音楽そのものとも言える中村佳穂の最新ライブ！「竜とそばかすの姫」以降も進化を続ける表現力

バリエーション豊かな自由闊達かつこだわり抜かれた楽曲を発表している中村佳穂。自身の制作活動だけでなく、様々な場でその才能を発揮している。

そんな彼女の新たな活躍の場となったのが、2021年に公開された映画「竜とそばかすの姫」だ。日本アニメーション映画のトップランナーである細田守監督の最新作。世界中の人が集うインターネット上の仮想世界を舞台に、心に傷を負った少女が竜と呼ばれる謎の存在との出会いや現実世界で起きている騒動を通じて、一歩ずつ希望を取り戻していくという細田監督らしい壮大な1作だ。

本作で中村は、主人公・すずと彼女の仮想世界での姿であるベル役に大抜擢されている。すずは幼い頃に母を亡くしてから、自分の感情を表に出すことができなくなってしまった内向的な女子高校生。声優初挑戦ならではの中村の声色が、キャラクターの雰囲気とマッチしており、すずの心情が伝わる見事な演技を披露している。

その一方、仮想世界で一夜にして大スターになる歌姫・ベルにも様変わりし、持ち前の歌声を披露。メインテーマ「U」ではスケールの大きなサウンドに乗せた圧倒的なボーカルで歌姫としての堂々たる姿を表現。また、中村が手掛けた劇中歌「歌よ」では、繊細さとパワフルさを併せ持った歌声で、心を解放していく様子やキャラクターの2面性を巧みに浮かび上がらせた。

この作品で知名度を上げた中村は、2021年の年末にはmillennium parade×Belle (中村佳穂)として「第72回NHK紅白歌合戦」にも出演。さらに2022年の2月には自身最大のキャパシティとなる東京国際フォーラム ホールAで「うたのげんざいち 2022」を開催し、ピアノ弾き語りのみ、さらにはシークレットゲストで登場した上原ひろみと共演し、観客を大いに魅了した。

3月にリリースしたアルバム「NIA」では、飛び抜けてポップなチューンから、壮大なサウンドが紡がれる感動的なナンバーまで、キャッチーでありながらもオリジナリティを感じさせる楽曲や抜群の表現力を存分に見せた。

そんなアルバムを引っ提げた秋の全国ツアー「中村佳穂 TOUR ● NIA・near ●」を9月から実施。その中から10月7日に東京・昭和女子大学人見記念講堂で開催されたライブの模様が11月29日(火)にＷＯＷＯＷライブにて放送される。

一つとして同じ演奏はせず、あらゆるジャンルや音楽の形態を網羅しながら表現していく姿が見るたびに新たな発見があると定評の中村のライブ。今回もツアー初日にコーラスメンバーの公募を発表し、東京・昭和女子大学人見記念講堂公演と大阪・フェスティバルホール公演で一緒に歌唱するなど、彼女ならではの演出は健在だ。

音楽そのもののような存在とも言われるほど、圧倒的なセンスを味わうことができる中村のライブを見れば、彼女がなぜいま音楽シーンで最も注目を集める存在なのか、納得せざるを得ないだろう。

文＝HOMINIS編集部