水瀬いのりがツアーへの意気込みを語る!「イントロを聞いて『ゾワッ』と感じてほしい」

昨年、横浜アリーナ単独公演を成功させるなど、アーティストとしても人気を博す声優・水瀬いのりが、約3年ぶりに満を持して送り出す4thアルバム『glow』。リリースするにあたり、今回のアルバムがアーティストとしてひとつのゴールになったと語る水瀬は、これまでのアルバム制作とは全く違うものになったという。全14曲を作る中で何を感じたのか、その思いを語ってもらった。

――アルバム作りには水瀬さんのさまざまな意見が反映されていると聞いています。制作における苦労や葛藤のようなものは多かったのでしょうか?
「今まではアルバムを作る時に、似た色が集まらないようにバラエティ豊かにしようという考えがあって、好きな曲だけを選んでいくと似たような曲ばかりになってしまうので、それは間違いなのかなと思ったこともありました。でも、新しいことにチャレンジして試行錯誤する中で、例えば可愛いという言葉にもいろんな可愛いがあるように、音楽の中にもいろんな可愛いがあるんですよね。それに気付いた時に、今回入っている『Melty night』という曲は女の子を前面に出した可愛い曲ではなく、背伸びしない等身大の可愛さが表現されていて、私にとっても無理のない可愛さになったというか...。今まではライブでも披露の仕方に悩む楽曲も中にはあり、そういう意味では今回のアルバムはライブする自分が想像できる楽曲ばかりになったなと感じていて、そこが今までのアルバムと大きく異なる部分かなと思っています」
――今回の楽曲は14曲ありますが、背伸びしないという意味では制作においてつまずくことは少なかったのでしょうか?
「そうですね、いわゆる難産的な生みの苦しみみたいなものはなかったですね(笑)。今回はレコーディングでもそれがなくて。今までの方が苦しかったものが多くて、曲をどの方向に持っていくかを見失うレコーディングも結構あったんですけど、(今回は)逆に順調過ぎてある意味で怖いみたいな、『逆境こそレコーディング』みたいなイメージもあったので、歌唱に対してのディレクションがシンプルなことに戸惑いというか不安みたいなものがありました。逆に自分から質問をすることが多くて、そういう意味では田淵智也さんの楽曲はディスカッションが多くて、刺激的だったレコーディングですね」

――田淵さんの楽曲というと「僕らだけの鼓動」ですね。すごく前向きな明るい曲だと感じました。
「田淵さんは今回のアルバムで初めてご一緒させていただいたんですけど、デモの段階から仮歌を入れてくださっていて、きっとこういうニュアンスで歌って欲しいんだろうなっていうポイントが詰まっていました。すごく具体的にディレクションをしてくださるので、田淵さんが求めているものに自分の歌唱を合わせていく作業はすごく新鮮で、田淵さん自身もパッションのある方だったので、レコーディングが始まる前から私の人柄などを聞いて、私らしさを追求した楽曲に仕上げてくださったり、どのくらいまでが私らしいのかラインの線引きを丁寧に行ってくれたので、まるでカレーを作ってるみたいな気分になりました(笑)。どの曲にも言えることではあるんですけど、特に田渕さんの楽曲は田淵さんのサウンドにより見つけていただいた新しい私とこれまでの私が混ざり合い光った楽曲になったと思います。」
――まさに『glow』のテーマに沿った楽曲ですね。今回のアルバムではそういう前向きな楽曲が多かったように思います。
「そうですね、希望があったり、前向きな気持ちになったり、少し哀愁を感じさせる曲でも奈落の底に落ちていくような暗い曲ではなく、そこから這い上がっていくようなイメージだったり。今回も『パレオトピア』という楽曲が試練を乗り越えて虹を見つけるという物語になっているので、楽曲のジャンルは違えど、同じテーマで統一されたアルバムができたなと思います」

――4thアルバムが完成した今の思いを改めて聞かせてください。
「すごくいい思い出しかなくて、自分の心の器量や容量がすごくこの3年間で拡張されて、チームの絆も深まったし、改めてアルバムを作ることへの感謝の気持ちが溢れました。やっぱり(コロナ禍という)普通ではない3年間だったので、親しみという部分ではこの世に生まれてきてくれたことにも感謝するくらいの深い愛情が湧いています。アルバムを手に取る際は、ありがとう~いい子だね~とスリスリしたいくらい!(笑)」
――今回のアルバムは、アーティストとしての成長も感じるような今までと違うイメージのアルバムだとすごく感じました。
「成長を感じられることが自分の中でのノルマになっていて、でもそれを感じているのは自分だけだと思っていたので、それがちゃんと音楽を通して伝わっているというのは嬉しいです。4枚目にして飾らない姿でいることの在り方を見つけられたような気がしています。このアルバムがこれから先も自分の表現というものの軸になって欲しいし、ひとつのゴールを迎えたような達成感ですごく清々しい気持ちです」

――成長されたきっかけのひとつに作詞も関係しているのではと思っています。前回のアルバムで作詞に挑戦されて以降、作詞をする機会が増えていますが、作詞の醍醐味をどのように感じていますか?
「作詞は本当に難しくて、楽しい時間はできた後にしか得られないなと個人的には思っています。作っている間は楽しいよりも難しいが先ですし、締め切りというデッドラインはマグマが近付いてきてるイメージで、追い込まれると良いものはできないことを体感した時間でもありました。意気込んでも同じ言葉しか出なくて終わりが見えないんですよね。でも、完成した自分の歌詞がカードになった時に心にグッときますし、『ココロソマリ』はキャストの方からも歌詞を褒めてもらえて、ちょっと鼻が伸びました(笑)。シンプルに嬉しかったですし、私が作品作りを歌だけじゃない部分で担えたんだと思うと、レコーディングに臨むときも生みの喜びを感じます。やっと口にできたり歌えたという喜びは、作詞してこそ得られるものだなと改めて思いました」
――最後に、9月からツアーが始まりますが、どのようなツアーにしたいですか?
「昨年のライブや配信のライブは、これまでの活動を振り返るベスト的な意味も含めたものでした。でも、次のライブはこの『glow』が新しいフェーズに移してくれると思っていて、今までの楽曲も大切に、新しい楽曲を歌うことで、今までのツアーにはなかった輝きや光をもたらしてくれるツアーになると思っています。だから、私もそれに全乗っかりして引っ張ってもらう気満々なのですが(笑)。セトリ予想もだいぶ楽しいアルバムになったと思うので、既存の曲とこのアルバム曲がどんなふうにセットリストで混ざり合うのか、ひとつの楽しみにしていただきたいですし、イントロを聞いて"ゾワッ"と感じるライブにできたらいいなと思います」
取材・文・撮影=永田正雄
放送情報【スカパー!】
水瀬いのり 4thアルバム『glow』
2022年7月20日発売
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