サメ映画の夏が今年もやって来た!
『シャークネード』シリーズなど多彩なトンデモ作品を一挙に紹介
2023/06/26 公開
今年も暑い夏がやって来た。毎年聞いているような気もするが、今年は去年よりも暑くなるという。電気代も上がって、節電も叫ばれている。効率よく涼むにはどうしたらいいのか?そう、日本には「サメフェス2023」がある。サメの恐怖に震え上がり、サメと戦う人々の姿を見て熱くなり汗をかいて涼む。これこそ正しい日本人の夏の過ごし方。ああ、日本の夏、サメ映画の夏。
名作『JAWS ジョーズ』の誕生を経て、様々な形でジャンル化されてきたサメ映画
サメ映画の原点といえば『JAWS ジョーズ』(1975年)である。天才監督スティーヴン・スピルバーグの実質的映画監督デビュー作にして最高傑作。前半は観光地のビーチを襲ったホホジロザメの恐怖をじわじわと描き、後半はサメ退治に挑む男たちの死闘を描く。本作がスゴいのは、本来は「顎(あご)」を意味する「Jaws」を「ジョーズ=サメ」と定着させてしまったこと。
あまりに名作過ぎたからか、正式続編3作のほかに模倣作も何本か作られたが、サメ映画というジャンルが確立するのは2000年代に入ってからとなる。そのサメ映画のトンデモさ、チープさ、オモシロさを感じるためにも『JAWS ジョーズ』をまずご覧いただきたい。
2000年代サメ映画の口火を切ったのが、『ダイ・ハード2』(1990年)や『クリフハンガー』(1993年)のレニー・ハーリン監督がSF味を加えて撮った『ディープ・ブルー』(1999年)。アルツハイマーの治療薬研究として実験に使われていたアオザメが知性を持ち、職員たちを襲う。海底基地という逃げ場のない場所での恐怖が味わえる。『タイタニック』(1997年)でも使われた巨大プールで撮影され、アニマトロニクスとCGを使ったリアルなサメが大暴れし、人間と知性派サメの頭脳戦が始まる。
本作は大ヒットし続編も企画されたが二転三転し、遺伝子操作されたオオメジロザメの続編『ディープ・ブルー2』が公開されたのは2018年、より知能が高いオオメジロザメの『ディープ・ブルー3』が2020年公開と、その間に世の中はトンデモサメ映画の大ブームになっていた。主人公がサメ保護活動家と時代を反映した作りとなった『~2』。続く『~3』では、前2作のことも語られるなど正式な続編であることが強調されている。が、そうすると過去の出来事をまったく学んでいないことになる!?
冒頭で「ジョーズ」がサメの意味になってしまったと書いたが、その良い例がこの2本。『ジョーズ・バケーション』(2021年)と『ジョーズ ザ・ファイナル』(2022年)。『~バケーション』はサメや顎が休暇をとるわけではなく、水上コテージでバケーションを楽しむカップルをサメが襲う。沖に流され、煙を起こして助けを呼ぼうとして火事になってしまうあたりは爆笑モノだが、コテージがだんだんとただの板切れへと小さくなっていく展開はスリリング。ラストのオチも利いている。
『~ザ・ファイナル』はもちろん『ジョーズ』の完結編ではなく、姉を殺されたトラウマを持つ青年がサメと戦うことで克服していくという実話を基にした人間ドラマでもある。ゲーム映像より粗いでおなじみのサメ映画のCGだが、本作はちゃんと作られていて見応えあり!
名作『海底47m』(2017年)の製作陣が手掛けたのが『海上48hours-悪夢のバカンス-』(2022年)。水上バイク2台を盗んで沖に出た陽キャ大学生5人が事故を起こし1台は大破、1台は故障、スマホは圏外、1人は重傷、周りはサメだらけ、全員大バカ野郎…とサメ映画の要素は揃った。どうやってこの危機を乗り切るのか?5人のキャラも立っていて楽しませてくれる。
『海上48hours~』と違って登場人物が良い人ばかりなのが『マンイーター:捕食』(2022年)。婚約を解消されて失意の友人を励まそうと孤島でのバカンスにやって来た男女6人をサメが襲う。凶暴なサメに挑むのは、娘をサメに食い殺された父親。中年親父というよりは初老な2人がショットガンでサメに立ち向かう。本作の特徴は島も映像もやたらと美しいこと。美しい映像とサメに捕食され無残な姿となった犠牲者たちのコントラストが素晴らしい!
