広瀬すずの気迫を感じる壮大な探偵ミステリー！同世代の橋本環奈との再競演も話題を呼んだ「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」

2013年のデビューから女優街道を走り続ける広瀬すずが、10周年の節目となる今年も目覚ましい活躍を見せている。

感情を表に出さないクールなOLを演じた6月公開の主演映画「水は海に向かって流れる」では大人の女性への変化を印象づけ、監督・岩井俊二×音楽・小林武史による10月公開の音楽映画「キリエのうた」では、映画初主演となったアイナ・ジ・エンドを確かな演技力で役柄同様に支えた。2024年には、脚本家・坂元裕二が新たに書き下ろしたオリジナル脚本を杉咲花、清原果耶とのトリプル主演で映画化した新作映画「片思い世界」もスタンバイ。元来の明るく溌剌とした愛らしいイメージとは異なる、新たな一面を次々と見せている。

そんな彼女の2023年の躍動ぶりを語る上で欠かせないのが、3月に劇場公開された「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」(2023年)だ。2021年の4月期の日曜ドラマとして放送された「ネメシス」(日本テレビ系)の好評を受け、スケールアップして映画化された本作が、12月2日(土)にＷＯＷＯＷシネマで放送される。

横浜にある探偵事務所ネメシスのメンバーは、天才的なひらめきで事件を解決に導く探偵助手の美神アンナ(広瀬)、一見デキる探偵風だが実はかなりポンコツな風真尚希(櫻井翔)、事務所社長で探偵歴30年の大ベテラン・栗田一秋(江口洋介)という3人組。ドラマ版の2年後が描かれる今作では、ひとり暮らしを始めたアンナが毎晩見るようになる"悪夢"が物語の軸に。仲間たちが次々に悲惨な死を遂げるというその夢に不安を覚える中、"窓"と名乗る奇妙な男(佐藤浩市)が現われたことで、その不安が次第に現実味を帯びてくる。

広瀬が演じたアンナは、特殊な能力を駆使して数々の難事件の真相を見破ってきた天才肌の少女。櫻井演じるポンコツ探偵との凸凹バディ感も痛快で、2人を見守る事務所社長役の江口とも息の合った掛け合いを見せる。何気ない日常シーンも和気あいあいとした自然な空気感が漂う。それぞれ個性の異なる癖の強いキャラクターながら、互いに信頼していることが感じられるバランスの良い名トリオぶりも楽しい。

自身が患う不治の病の治療を目的に、アンナたちを利用して最終的に死に追いやろうとしたかつての敵、菅朋美(橋本環奈)も復活。同世代の人気女優、橋本環奈と広瀬すずによる美しき天才対決はドラマ版でも好評を博したが、今作では相棒・風真の怪しい行動を不信に思ったアンナが朋美に助けを求めるという展開で再会が実現する。

橋本の他にも、神奈川県警捜査一課の迷コンビを好演した勝地涼と中村蒼をはじめ、名物キャラクターを演じたキャストたちが続投。スピード狂の医者・上原黄以子役の大島優子、アンナの叔母で正義のジャーナリスト・神田凪沙役の真木よう子、元コンフィデンスマンの美しきマジシャン・緋邑晶に扮する南野陽子、と華やかな女優陣も存在感を発揮する。ドラマからの映画化を経て結束力が強まったチーム感が謎めいた物語をさらに盛り立てる。

伏線が張り巡らされた本作の監督は、サスペンス映画「22年目の告白－私が殺人犯です－」(2017年)などのヒット作を手がけ、ドラマシリーズの総監督も務めた入江悠が続投。出演者たちも口々に"難しい脚本"と称した数々の超難解な映像トリックが"キモ"ではあるが、それ以上に広瀬すずや櫻井翔、橋本環奈ら、ドラマから受け継がれる"チーム・ネメシス"ならではの息の合った空気感が楽しい1作と言えそうだ。

文＝中川菜都美