メインコンテンツに移動

2024/04/29

25歳の生田斗真が太宰治の自伝的小説の映画化で女性に翻弄される男を演じた『人間失格』

この記事を共有する

1948年(昭和23年)に38歳でこの世を去った太宰治。それから80年近く経ってもロングセラーとして読まれ続けている小説「人間失格」は、太宰の代表作にして最後に完成させた中編小説である。有名な「恥の多い生涯を送って来ました」という自分語りのとおり、破滅的な人生を歩む主人公の大庭葉蔵は太宰自身と重なり、小説の中の出来事や女性たちとの関係も太宰の身に起こったことを反映しているとされる。そんな究極の私小説ともいえる作品を原作とする映画『人間失格』が日本映画専門チャンネルで2024年5月12日(日)10:10より放送される。

『人間失格』で主演を務めた生田斗真
『人間失格』で主演を務めた生田斗真

本作は、2009年、太宰治の生誕100年を記念して『赤目四十八瀧心中未遂』の荒戸源次郎監督により映画化されたもの。全国各地でロケ撮影などを行い、2010年に劇場公開された。小説で「おそろしく美貌の学生」と描写される葉蔵を演じたのは、当時25歳だった生田斗真だ。

青森・津軽の大地主の息子として生まれ、豪邸で華族のように育った大庭葉蔵(生田)は、子供の頃から自分の本心をさらけ出せず、周囲となじむために偽りの自分を演じていた。やがて東京に出て高等学校に入った葉蔵は、画塾で堀木(伊勢谷友介)という遊び人と知り合い、夜ごと街に繰り出しては酒や女などに溺れ、放蕩の限りを尽くす。整った顔立ちの葉蔵は、自然に女性から言い寄られ、女性と心中未遂事件を起こすなどのトラブルが続き、そんな生活に虚しさを募らせて、ますます酒に頼るようになる。

生田は、経済力のある"太い"実家や外見的魅力を持ち、恵まれた境遇ながらも、心理的な欠落を抱え、生きている実感が持てない葉蔵を、確かな演技力で体現している。現代のラブストーリーやサスペンスだけでなく、明治、大正、昭和を舞台にした近代の物語にも生田がハマるのは、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)などでも証明したこと。子役時代からTVドラマだけでなく、舞台などで鍛えてきたクリアなセリフ回しが、原作小説の会話をそのまま忠実に脚本にしたこの作品でも、いかんなく発揮されている。さらに、手足の動作を効果的に使った芝居が、葉蔵の置かれた状況を的確に伝えてくる。

そして、津軽の実家にいた頃から東京での放蕩生活を経てまた津軽に戻るまで、行く先々で女性を惹きつけずにはいられない優しげな笑み。本当に太宰治はこんな男だったのではないかと思わせる繊細な表情も印象的だ。
生田斗真にとってはこれが映画初主演作であり、映画賞の候補にもなるなど、演技力が広く認められるきっかけになった。
 

また、葉蔵と出会う女性を演じたのは、純真で献身的な良子を演じた石原さとみを始め、寺島しのぶや坂井真紀、小池栄子、室井滋や三田佳子、大楠道代といった個性豊かな女優たち。単純に葉蔵のルックスに惹かれる女性もいれば、その孤独を理解する思慮深い女性や、彼を利用しようとする野心的な女性もいて、キャストそれぞれのキャラクターがハマっている。

生田とは大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)など共演作も多く、友人として知られる小栗旬も、2019年公開の『人間失格 太宰治と3人の女たち』(蜷川実花監督)で太宰治を演じている。両方の作品を見比べてみるのも、おすすめの楽しみ方だ。

文=小田慶子

放送情報

人間失格
放送日時:2024年5月12日(日)10:10~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

関連人物から番組を探す

映画の記事・インタビュー

more