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小栗旬が演じる正義から悪への変貌ぶりが圧巻...刑事ドラマ「BORDER」で見せた「鎌倉殿の13人」にも通じる演技

2022/12/29

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「BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係」(テレ朝チャンネル1)
「BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係」(テレ朝チャンネル1)

2022年はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、主役の北条義時を演じた小栗旬。源頼朝役の大泉洋と共演していた青年期の明るく爽やかな人物から、終盤に向けてどんどんダークヒーローの色合いが濃くなる義時にゾクゾクした人も多いはず。

「鎌倉殿の13人」同様、小栗のダークサイドへの変容ぶりが堪能できるドラマが、「BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係」だ。「SP 警視庁警備部警護課第四係」、「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」と警察権力の正義と悪を描き続けている直木賞作家・金城一紀が原案・脚本を担当している本作は、放送時に、「ギャラクシー賞」、「ザテレビジョンドラマアカデミー賞」(最優秀作品賞、主演男優賞、脚本賞)、「東京ドラマアウォード」など名だたるテレビドラマ賞を受賞した佳作だ。

殺人犯捜査を行う刑事を演じる小栗旬
殺人犯捜査を行う刑事を演じる小栗旬

(C)金城一紀/テレビ朝日

本作で小栗旬が演じるのは、警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係の刑事・石川安吾。仕事だけが楽しみで、密かに殺人事件を心待ちにしているような男だ。第1話「発現」では、冒頭5分で石川が捜査中の怪我によって生死の境をさまよう、という窮地に。これでは話が続かない...(笑)と思っているところで石川はどうにか蘇生するが、頭に残った弾丸のせいか、死者と対話することができるようになる。この時点でのBORDER(境界)は、「死と生の境界線」だ。

殺人現場で無念の死を遂げた被害者たちの声に耳を傾け、捜査では知りえないヒントを手に入れ犯人を逮捕して死者の無念を晴らしていく石川。死者の声だけでは事件を解決に導くことができなくなると、情報屋の赤井(古田新太)など裏稼業の人間たちと繋がっていく。法や捜査権の限界、自身の失敗などにぶち当たるたびに、石川は次々とさまざまなBORDER(境界)に遭遇し、そこを超える選択をして疲弊していく。

(C)金城一紀/テレビ朝日

そして最終回「越境」では、完全殺人を行うサイコパス・安藤(大森南朋)と対峙することに。被害者の声を聞いても安藤の証拠を掴めない石川は、裏稼業の人間たちを使って証拠の捏造まで図る。それでも逮捕できなかった安藤に、石川は衝撃の制裁を与える。

この制裁こそが最後のBORDER(境界)。「正義と悪の境界線」だ。汚れなきまっすぐな男だった石川が、絶対的な悪・安藤の言う「こっち側」へのBORDERを超えてしまう。悪を葬る石川をダークヒーローといえるのか、それとも安藤のいう「こっち側」へ闇落ちした悪人なのか――。生と死、正義と法、情と非情、さまざまなBORDER(境界)に迷う石川を小栗が迫真の演技で魅せる。

(C)金城一紀/テレビ朝日

本連続ドラマの続編であるスペシャルドラマ「BORDER 贖罪」のイベントで、石川の上司・市倉を演じた遠藤憲一がこれまでの小栗との共演を振り返り、「『BORDER』で一緒になって、死んだような目ができる名優になっていた」と彼を評したが、連続ドラマでは、回を重ねるごとに小栗の目の色が消えていく。そして、最終回では死んだような目を見せている、その変化は圧巻。

(C)金城一紀/テレビ朝日

小栗だけでなく、脇を固める布陣も手堅い。直属の上司・市倉に遠藤、石川とバディを組む熱血漢の刑事・立花に青木崇高、風変りな検視官・比嘉に波瑠、裏社会の人間に、古田新太、野間口徹、浜野謙太、滝藤賢一、管理官に北見敏之、裏社会の掃除屋に中村達也、ほかにも宮藤官九郎、平田満などかなりのクセ強な役者を揃えている。

2014年の作品だが、今見てもまったく古さは感じられない。直木賞作家・金城一紀の緻密な脚本と、演技派俳優陣とのケミストリーで作り上げられた硬派な社会派ヒューマンサスペンス。最終回のラストシーンは、衝撃!小栗の「死んだような目」に注目してほしい。

文=坂本ゆかり

放送情報【スカパー!】

BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係
放送日時:2023年1月4日(水)13:20~
チャンネル:テレ朝チャンネル1
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

詳しくは
こちら

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