SFシリーズの金字塔「スタートレック」が愛される理由を海外ドラマ評論家・池田敏が分析「多様性を先駆けて取り入れてきた本作にやっと時代が追いついた」

「宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。」というナレーションでも有名なSF シリーズの金字塔「スタートレック」。TVドラマシリーズの第6作として2017年に本国アメリカでスタートした「スタートレック ディスカバリー」は、シリーズ初の黒人女性で船長ではないキャラクター、マイケル・バーナムが主人公となり、新時代を切り開く象徴的な作品として多くのファンに支持されてきた。

そのシーズン4 がスーパー！ドラマＴＶで５月２日(木)より日本初放送される。本作は惑星連邦が復活して新たな歴史が刻まれていく最新章で、これまでさまざまな試練を乗り越えて成長してきたバーナムが、いよいよUSS ディスカバリーの船長として活躍を始めることになる。そんな大人気SFシリーズの魅力、そして最新シーズンの見どころを海外ドラマ評論家の池田敏さんに伺った。

ドラマ・映画などにまたがるロングラン宇宙ＳＦシリーズ「スタートレック」。原点であるドラマ第１作「宇宙大作戦／スタートレック」が始まったのは1966年で、それから数えると再来年の2026年で60周年に到達。世界中のファンの熱い支持に支えられている。

そして2017年に始まり、スーパー！ドラマＴＶでシーズン４に突入する「スタートレック ディスカバリー」はドラマ版の第６作。米国では今年、シーズン５が始まった。

なぜ「スタートレック」はこれほど長期間、人気を維持しているのか。時代の変化を先取った「宇宙大作戦～」以来、シリーズ全体で成長・進化を続けてきたからだ。「宇宙大作戦～」の各話はこう始まる。「宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である」。これは「スタートレック」自体が広大な映像エンタメ業界において、無限の可能性を秘めた「開拓地」だったと予見していたかのよう。

そして「宇宙大作戦～」は、他の米国のドラマに先駆けて多様性を重視。レギュラーキャラに、異星人、アフリカ系女性(ウフーラ)、アジア系男性スールー(カトウ)がいるというように。かつての米国では画期的だった。

後の各映画版もそれなりに成功する一方、ドラマ版は「～ディスカバリー」の前作、「～エンタープライズ」以来、なかなか新作が生まれなかった。しかし2009年に始まった新映画版シリーズで状況は好転。やはり人気シリーズである「スター・ウォーズ」を復活させたＪ・Ｊ・エイブラムス監督の盟友アレックス・カーツマンらにより、ドラマ版「スタートレック」は12年ぶりによみがえった。それがこの「～ディスカバリー」だ。ここから「スタートレック」を楽しむこともできる。

シリーズで初めてマイケル(ソネクア・マーティン＝グリーン)という黒人女性を主人公とし、これまでのエンタープライズに当たる新宇宙船ディスカバリーのクルーたちによる壮大なアドベンチャー。従来は「艦長」「船長」が主人公だったが、マイケルは「副長」。マイケルの成長を描こうという意図があるのだろう。ドラマとしては、これまで１話完結形式だった「スタートレック」シリーズだが、21世紀に入って米国では「ノンストップドラマ」が支持されるようになり、本作も連続ドラマ路線に移行。巨大な危機も取り上げる、壮大なスケールを実現した。

さらに本作の特筆すべき点は前シーズンまで、宇宙船シェンジョウの船長フィリッパ役を、後に映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(2022年)で第95回アカデミー賞の主演女優賞に輝くミシェル・ヨーが演じていたこと。アジア系俳優の主演賞の受賞は史上初で、次の時代を見据えたすごい先見性だ。「宇宙大作戦～」以来の「多様性」という伝統にいよいよ時代が追いついてきた偉業には感動すら覚える。

このシーズン４、いよいよマイケルが「船長」になったディスカバリーだが、緊急事態、「重力異常」がスリリングに展開するのが見どころ。ＶＦＸもカメラワークも進歩し、大作映画に匹敵するレベル。引き続きマイケルは中心人物として活躍するが、前シーズンからは髪が伸びてイメージをリフレッシュ。米国ドラマはヒット作ほど主人公のイメージを変えないので、これも野心的な試みだ。

さらに、本作のシーズン２には「宇宙大作戦～」の重要ゲストキャラだったクリトファー・パイクが登場したが、最新のドラマ版「スタートレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」はパイクが主人公で、すでにシーズン３への継続が決定。過去を大切にしつつ、未来へ歩み続けるのが「スタートレック」の真骨頂。今後もファンを魅了し続けるだろう。