実は最も古参のベテランヒーロー?戦う女神『ワンダーウーマン』の活躍に迫る

実は最も古参のベテランヒーロー?戦う女神『ワンダーウーマン』の活躍に迫る

ガル・ガドット演じるスーパーヒーロー、ワンダーウーマンの戦いをプレイバック(『ワンダーウーマン』)

  • ヒーロー大図鑑

実は最も古参のベテランヒーロー?
戦う女神『ワンダーウーマン』の活躍に迫る

2021/08/23 公開

古今東西のアクション・ヒーローにスポットライトを当てる当連載…だが、つい油断するとおじさんだらけになってしまう。これはちょっといかがなものか。そろそろ強い女性が見たい!ということで今回は、ガル・ガドット主演『ワンダーウーマン』2作を中心に関連作品を取り上げる。

スーパーヒーロー、ワンダーウーマンは1941年にコミックの世界に誕生。長いながい活躍の中でそのオリジン物語は何度か修正されているが、基本的には神に等しい能力を持つ、人間を超えた存在であると覚えておいていただければ間違いはないと思う。女性だけが暮らす島、セミッシラから外界にやってきたワンダーウーマンことダイアナはスーパーマンやバットマンといった並み居るDCスーパーヒーローと肩を並べ、世界最強の一角として長らく人類のために戦ってきたのである。

実在の戦場を駆け抜けるスーパーヒーロー!"もしも”の楽しさに満ちた『ワンダーウーマン』

そんな彼女が(ようやく)実写映画の世界に殴り込みをかけたのは2016年、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でのことだった。演じるはイスラエル出身のガル・ガドット。『ワイルド・スピード』シリーズなどですでに目にはしていたが、最強の女ヒーローを演じるには若干線が細いのではなかろうか…と心配をしたものだ。

ヘンリー・カヴィルのスーパーマンとベン・アフレックのバットマンが諸々の成り行きから正面衝突することとなった同作。もちろん2大ヒーローの激闘が見どころではあった。だが実はそれ以上に、満を持して乱入したワンダーウーマンの姿に、これはとんでもないお土産をもらってしまったと思ったものだ。

ワンダーウーマンの鮮烈な初登場を見せて観客の度肝を抜いた『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』

様々なしがらみで終始渋い(ないし景気の悪い)顔をしている男たちの間に割って入り、ヒーローたちの共通にして最強の敵が現れるや、先陣を切って突っ込んでいく。まずは顔見世といった趣の出演だから、その人物的な背景に関してはさほど描き込まれていないのだが、なんだかとりあえず無闇に強い人が急に出てきてしまった感が心地よかった。

彼女が生き生きと大暴れする様を見せつけられるにつけ、線が細いだなんだと、余計な心配をしたことを思わず心の中で詫びた。ドンガドンガと暴れ太鼓が鳴り響くテーマ(ジャンキーXL作曲)も異常に格好よく、ということで『バットマン vs スーパーマン ~』を観に行ったにもかかわらず、このワンダーウーマンのことで頭がいっぱいになったものであった。

そんな彼女の単独主演作は翌2017年にやって来た。言わずと知れた『ワンダーウーマン』で、監督はシャーリーズ・セロンが実在の連続殺人犯に扮した『モンスター』(2003年)のパティ・ジェンキンスだ。

物語の舞台は今からおよそ100年前、女だけの島から出てきたばかりの駆け出しヒーローが第一次世界大戦の最前線に殴り込みをかける。映画は俗世間を知らないダイアナが西洋文明に触れて無邪気に喜び、あるいは男女格差に憤慨する様子を丁寧に見せる。米軍兵士スティーブ・トレヴァー(世にも感じの良いクリス・パインの儲け役)との心の交流も描かれて非常にグッと来るが、やはり最大の見どころはワンダーウーマンその人が戦場を走り、跳び、敵をちぎっては投げる大アクションであった(例の暴れ太鼓もここぞというタイミングで鳴り響くので、もうすっかり満足した)。

必殺技「ガントレット・クラッシュ」を放つワンダーウーマン(『ワンダーウーマン』)

史実の戦争におけるスーパーヒーロー、という場面は『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』(2009年)や『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年)、あるいは『ウォッチメン』(2009年)でも見ることはできた。戦争という最もシビアな現実に、コミック・ヒーローというある種最もファンタジーに近い存在がどう対峙するのか。『ワンダーウーマン』はこうした描写にたっぷり時間を割いており、もしも戦場の地雷原を駆け抜けるスーパーヒーローが存在していたら…という、偽史だけが持つある種の魅力に満ち溢れている。

喪失を乗り越えて真のスーパーヒーローとして覚醒する『ワンダーウーマン1984』

という誕生篇『ワンダーウーマン』を経て、ダイアナのドラマは第2部『ワンダーウーマン1984』(2020年)でいよいよ全開となる。タイトルが示す通り、物語の舞台は80年代だ。死んだ恋人スティーブのことを今も思いつつ、彼女は人知れずスーパーヒーロー稼業に精を出している。

第一次世界大戦が終わったのが1918年だから、この人は考えてみればもう66年の長きにわたってワンダーウーマンをやっていることになる。おそらく途中でいろいろあったに違いない。引退を考えたこともあれば、自身の行動に疑問を抱いたこともあるだろう。それでも世のため人のために力を使っているのだから思わず頭が下がる。

