ジェイソン・ステイサム、アル・パチーノの印象は?声優・山路和弘が明かす、日本語吹替えと海外俳優を演じること

ジェイソン・ステイサム、アル・パチーノの印象は?声優・山路和弘が明かす、日本語吹替えと海外俳優を演じること

数々のハリウッドスターたちの吹替えを担当してきた声優の山路和弘にインタビュー!

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ジェイソン・ステイサム、アル・パチーノの印象は?
声優・山路和弘が明かす、日本語吹替えと海外俳優を演じること

2021/11/01 公開

毎週土曜に映画専門チャンネル「ムービープラス」で放送中の「プレミア・ナビ」が、10月からリニューアル(毎週土曜20時56分~、毎週日曜の午後、毎週火曜21:00)。番組冒頭で作品情報や見どころをお伝えするナビゲーターには、ジェイソン・ステイサムやヒュー・ジャックマンといったハリウッドスターたちの日本語吹替えを担当する人気声優の山路和弘が就任。11月には、彼が吹替えを担当した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)と『ゾンビランド』(2009年)なども放送される。そこで今回、山路へのインタビューを実施し、吹替えの魅力や収録のポイント、ナレーションについても伺った。

「役者になりきる」楽しさと恐ろしさ…。吹替えにある「憑依感」とは?

渋く、張りのある声音から、野性味あふれるアクションスターや凄味のある悪役など、多くの役者に声を充ててきた山路。吹替え以外にも舞台やドラマでも活躍し、アニメーションの声優も務めるなど幅広く活動しているが、そうした「演じる」という仕事の中で、洋画の吹替えにはどんな魅力があるのだろうか?

「同じ映像に声を充てるという仕事でも、アニメは絵に声を入れていくので、『これから自分で作っていく』という感覚があるのですが、映画の吹替えは画面を見ながら、自分が演じなければならない役者と対峙しながら収録することになります。そうすると、ある種の『憑依感』を覚えます。演じている役者が、自分に入ってくるような感じですね。例えば、二枚目の役ばかり演じている声優の方は、普段からだんだん二枚目な感じになっていくものなんですよ(笑)。ただ、そのような『役者になりきる』という部分での楽しさがありつつ、飲まれてしまう恐ろしさもあり、役者として自分が演じる時は、そうした吹替えの影響が出てくると『まずいな』と思う時があります。一方で、じっくりと観察させてもらった役者さんの演技を、そのまま自分の演技として使わせてもらおうと思うこともありますね。そういう意味では、とてもおもしろい仕事です。それこそ、役者としてはものすごく勉強になります。僕は何十年も海外の役者さんを見続けてきたので、その絶妙な息の使い方なんかは、参考にさせてもらった気がしますね」

吹替えだけでなく、アニメーションの声優や舞台やドラマでも活躍する山路和弘

演じる役者については、それぞれどのような印象を持って吹替えに臨んでいるのか?ほぼ専任のような形で数多くの作品を担当し、山路の代表的な役と言っても過言ではない、ジェイソン・ステイサムの印象を聞いてみた。

「ジェイソン・ステイサムは、僕と声質が似ているのか、唸り声を上げるシーンでは、その声を聞いた時に『あれ?今のは僕の声?それともステイサムの声?』と自分でもわからなくなる時があります。そういう意味では、自分としても無理しないで演じられるので、他の役者さんと比べると楽にできるという感じです。そうでない役者さんだと、『これは自分の声が合っていないんじゃないか?』とストレスが溜まって、つらくなってしまう現場もあります。もちろん、そういう場合は役者に合わせた声ではなく、自分の声でやればいいわけですが、やはり一度疑いだすと気持ちが落ち着かなくなりますね。でも、ステイサムの声を充てる時に関しては、そういったストレスを感じたことがないです。彼はとてもストレートな芝居をするので、やりやすいというのに加えて、役者としても好感を持っています。長らく演じさせてもらえて本当に良かったです」

山路和弘の吹替えと言えば、ジェイソン・ステイサム!(『PARKER/パーカー』)

憧れの名優、アル・パチーノと不思議な魅力がある俳優、ウディ・ハレルソン

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』では、レオナルド・ディカプリオ演じるリック・ダルトンに、イタリアでマカロニ・ウエスタンに出演するよう提案した映画プロデューサー、マーヴィン・シュワーズ役のアル・パチーノの声を担当。これまでも代表作とも言える名作映画を含めて、いくつかの作品で吹替えを務めたパチーノにはどのような印象を持っているのだろうか?