2023年のサメフェスで異色中の異色作なのが『サメストーカー』三部作。このタイトルからトンデモサメ映画に慣れている諸氏は、美女を追いかけ回すサメの姿を思い浮かべるだろうが実はまったく違う。『サメストーカー』(2020年)はサメに襲われた女子高生のアリソンが間一髪でダニエルという男性に救われ、2人は親しくなる。ところがダニエルは、本名がブルースというサイコパスで、サメを操って邪魔者を次々と食わせていく凶悪ストーカーの連続殺人鬼だった。
第2作『サメストーカー ビギニング』(2017年)はそのブルースの過去を、第3作『サメストーカー リターンズ』(2021年)は凶悪事件を起こして姿を消したブルースが描かれる。製作年を見てお気づきだと思われるが、制作順も時系列も『~ビギニング』、『サメストーカー』、『~リターンズ』の順なので、この順番でご覧になることをお勧めする。見ものはブルースのストーカーというよりもその変態っぷり。サメより怖いのは人間だとわかる。
「そろそろトンデモサメ映画が見たい!」という貴兄にうってつけなのが『ムーンシャーク』(2022年)。1984年にソビエト連邦(現ロシア)が生物兵器として作り出したのがサメと人間を融合させたサメ人間だった。しかし問題が続出し、関係者ともどもサメ人間をロケットで宇宙に追放し、歴史から消し去った。そして現代、アメリカが打ち上げた月探査ロケットは月面に到達する直前で操縦不能となり、月の裏側へと誘導されてしまう。それは40年前に月に不時着して独自の進化を遂げたサメ人間の仕業で、ロケットを奪って地球へ戻り、復讐を果たそうとしていたのだ。
まるで昭和の特撮ヒーローに出てきそうな見かけのサメ人間だが、ホホジロサメやらシュモクザメやら何種類もいるところは芸が細かい。しかも月面を泳ぐのだ!確かに月には海と呼ばれる地域があるが、地球上から海に見えるだけで水はなく玄武岩でできている。そんなところを泳いで襲ってくるような怪物を倒せる気はしないが、乗組員がどう戦うのかご覧いただきたい。
竜巻で巻き上げられた無数のサメと戦う…!?トンデモな進化でファンを魅了する『シャークネード』シリーズ
トンデモサメ映画界の『ワイルド・スピード』と言っていい傑作が『シャークネード』シリーズ。『ワイルド・スピード』は走り屋のカーアクション映画だったが、回を重ねるうちに『ミッション:インポッシブル』のような超ド級カーアクション・スペクタクル・スパイ映画となっていった。
第1作『シャークネード』(2013年)は竜巻で空に巻き上げられたサメたちが街に降って来て人々を襲うという、アイデア一発勝負のトンデモサメ映画だったが、そのうちエスカレートし超ド級スペクタクル・SFアクション・トンデモサメ映画と変貌していく。この際理屈は忘れよう。妻エイプリルと別居中の主人公フィンが子どもや仲間を救おうと、チェーンソーで戦う大げさな芝居は感動を呼び、翌年には『シャークネード カテゴリー2』(2014年)が作られた。
今度はフィン一家が乗った飛行機がシャークネードに襲われる。サメ映画にまさかの『エアポート』シリーズの要素をぶっ込み大成功。フィンもしれっとエイプリルとよりを戻している。いよいよ調子づいてきた第3作『シャークネード エクストリーム・ミッション』(2015年)では、フィンは2度もアメリカを救ったとして大統領から勲章を授与される。ところが同じ頃、世界でいくつものシャークネードが発生していた。そこでフィンはNASAにいる父親に協力を求める!?前作で左腕をサメに食われたエイプリルは左腕を機械化しパワーアップ!
だんだんとトンデモSF化していき、『シャークネード4(フォース)』(2016年)ではラスベガスの砂漠で発生した竜巻がテーマパークのサメを吸い上げ、5年ぶりにシャークネードが発生する。しかも原子力発電所を襲ってニュークリアネードと化してしまう。フィンはどうやって戦うのか?さらに、前作で死んだエイプリルはサイボーグとして甦る!
いよいよ誰にも止められなくなった『シャークネード ワールド・タイフーン』(2017年)ではついに日本もシャークネードに襲われる。なんと日本ロケを観光…いや敢行しているのだ。フィンはこれまでの功績でNATOの「シャークネード戦略会議」に呼ばれるまでになっていた。しかもシャークネードは太古から存在し、当時の人々は伝説の秘宝の力で勝ったとわかり、フィンたちは秘宝探しの旅に出る。前作で大破したサイボーグ・エイプリルもさらに強化!
