あるマフィア一族の栄光と郷愁を描く『ゴッドファーザー』若きフランシス・フォード・コッポラが創り出す赴きの深さが心に染み渡る

あるマフィア一族の栄光と郷愁を描く『ゴッドファーザー』若きフランシス・フォード・コッポラが創り出す赴きの深さが心に染み渡る

フランシス・フォード・コッポラ監督による映画史における不朽の名作『ゴッドファーザー』

  • 監督が語る巨匠の仕事

あるマフィア一族の栄光と郷愁を描く『ゴッドファーザー』
若きフランシス・フォード・コッポラが創り出す赴きの深さが心に染み渡る

2022/01/31 公開

「人生の最期に、1本だけ映画を観られるとしたら、何を観たい?」

時々そんなことを考えたりする。私の答えは、いろいろ迷って巡りめぐった末に、ある映画にたどり着くだろう。

それが、『ゴッドファーザー』(1972年)だ。

イタリアからアメリカへ渡り、巨万の富を築いたマフィア、コルレオーネ一族の物語を重厚なタッチで描く(『ゴッドファーザー』)

あるマフィア一族の物語を通して、アメリカの近代史をひも解く

この映画のタイトルを聞いたことがない人はほぼいないはずだ。有名すぎるほど有名な映画で、歴史に残る1作になっている。米国ニューヨークのイタリア系マフィア一族を描いた作品で、この映画の影響力のすごさによって、一般人から見たマフィアのイメージは一新された。また、これ以降に作られたマフィア映画、やくざ映画、裏社会映画で、『ゴッドファーザー』の影響を受けていないものは1本もないだろう。それは日本でも一緒だ。

シリーズはPART IIIまで作られたが、特に記念碑的な第1作『ゴッドファーザー』と続編『ゴッドファーザーPART II』(1974年)は甲乙つけがたいほど人気で、「私は『I』が好き」「いや俺は『II』が良い」なんて意見が分かれるのも想像がつく。かくいう私もその時の心情や気分で、『I』派になったり、『II』派になったりする。

一族を束ねるゴッドファーザー、ドン・コルレオーネを演じるマーロン・ブランド(『ゴッドファーザー』)

シリーズ3作の監督はすべて、フランシス・フォード・コッポラ。『ゴッドファーザー』を監督した時は、なんとまだ30代前半。ハリウッドとしても大抜擢だったはずだが、それに輪をかけてコッポラ自身の円熟しきった演出がすごい。

本作は、老いてなお権勢を誇るマフィアのドン(=ドン・コルレオーネ)と、その家族たちを描いていくが、なぜ30代の新人監督にこれほど人生の機微がわかるのだ、と驚いてしまう。裏切りと忠誠、家族と離反、カネと権力。これらのどれか一つを取っても、今の30代の映画監督でここまで描ける人がいるとは思えない。私も到底無理。

それだけじゃない。『ゴッドファーザー』はマフィア映画やヤクザ映画によく見られるような内輪揉めだけを描いているわけではなく、いわば一つの社会を丸ごと活写するような懐の広さがある。さらに、アメリカ移民史までその射程距離は伸びる。

特に『ゴッドファーザーPART II』で、移民史・アメリカ史への深度はさらに深まる。構成がまた見事で、前作で死んだドン・コルレオーネの誕生譚を描きつつ、同時並行で彼の息子でマフィアのボスを引き継いだマイケル・コルレオーネの権力拡大を追っていく。過去の父と現在の息子を同時進行で見せていくトリッキーな構成だが、それが見事にハマり、ゆえにこの続編をシリーズものの中でもひときわ輝かせている。

父からボスの座を引き継いだマイケルの苦悩を描く『ゴッドファーザーPART II』

シリーズ3作を通して観ることで深みが増していく完結編『ゴッドファーザーPART III』

俳優たちもすごい。『I』では、名優マーロン・ブランドが老ドン・コルレオーネの死に至るまでを演じた。『II』では、これまた名優(でも当時はまだ無名だった)ロバート・デ・ニーロが若き日のドンを演じている。そしてシリーズ3作を通して、アル・パチーノが息子のマイケルの生き様を体現してきた。他の俳優たちも含めて、皆このシリーズで評価を一躍高めて、アメリカ映画史を彩る名優になっている。余談だが、その陰には、俳優たちのメイク(特に、老けメイク)を見事に造形したメイクアップアーティスト、ディック・スミスの大いなる力もあるだろう。

『ゴッドファーザーPART II』において、若き日のドン・コルレオーネを演じるロバート・デ・ニーロ

もっともシリーズ中で評価が分かれるのが、3作目『ゴッドファーザーPART III』(1990年)だ(2020年にはコッポラ監督自らが再編集した『ゴッドファーザー<最終章>:マイケル・コルレオーネの最期』も製作)。前作からかなり時間が経って製作されていて、「三」匹目のドジョウを狙いにいった感もなくはない。舞台は現代ですでにアメリカ近現代史のような趣もなく、私たちの社会と地続きの世界だ。だから郷愁や荘厳さのようなものは乏しい。

マフィアのボスとして絶大な権力を握ったマイケルの晩年を描く『ゴッドファーザー<最終章>:マイケル・コルレオーネの最期』

しかし、『III』まで観ると、「あのマイケルが遂にここまで…」と胸が熱くなる。特に、サーガの幕を閉じる『III』のラストカットを目撃すると、シリーズ3作を追ってきた身としては、人生の喜びとはいったい何なのか、と無常感や寂寥感が胸に迫ってくる。シリーズものだからこその深い感動だろう。

「ここに人生のすべてが詰まっている」

そう呟かざるをえないのだ。

さあ、あなたは、人生の最期にもう一度、「ゴッドファーザー」シリーズの中から1本を観るとしたら、いったいどれを選ぶでしょうか。

文=入江悠

入江悠●1979年生まれ。映画監督。監督作に「SRサイタマノラッパー」シリーズ、『日々ロック』(2014年)、『ジョーカー・ゲーム』(2015年)、『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年)、『AI崩壊』(2020年)、『聖地X』(2021年)など。

<放送情報>
ゴッドファーザー[デジタル・リストア版]
放送日時:2022年2月4日(土)21:00~、2月12日(土)14:00~

ゴッドファーザーPART II[デジタル・リストア版]
放送日時:2022年2月11日(金・祝)21:00~、12日(土)17:15~

ゴッドファーザー<最終章>:マイケル・コルレオーネの最期
放送日時:2022年2月12日(土)20:56~、13日(日)13:45~

チャンネル:ムービープラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります