石原さとみと西野七瀬が陰で治療を支える病院薬剤師を演じた「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」

「相原さんは、感謝されたいの?」
「それはそうですよ」
「じゃあ、この仕事は向いてないかな」
「受けるべき称賛を受けていない」という意味を持つ言葉、「アンサング」をタイトルに冠した医療ドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(2020年放送)。作中で病院薬剤師の葵みどりと新人薬剤師の相原くるみが交わした上の会話の通り、処方された薬の供給や効果の確認などを業務とし、感謝されずとも陰から治療を支える病院薬剤師にスポットを当てた物語だ。
主人公の葵みどりを演じるのは、2018年放送のドラマ「アンナチュラル」で好演し、第11回コンフィデンスアワード・ドラマ賞をはじめ5つのドラマ賞で賞を受賞した石原さとみ。石原の演技は本作でも十二分に光り、視聴者の心を揺さぶってくれる。

萬津総合病院薬剤部に勤務する葵は、「薬は患者の今後の生活も左右する。だからその人自身も知らないといけない」という信念の持ち主。常に真摯に患者と向き合い、治療のためならどんな苦労も厭わない。投薬の効果が出ない時は、日常服用している薬との相性を調べるために患者の家を訪れたり、他の病院の医師に話を聞きに行くこともある。患者のために、葵は薬剤師の枠を超えて必死で駆け回る。
「私たちの気持ちなんてわかんない!」。糖尿病患者の女の子が、普通の子と同じ生活を送れないことにコンプレックスを持ちトラブルを起こした時も、寄り添い、励まし、彼女が「当たり前の毎日」に戻れるよう力を尽くす。

患者と一緒に笑い、泣き、重病の患者が抱えがちな心の問題も熱意によって氷解させ、適切な治療へと導いていく。患者に寄り添い、優しい笑みを浮かべて過ごす時間。生死と直面しているが故に溢れる涙。ひたむきに患者の回復を願う、そんな葵の姿を見ていて涙腺が緩んだ視聴者も多いことだろう。
また、薬の知識を豊富に持つ薬剤師は、処方された薬に疑問があれば「疑義照会」によって医師に問い合わせることができる。実行すれば医師と衝突する可能性があるが、そこでも葵はあくまで信念を貫く。
容態が悪化し苦しむ妊婦のそばで、葵は産婦人科医に対し必死に自分の見解を述べる。診察と処方ができるのは医師だけであり、薬剤師にはできないからだ。検査結果と得た知識、そして強い思いを持って治療を修正させようと食い下がる葵は、まるで相手を射抜く熱い矢のようだ。真摯に患者と接する姿、必死に医師と対峙する姿。そこから葵みどりという人物の信念が痛いほど伝わってくるのは、やはり石原の演技の力と言えるだろう。

そして、このドラマにはもう1人、注目したい女優がいる。かつて乃木坂46で7回センターを務めた西野七瀬だ。
西野が演じる新人薬剤師の相原くるみは、葵にくっついてさまざまなことを学んでいく。最初は初々しく今どきの若者という雰囲気で、「(病院薬剤師に)向いてなかったら辞めようと思ってますけど」と言ってのけたりもする。リアクションもユニークで、時々ぽろっと関西弁が出たり、ベテラン薬剤師・荒神寛治(でんでん)と初対面の時の「おじいぽん?」とのセリフが可愛すぎるとSNSでも話題になるほどだった。
そんな相原も、話が進むに従い成長していく。調査を重ね服薬指導する場面では、落ち着いた態度で説得力のあるアドバイスを送り、一人前となった病院薬剤師の姿を見せてくれる。西野の演技と相原の成長も、このドラマの見どころと言えるだろう。

石原と西野に加え、ぶっきらぼうだが葵を認めている先輩・瀬野章吾(田中圭)や、クールで作業効率を重んじる薬剤部主任・刈谷奈緒子(桜井ユキ)、バタバタしながらも皆をまとめる薬剤部部長・販田聡子(真矢ミキ)ら、豪華俳優陣によって物語は紡がれてゆく。たとえ称賛されなくとも、治療を支え、命を守る病院薬剤師たちの活躍と感動を、ぜひ本作で味わってほしい。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋
放送日時:2023年1月16日(月)12:10~
チャンネル:フジテレビTWO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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