外の世界にすっかりなじみ、スミソニアン博物館で働くダイアナ(『ワンダーウーマン1984』)

今回の敵役は不動産屋のマックス・ロード(「マンダロリアン」のペドロ・パスカルが演じているが、同作での渋さが信じられない、世にも軽薄で胡散くさい熱演を見せる)。いかなる願いでも叶えるという謎の石を手にして暴走するこの男だけでも厄介なのだが、完璧超人たるダイアナにコンプレックスを抱く女性バーバラ(クリステン・ウィグ)まで戦線に加わってきたことでさらに面倒くさいことになった。しかも死んだはずのスティーブまで蘇ってしまうのだからもう大変である(クリス・パインが前作を超える快男児ぶりを見せる。終始ダイアナを支え、彼女がヒーローとして完全に開花する後押しをする。来世はこのスティーブに生まれ変わりたいと思う)。

『~1984』は2時間半の上映時間にあってヒーローの本格的大暴れを見られるまでに1時間ほど待たなくてはならないとか、あるいは他にも進行上の段取りにいくつか疑問も残るなど、様々な問題もなくはない。が、そうしたことはこの際置いておいてもいいのではないかと思える。それは本作が、特別な力を手にした主人公が喪失を乗り越えて、真のスーパーヒーローとして覚醒するまでを愚直に描いた「正しい第2部」だからだ。

様々な苦悩や葛藤を乗り越え、戦いへと赴くワンダーウーマン(『ワンダーウーマン1984』)

本作以前にDCスーパーヒーローが総登場した超大作『ジャスティス・リーグ』(2017年)でも、ワンダーウーマンはもちろん大活躍を見せる。だがスーパーマンにバットマン、アクアマンにフラッシュといったクセのすごい男たちの中にあってひときわ強く、何よりもっとも人間のできた彼女はチームのまとめ役といったポジションに収まらざるを得ず、そのドラマも若干薄味ではあった(もともと同作を監督するはずだったザック・スナイダーが本来の形に映画をまとめ直した『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』でも、残念ながらその印象は変わらなかった)。

宇宙から侵略してきた強大な敵にDCヒーローたちが結集して立ち向かう『ジャスティス・リーグ』

しかしよくよく考えてみれば、チームの誰よりもワンダーウーマンは長いことスーパーヒーローとしての活躍を続けている。しかもその間には『~1984』で描かれたような苦境も葛藤もあったわけで、早い話が誰よりも早く人間として一皮むけていたと言えるだろう。

しかし『ワンダーウーマン』シリーズ2作が第一次世界大戦期から80年代まで、その間の時代を一気に飛ばしてしまったことで、映画で語られざるエピソードが無数に生まれたことはなかなかに惜しいと言わざるを得ない。例えば第二次世界大戦や朝鮮戦争、ベトナム戦争に、または公民権運動やウーマンリブに、このヒーローがどう向き合ってきたのか。

人間を超えたご長寿ヒーローだからこそ、実際の歴史に沿ったいくつもの秘話が、数え切れないほどの心を打つドラマがあったはずなのだ。今からでも遅くはないので、何となれば年に一度のペースで「ワンダーウーマンの世界史秘話」シリーズをやってはもらえないものだろうか。毎回ド肝を抜くようなアクション満載で。そう思わずにはいられないのであった。

文=てらさわホーク

てらさわホーク●ライター。著書に「シュワルツェネッガー主義」(洋泉社)、「マーベル映画究極批評 アベンジャーズはいかにして世界を征服したのか?」(イースト・プレス)、共著に「ヨシキ×ホークのファッキン・ムービー・トーク!」(イースト・プレス)など。ライブラリーをふと見れば、なんだかんだアクション映画が8割を占める。

<放送情報>
バットマン v s スーパーマン ジャスティスの誕生
放送日時:2021年9月4日(土)12:30~、13日(月)21:00~
ジャスティス・リーグ
放送日時:2021年9月4日(土)15:15~、14日(火)21:00~
ワンダーウーマン
放送日時:2021年9月4日(土)17:30~、15日(水)21:00~
ワンダーウーマン1984
放送日時:2021年9月4日(土)20:00~、12日(日)18:15~
チャンネル:WOWOWシネマ

ワンダーウーマン1984
放送日時:2021年9月4日(土)13:00~
(吹)ワンダーウーマン1984
放送日時:2021年9月9日(木)17:15~、26日(日)15:45~
(吹)バットマン v s スーパーマン ジャスティスの誕生
放送日時:2021年9月6日(月)17:25~、23日(木・祝)12:50~
(吹)ジャスティス・リーグ
放送日時:2021年9月7日(火)17:30~、23日(木・祝)17:50~
(吹)ワンダーウーマン
放送日時:2021年9月8日(水)17:30~、23日(木・祝)15:25~
チャンネル:WOWOWプライム

ワンダーウーマン1984
放送日時:2021年9月4日(土)21:00~、7日(火)14:30~
チャンネル:スターチャンネル1

(吹)ワンダーウーマン1984
放送日時:2021年9月5日(日)21:00~、9日(木)12:50~
チャンネル:スターチャンネル3

※放送スケジュールは変更になる場合があります