完結編『シャークネード ラスト・チェーンソー』(2018年)では太古の時代にタイムスリップしたフィンが、シャークネード1号と戦うことになる。毎回何かが起こるエイプリルにもまさかの出来事が!人気作となり、後半のシリーズではゲストも豪華になっていき、オリビア・ニュートン=ジョン、ラトーヤ・ジャクソン、デヴィッド・ハッセルホフ(『ナイトライダー』シリーズ)、スティーブ・グッテンバーグ(『ポリス・アカデミー』シリーズ)、ドルフ・ラングレン(『ロッキー4 炎の友情』)などが驚くような役で登場。もう至れり尽くせりのトンデモサメ映画を超えたトンデモサメ映画である。
今年の夏は「サメフェス2023」を肴に冷たいビールを飲む。これこそ正しい夏の過ごし方。日本の夏、サメ映画の夏である。
文=竹之内円
竹之内円●映画ライター。雑誌・WEBでは「MOVIE WALKER PRESS」、「シネコンウォーカー」、「HiVi」、「月刊スカパー!」など、劇場用パンフレットでは「SAW ソウ」シリーズや「平成ガメラ三部作 オフィシャル・パンフレット」、『キングスマン:ファースト・エージェント』、ムック「ジェームズ・ボンドは永遠に」などで執筆。また「デモンズ1&2 4Kリマスター・Ultra HDパーフェクトBOX」封入ブックレット、「サンダーバード」、「謎の円盤UFO」などバリー・グレイ作品や『ジュラシック・ワールド/炎の王国』、「ウォーキング・デッド」などのサウンドトラックCD封入のライナーノーツもときどき書いている。人生、ほぼSFホラーと特撮とビートルズでできている。
<放送情報>
ムーンシャーク
放送日時:2023年7月8日(土)9:15~
ディープ・ブルー(1999年)
放送日時:2023年7月16日(日)21:00~
ディープ・ブルー2
放送日時:2023年7月16日(日)23:00~
ディープ・ブルー3
放送日時:2023年7月17日(月・祝)0:45~
サメストーカー ビギニング
放送日時:2023年7月17日(月・祝)4:15~
サメストーカー
放送日時:2023年7月17日(月・祝)5:45~
サメストーカー リターンズ
放送日時:2023年7月17日(月・祝)7:15~
シャークネード
放送日時:2023年7月26日(水)1:10~
シャークネード カテゴリー2
放送日時:2023年7月26日(水)2:45~
シャークネード エクストリーム・ミッション
放送日時:2023年7月26日(水)4:25~
シャークネード4(フォース)
放送日時:2023年7月27日(木)1:00~
シャークネード ワールド・タイフーン
放送日時:2023年7月27日(木)2:35~
シャークネード ラスト・チェーンソー
放送日時:2023年7月27日(木)4:10~
サメストーカー ビギニング【日本語吹替版】
放送日時:2023年7月5日(水)1:30~
サメストーカー【日本語吹替版】
放送日時:2023年7月5日(水)3:05~
サメストーカー リターンズ【日本語吹替版】
放送日時:2023年7月5日(水)4:35~
シャークネード【日本語吹替版】
放送日時:2023年7月17日(月・祝)9:30~
シャークネード カテゴリー2【日本語吹替版】
放送日時:2023年7月17日(月・祝)11:15~
シャークネード エクストリーム・ミッション【日本語吹替版】
放送日時:2023年7月17日(月・祝)13:30~
シャークネード4(フォース)【日本語吹替版】
放送日時:2023年7月17日(月・祝)15:15~
シャークネード ワールド・タイフーン【日本語吹替版】
放送日時:2023年7月17日(月・祝)17:30~
シャークネード ラスト・チェーンソー【日本語吹替版】
放送日時:2023年7月17日(月・祝)19:15~
チャンネル:ムービープラス
JAWS ジョーズ
放送日時:2023年7月16日(日)12:00~
ジョーズ・バケーション
放送日時:2023年7月16日(日)14:15~
ジョーズ ザ・ファイナル
放送日時:2023年7月16日(日)16:00~
海上48hours-悪夢のバカンス-
放送日時:2023年7月16日(日)17:40~
マンイーター:捕食
放送日時:2023年7月16日(日)19:10~
チャンネル:WOWOWシネマ
海上48hours-悪夢のバカンス-
放送日時:2023年7月29日(土)11:00~
JAWS ジョーズ
放送日時:2023年7月31日(月)5:15~
チャンネル:WOWOWプライム
JAWS/ジョーズ
放送日時:2023年7月13日(木)9:45~
チャンネル:スターチャンネル2
(吹)JAWS/ジョーズ
放送日時:2023年7月9日(日)5:15~
チャンネル:スターチャンネル3
JAWS/ジョーズ[PG12]
放送日時:2023年7月8日(土)10:00~
JAWS/ジョーズ2[PG12]
放送日時:2023年7月8日(土)12:15~
ジョーズ3
放送日時:2023年7月8日(土)14:30~
ジョーズ4 /復讐篇
放送日時:2023年7月8日(土)16:30~
チャンネル:ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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