2024/03/21
「スパイダーマン」が人々に愛される理由を評論家が分析「悩める男の子の成長物語に共感できる」
1962年発売のアメコミ誌「Amazing Fantasy#15」で初登場して以来、マーベルヒーローの中でも「愛すべき隣人」としてひときわ人気の高いスパイダーマン。このたび、シリーズ最新作「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」を含む新旧スパイダーマンシリーズ8作品が、ムービープラスで4月12日(金)、13日(土)の2日間にわたって放送される。
そんなスパイダーマンの魅力について、アメコミ系映画ライターの杉山すぴ豊さんは「スパイダーマンというのは、悩める男の子の成長物語。そこが多くの人々の共感を集めているのだと思います」と指摘する。
日本でも人気のマーベルヒーローだが、その中でもスパイダーマンの人気は特筆すべきものがある。歴代作品の興行収入を見ても、2002年の「スパイダーマン」の75億円を筆頭に、ほとんどの作品が30億円以上の興収を記録。他のヒーローの単独主演作と比べても、その人気はひときわ高い。だが、スパイダーマンはなぜここまで日本で人気を集めているのだろうか。
「スパイダーマンが日本人に受け入れられやすい要素は、二つあると思います。一つは、マスクで顔を隠しているヒーローであること。例えば、スーパーマンやキャプテン・アメリカは顔を出しているため、外国人のヒーローという意識が強いのです。しかしマスクで顔を隠していると、外国人であっても、そのヒーローに共感しやすくなります。日本で、アイアンマンやデッドプールが人気なのは、そういうところがあると思います。それと、手塚治虫さんと(原作者の)スタン・リーさんが対談した時に、手塚先生が話していたことなんですが、スパイダーマンって、きゃしゃなんですよ。マッチョじゃなくて、体格が日本人に近いから、多くの子どもに夢を与えるんだと。さらにもう一つ付け加えると、1970年代後半に東映が(特撮ドラマとしてテレビシリーズ化した)スパイダーマンの日本版を作っていたという下地があったということも大きかったように思います」
今回放送される8本は、サム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の「スパイダーマン」シリーズ3部作、マーク・ウェブ監督、アンドリュー・ガーフィールド主演の「アメイジング・スパイダーマン」シリーズが2本、そしてマーベルヒーローが集まった「アベンジャーズ」の世界観とクロスオーバーするMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に参加した、ジョン・ワッツ監督、トム・ホランド主演の「スパイダーマン」"ホーム"シリーズ3部作となる。それぞれのシリーズの違いはどのようなものなのだろうか。
「最初のトビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』は非常によくできていて。後の作品もこれが基準になっているわけです。この映画が製作された当時って『X-MEN』などはありましたけど、今ほどアメコミ映画が人気ではなかった。そんな中で、ちゃんとしたスパイダーマンの映画を作ってくれたところがファンの心に刺さったんじゃないかなと思います。ただ『スパイダーマン』というのは青春ものなので、主役の俳優さんが年齢を重ねるとだんだん"青春もの"感が薄れていくんですね。そこで主演をアンドリュー・ガーフィールドにバトンタッチしてリブートすることになったわけです。青春映画としてはこの『アメイジング・スパイダーマン』シリーズがよくできているなと思います。
ただ、ここまでのシリーズは、ソニー・ピクチャーズが権利を持っていたため、MCUとは別の独自路線でした。だから、ディズニーが手掛ける『アベンジャーズ』との共演もなかったわけです。そんな時にマーベルがディズニーの傘下になって、ディズニーとソニーの話し合いが行われました。そこで、『スパイダーマンだけはソニーに籍を置きながら、MCUに出ることを可能にしましょう』という画期的な提案がなされたのです。そうして作られたのが、トム・ホランド版の『スパイダーマン』。トム・ホランドのスパイダーマンって、偉大な先輩ヒーローがいる中で、ルーキーヒーローがどう頑張るかということに主眼を置いているんです。アイアンマン役のロバート・ダウニー・Jr.との絶妙な師弟関係のような、ああいう楽しさって他のシリーズとは違った楽しさがありますよね。
僕の印象ですが、スパイダーマンファンはトビー・マグワイア版が好きだし、青春ドラマのエモーショナルさというのはアンドリュー・ガーフィールド版が一番だと思います。そして、アメコミファンはトム・ホランド版が大好きなんじゃないかなと思っています。もちろんどれを見ても面白いんですけどね」
最新作「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」では、敵の策略によって、正体を知られてしまったスパイダーマンのために、人々の記憶を消し去ろうとドクター・ストレンジが危険な呪文を唱えてしまうところから始まる。その結果、マルチバース(パラレルワールド)の扉が開かれてしまうことになり、その扉からは、グリーン・ゴブリン、ドック・オク、エレクトロ、サンドマンといった招かれざる敵が次々とやって来てスパイダーマンに襲いかかる。そんな中、とある手段によって別世界のスパイダーマンであるピーター2(トビー・マグワイア)、ピーター3(アンドリュー・ガーフィールド)も呼び寄せられることとなり、新旧スパイダーマン3人の競演が実現することとなった。そんな本作を鑑賞するにあたって、チェックしておいた方がいい過去作はあるのだろうか。
「新旧シリーズの集大成である『ノー・ウェイ・ホーム』で最後に盛り上がるためには、まずトビー・マグワイア主演の1作目は見ておいた方がいいですね。あれが一番スパイダーマンが何であるかということをきちんと描いているので、スパイダーマンの全てが分かると思います。それともう一つ、『ノー・ウェイ・ホーム』の事実上のメインヴィランがグリーン・ゴブリンだということもあります。今まで出てきたヴィランの中で、最も極悪非道なのはグリーン・ゴブリンなんですよね。この作品はグリーン・ゴブリンの恐ろしさも良く出ているので、ぜひチェックしてもらいたいですね。そこのルールさえ分かれば、後は『アメイジング・スパイダーマン2』まで飛んでも大丈夫です。もちろん恋人が違う(『スパイダーマン』はMJ、『アメイジング~』はグウェン・ステイシー)というのはありますけど、そこでのグウェンとのやり取りが『ノー・ウェイ・ホーム』のあの感動的なシーンに生きてきますからね。その2本は押さえながら、そこからさかのぼって他の作品も見ていただければ、『スパイダーマン』シリーズをより深く楽しむことができるのではないかと思います」
取材・文=壬生智裕
放送情報
スパイダーマンTM[4Kレストア版]
放送日時: 4月12日(金)18:45~
スパイダーマンTM2[4Kレストア版]
放送日時: 4月12日(金)21:00~
スパイダーマンTM3[4Kレストア版]
放送日時: 4月12日(金)23:30~
アメイジング・スパイダーマンTM
放送日時: 4月13日(土)10:00~
アメイジング・スパイダーマン2TM
放送日時: 4月13日(土)12:45~
スパイダーマン:ホームカミング
放送日時: 4月13日(土)16:00~
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
放送日時: 4月13日(土)18:30~
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
放送日時: 4月13日(土)20:56~ほか
放送チャンネル:ムービープラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります