2024/02/21
内藤剛志が人情に溢れるベテラン刑事を好演した「今野敏サスペンス 警視庁強行犯係・樋口顕」
現在放送中のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」に出演し、人情派のベテラン刑事を演じている内藤剛志。過去には27クール立て続けに連続ドラマに出演するという前人未到の記録を打ち立てた内藤は、「科捜研の女」シリーズや「警視庁・捜査一課長」シリーズなど、刑事役のイメージがすっかり定着している、渋く味わいのある俳優だ。そんな内藤主演の連ドラ「今野敏サスペンス 警視庁強行犯係・樋口顕」は、今野敏の原作による本格ミステリーをドラマ化したもの。「強行犯係 樋口顕」シリーズとして15年以上にもわたりスペシャルドラマとして放送された後、2021年にシーズン1が、2022年にはシーズン2がオンエアされた。
本作で内藤が演じる主人公・樋口は、温厚な性格で部下にも慕われている親しみやすい刑事。家ではネットメディアの記者として働いている娘・照美(逢沢りな)に怒られることもある不器用な父親だが、刑事として生きてきた自身の人生に誇りを持っている。そんな樋口が刑事と父親の狭間で決断を迫られる局面も描かれるシーズン1で内藤が見せた演技に着目したい。
■冷静沈着な刑事を揺るがす誘拐事件...その時、樋口はどうする?
シーズン1の第1話「正義」では、殺された被害者の胸ポケットから「JUSTICE」を意味するタロットカードが発見されるという不可解な連続殺人事件を巡ってストーリーが展開していく。
捜査一課強行犯係の警部・樋口顕(内藤)の特技は剣道。集中したい時は警察署の屋上や公園で竹刀を振っている。そんな中、樋口の娘・照美が「正義の鉄槌を下す」という目的を持つ犯人に誘拐されたことによって、刑事であった樋口は被害者という立場になり、その冷静な心が激しくかき乱されることに。出社すると同僚たち全員が樋口の異変に気付き、樋口の盟友・氏家(佐野史郎)は樋口に「何があった?」と追求する。そんな状況下で、「ジャスティス」と名乗る犯人からかかってきた脅迫電話に動揺し、声を荒げた樋口は、上司の天童(榎木孝明)に自宅待機を命じられてしまう。
法のもとに存在し、法によって規制されている警察組織の矛盾と葛藤が描かれる中、樋口は大事なひとり娘の生命の危機を前にして、犯人とどう向き合っていくのか?父親と刑事の狭間で心がぐらぐらと揺れる中、内藤が見せる緊迫感溢れる演技は圧巻だ。
■事件現場の疑問を紐解いていく実直さと人間に寄り添う温かさ
昭和世代のベテラン刑事でありながら、人に圧をかけることをせず、被害者の心を解きほぐし、傷を負った人間の気持ちに寄り添おうとする樋口の人間味溢れる性格が本作の魅力の1つでもある。
東京と横浜を結ぶ連続殺人事件では、現場に残された金貨を巡って物語が展開。神奈川県警の強面刑事・梶山(大友康平)の強引なやり方と樋口班が対立することになるが、後悔した過去があるゆえにやさぐれている梶山に「我々も人間ですよ。家族のことで冷静さを失うこともある。私にも覚えがある」とそっと声をかける場面では、先述の誘拐事件を経て、さらに包容力を増した樋口が印象的だ。
そして最終話では、"期待のホープ"として衆議院議員に当選した秋葉康一(吉田栄作)の親友で、投資ファンド会社の社長・相沢が殺されたことから複雑に絡み合う人間関係や社会問題が描かれていく。疑念をかけられた秋葉が道場で竹刀を振っているところに樋口が訪ね、「お手合わせを」と剣道着に着替えて勝負し、「真っ直ぐに向かっていけば必ずあなたの懐に入れると思った」と語る場面も、実直な姿勢で捜査に臨む樋口らしさが表われている。
犯人に辿り着く謎解きを楽しみながら、内藤にしか演じられない優しさと厳しさ、チャーミングな面を併せ持つ刑事にいつのまにか惹きつけられる作品だ。
文=山本弘子
放送情報
今野敏サスペンス 警視庁強行犯係・樋口顕 一挙放送
放送情報:2024年2月24日(土)11:30~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます