ人指揮者フランツ・シュトレーゼマン役を、竹中直人がカツラやメイクを駆使して怪演し、強烈なインパクトを残している。

ストーリーのみならず、登場人物たちのセリフ、千秋のモノローグ、ちょっとしたギャグのやりとり、公演会のポスターのデザインなど小道具にいたるまで、原作コミックにとことん忠実な本作。ギャグマンガ的な要素を再現するため、キレた千秋がのだめのことを遠慮なく投げ飛ばすシーンには、投げ飛ばし専用の人形を使用している。他にも、ときめきを表すハートマークや、演奏中にきらめく音の粒などもアニメで表現。のだめが大好きな架空のアニメ作品「プリごろ太」にいたっては、劇中劇として、実際にアニメが制作された。

クラシックの名曲が次々と流れ、のだめたちのドタバタな日常を彩る(「のだめカンタービレ(全11話)」)

そして、やはり実写版ならではの一番の魅力といえば、原作コミックを読んでいる時は脳内でイメージするしかなかった音楽を、リアルに聴くことができるという点である。ベートーヴェンの「交響曲第7番イ長調」、ジョージ・ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」、モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ ニ長調」などをはじめ、数えきれないほどのクラシックの名曲が、千秋のモノローグによる解説付きで、鳥肌が立つほど臨場感たっぷりに演奏されていく。

通常の音楽映画なら、クライマックスシーンになるような素晴らしいクラシックの演奏場面が、ドラマの1話ごとに入っているという贅沢さもすごい。公募で結成された「のだめオーケストラ」は、サントラを演奏し、劇中にもエキストラ出演。また、劇場版ののだめのピアノ演奏は、ヨーロッパ留学で成長した彼女の音楽を表現するために、すべて世界的な中国人ピアニスト、ラン・ランが担当。底抜けに自由奔放かつ繊細な彼の演奏スタイルは、まさにのだめそのもので、劇場版の音楽を一段と輝かせた。

オーケストラの演奏を客席で聴いているのだめや、ステージ上で指揮をしている千秋が、こみ上げる感動で思わず涙を流すシーンが随所に見られるのも、原作とはまたひと味違う、実写版ならではのポイント。ただの演技とは思えない2人のナイーヴさ、優しさがよく表れていて、のだめと千秋のキャラクター像にさらなる温もりをプラスしている。

原作へのリスペクトを欠かすことなく、実写だからこそのオリジナリティで独自の世界観を展開する(『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』)

のだめと千秋の出会い、音大でのSオケとR☆Sオケ結成、ヨーロッパで新展開を迎える恋、音楽への苦悩、そして新たな再出発…のだめと千秋のハーモニーが海を越え、豊かに広がっていく成長物語は、さながら壮大な交響曲のよう。映画のラストシーンの後は、必ずドラマの第1話を見返したくなり、見れば前回以上の感動が味わえる。「のだめワールド」の魔法はクラシック音楽と同じ。時が経っても、ずっと色褪せない。

文=石塚圭子

石塚圭子●映画ライター。学生時代からライターの仕事を始め、さまざまな世代の女性誌を中心に執筆。現在は「MOVIE WALKER PRESS」、「シネマトゥデイ」、「FRaU」など、WEBや雑誌でコラム、インタビュー記事を担当。劇場パンフレットの執筆や、新作映画のオフィシャルライターなども務める。映画、本、マンガは日々を元気に生きるためのエネルギー源。

<放送情報>
TVドラマ『のだめカンタービレ』#1-5
放送日時:2022年1月22日(土)11:30~

TVドラマ『のだめカンタービレ』#6-11
放送日時:2022年1月22日(土)16:00~

SPドラマ『のだめカンタービレ in ヨーロッパ Special Lesson1』
放送日時:2022年1月29日(土)12:30~

SPドラマ『のだめカンタービレ in ヨーロッパ Special Lesson2』
放送日時:2022年1月29日(土)14:35~

映画『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』
放送日時:2022年1月29日(土)16:45~

映画『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』
放送日時:2022年1月29日(土)18:55~

チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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