ブレイク前夜のロウン(SF9)も！CHANELの世界を彩る女優イ・ソンギョンが魅了した秀逸なミュージカルシーン

Instagramのフォロワーが1400万人超(11月5日時点)を誇り、「CHANEL BEAUTY(シャネルビューティ)」のアンバサダーを務めるなど、ファッション・ビューティー業界に多大な影響力を持つ女優 イ・ソンギョン。175cmという抜群のスタイルと印象的な薄茶色の瞳でファンを魅了し続ける彼女だが、アーティストを多数抱える韓国大手事務所・YGエンターテインメント所属で、元々はミュージカル女優を志していたことでも知られている。

そんな彼女がミュージカル女優をめざすヒロインを演じ、吹き替えなしのパフォーマンスでファンを大いに魅了した作品が、4年前の名作ドラマ「アバウトタイム～止めたい時間～」(2018年)だ。

「アバウトタイム～止めたい時間～」は、完璧なスペックを持ちながらも過去のトラウマで他人に心を閉ざす御曹司と、自分自身の寿命を知りながらも前向きに生きるヒロインによるファンタジックなラブロマンス。気難しい御曹司イ・ドハ役を「空港に行く道」(2016年)や「VIP―迷路の始まりー」(2019年)の人気俳優イ・サンユンが演じ、ヒロインのチェ・ミカをソンギョンが演じている。実年齢差9歳という"年の差ケミ"だ。

まず関心を引くのは、人の寿命を可視化した"寿命時計"という斬新なモチーフ。7歳の頃から人の寿命時計が見えるようになったミカはある日、自分の腕にも寿命時計が浮かび上がっているのを見つけてしまう。刻まれた時間、つまり残された寿命は100日あまり。だが、偶然出会ったドハの手を握った瞬間、ミカは自分の寿命時計が止まっていることに気づく。そのことに気づいたミカは、寿命を延ばしたい一心でドハに付きまとい始める。

ミカとドハの歳の差ラブストーリーに、"人生の残された時間を大切に生きる"というメッセージが加わったことで、深みのある物語へと昇華した本作。さらに、ミュージカル女優を目指すミカがオーディションで歌ったり踊ったり、美しいピアノ弾き語りを披露したりと、珠玉のパフォーマンスも散りばめられている。そのいずれもが、実際にミュージカルの勉強をしていたというソンギョン自身によるものだ。

ある時はステージいっぱい駆けめぐりながら恋の喜びを高らかに歌い、またある時は、生きることの尊さを澄んだ歌声と美しいピアノの調べで紡ぎだす――制作当時、彼女の卓越したパフォーマンス力は制作スタッフを唸らせただけでなく、視聴者をも驚かせ、魅了した。

そして運命のいたずらか、彼女が歌う場面にはいつもドハが居合わせる...。ソンギョン自身の魅力的な歌声やステージ上でのキラキラした輝きが、そのままミカの魅力となってドハを魅了する。歌唱シーンが単なるロマンスの添え物などではなく、ミカとドハが恋に落ちていく重要なカギとなっているのだ。

少しでもドハに寄り添いたい(寿命を延ばしたい)と、志願して専属運転手になったミカ。日常のシーンでも、車を運転しながら楽しそうにハミングしたり、美味しそうに食事をとったり...表情豊かなミカを間近で目にするうち、ドハはどんどん惹かれていく。ソンギョン演じるミカのチャーミングな表情が、この年の差ケミのラブロマンスに圧倒的な説得力を与えている。

K-POPスター出身のフレッシュな共演陣もまた、本作の大きな見どころだ。元KARAのハン・スンヨンがミカを支える親友ソンヒを、ZE:Aのキム・ドンジュンが才能あるミュージカル監督・ジェユ役を好演。また、本作の翌年に「偶然見つけたハル」(2019年)で俳優としてもブレイクを果たすことになるロウン(SF9)が、ミカの弟・ウィジン役で出演しており、ソンヒに猛アプローチする"年下男子"キャラとして愛らしい姿を見せている。

ランウェイでは、トップモデルとしてクールな表情を決めるソンギョン。そんな彼女が全編を通して喜怒哀楽を豊かに表現する姿に、きっと釘付けになること間違いなしの作品だ。

文＝酒寄美智子