山路「『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でアル・パチーノを演じさせてもらう少し前に、『アイリッシュマン』でも彼の吹替えを担当させてもらっていたので、久しぶりに演じるという感じではなかったですね。パチーノは大好きな役者の一人で、『スケアクロウ』の頃からずっと彼の作品を観ていますが、まさか自分が吹替えをすることになるとは思ってもいませんでした。彼の若い頃の作品である『スカーフェイス』や『ゴッドファーザー』シリーズなどは、その若い感じに合わせようと苦労して、悩みながら演じていました。それが『ヒート』の頃くらいから、だんだんやりやすくなってきました。パチーノは、若い頃と(現在を)比べると声の雰囲気がすごく変わってきていて、良い意味で枯れた感じが素晴らしいです。最近は、歳を取った彼に自分の年齢が近くなったせいか、声を充ててみても違和感がなくなってきました。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のパチーノは、いかにも彼らしい、ちょっと怪しい役です。睨みを効かすような演技も含めて、存在感の強さが印象的でした」

レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの初共演で描く『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

一方、初めて声を充てることになったのが、『ゾンビランド』にタラハシー役で出演しているウディ・ハレルソン。劇中では、テンガロンハットを被り、ワイルドかつ乱暴な言動をしながらも、心根は優しい男を演じるハレルソンの印象についても聞いてみた。

「ウディ・ハレルソンは、『ゾンビランド』で初めて吹替えさせてもらったのですが、これまで演じたことがないタイプの役者さんだったので楽しかったです。作品もコメディタッチの内容なので、だんだん彼の魅力に侵されていくというか(笑)。劇中では、アゴをひん曲げる特徴的な表情をするのですが、その演技を見ながら演じているこちらも、だんだん口が曲がっていって、彼になりきっていく感じがしました。今後、機会があればまた演じてみたい役者さんですね。『ゾンビランド』とはタッチの違う作品だと、また違う表情や演技を見せてくれるような気がするので、そうすると演じる方もおもしろいです」

引きこもりの青年が、人類の大半がゾンビ化した世界を“32のルール”で生き残ろうとする『ゾンビランド』

山路が関わる「吹替版映画」についても伺った。字幕とは異なる、日本語吹替版の映画だからこその魅力に対して、彼はどのように考えているのだろうか?

「吹替版の魅力は、字幕を追うことなく、画面に集中して映画を楽しめることだと思っています。最近ではとてつもなく情報が多い映画が増えていますし、実際に吹替えをしてみても、ゆっくりとしゃべることは少ないくらい。さらに、メインの登場人物たちがしゃべっている後ろや手前でも、別の情報が言葉によってやり取りされている場合は、その情報のすべてを字幕だけで追うことはできません。それらの細かい音の情報をきちんと伝えることは、吹替えでしかできないと思っています。そういう意味では、我々の仕事はとても意義があるものですね。でも、気持ちとしては字幕と吹替えの両方を観てほしいです。字幕だからこそわかる海外の役者さんの演技の良さもありますし、吹替えになったことで作品の雰囲気が全然違うものになる可能性もあります。ただ、みなさんが画面の中のいろんな情報を見逃さないためには、やはり吹替えがおすすめです。字幕派の人も、ぜひ機会があったら日本語吹替版も観てほしいですね」

ちなみに、今回のナレーションについての意気込みを聞かれると、開口一番で「下手なんですよ(笑)」と苦笑しながら答えてくれた山路。吹替えやアニメーションの声優とはまた違う難しさがあるようだ。

憧れのアル・パチーノやアゴに注目(?)のウディ・ハレルソンについても語ってくれた

「ナレーションというのは、情報を伝えることが第一なのでちょっと神経質になりますよね。普段の役を演じるのとは違う疲労感があります。今回のような海外作品を紹介する番組だとカタカナ語も多いので、『前途多難だな~』とちょっとブルーにもなっています(笑)。ただ、映画の放送が始まる前にこういった解説があるとわかりやすいし、『観てみようかな』と思っていただけるはずなので、その責任を感じながらがんばります!」

取材・文=石井誠

山路和弘●1954年生まれ。『トランスポーター』シリーズなどジェイソン・ステイサムの日本語吹き替えをほぼ専任で担当しているほか、ヒュー・ジャックマンやソン・ガンホ、ラッセル・クロウ、クリストフ・ヴァルツといった名優たちの声を担当。俳優としても活躍し、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」にも出演した。

<放送情報>
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド【日本語吹替版】
放送日時:2021年11月13日(土)10:00~

PARKER/パーカー【日本語吹替版】
放送日時:2021年11月19日(金)21:00~

ゾンビランド【日本語吹替版】
放送日時:2021年11月28日(日)21:00~
チャンネル:ムービープラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります