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2024/07/01

米大統領選 共和党全国大会を前に「もしトラ」をモーリー・ロバートソンが斬る!「トランプ前大統領は副作用の強い劇薬」

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TM& (C) 2024 Cable News Network. A Warner Bros. Discovery Company. All Rights Reserved.
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4年に1度行われるアメリカ合衆国大統領選挙の季節が間もなく訪れる。政治経済両面に影響を及ぼすことから世界中で注目される中、現与党の民主党はジョー・バイデン大統領、共和党はドナルド・トランプ前大統領が有力候補として名乗りを上げている。

選挙運動が本格的に始まる7月は、共和党の公認候補が確定する共和党全国大会が7月16日(火)から4日間かけて行われる(日本時間)。指名受諾演説などを通じて有権者へどんなアピールをし、どんな政策綱領が採択されるのか、ニュース専門チャンネルのCNNjでは連日生中継で放送する。

そこで共和党全国大会で候補指名が確実とされているトランプ前大統領について、アメリカ出身であり、コメンテーターとしても活躍するモーリー・ロバートソンさんに、米大統領選挙を見据えながら語ってもらった。

コメンテーターとして活躍するモーリー・ロバートソン
コメンテーターとして活躍するモーリー・ロバートソン

■なぜトランプ前大統領は支持されるのか?

アメリカの大統領選挙は日本の選挙と比べて長期間行われる。実際、中間選挙が2年前、予備選挙が今年初めに行われたが、大統領が確定する本選挙は冬に入る11月に予定されており、日本とは比べ物にならないほど長い。そもそも日本とアメリカの選挙には、どのような違いがあるのだろうか。

「アメリカの大統領は有権者を代表した選挙人による投票で選ばれます。クッションが間に入るので直接というわけではないですが、直接投票に極めて近い形で行われるので、選挙が身近に感じやすくなっています。そこが、総理大臣を直接国民が選べない日本とは違うところですね」

本選挙に出馬する党公認候補はそれぞれの党全国大会によって決まる。しかし予備選挙の結果、共和党ではトランプ前大統領以外、候補者たちは撤退の意向を見せている。トランプ前大統領がこれほどまでに支持されているのは、MAGAと呼ばれる熱烈な支持層が関わっているという。

「MAGAとは『アメリカ合衆国を再び偉大な国にする』というトランプさんのスローガンに感銘を受けた勢力の人々のことを指します。その勢力によるトランプさんを推す声が、共和党支持層の間で圧倒的になってしまったというのが現状です」

その背景には、グローバル経済により多くの工場がアウトソースで中国などに逃げた結果、アメリカの製造業や中産階級の人々が非常に貧しくなったことが関係している。

「支持する人々の根幹にあるのは、雇用が安定してほしいという思いです。アメリカは、正社員であっても未来が見えないほど経済危機が進行している状態。利上げでアメリカの経済が良くなったように見えても、金融資産を持たない人たちには全く恩恵がないんです。とりわけリーマン・ショックの影響で労働者階級や低所得者層は非常に困窮しましたが、当時のオバマ大統領は彼らを助ける政策を出さなかった。その憤りがトランプ運動につながりました」


■日本の政治経済に影響を及ぼす米大統領選挙

トランプ前大統領が当選した場合、日本にどのような影響があるのだろうか。モーリーさんは「安倍政権時代に就任していた時は日本に対して態度がコロコロ変わる印象でした。日本にアメリカの基地があってもアメリカにとって得にならないと言ったり、もっとお金を払わないと撤退するぞ、ぐらいの感じでしたね。あまり関係性を知らないまま勢いよく大なたを振るう方なので、条件次第では在日米軍を縮小する用意があると言われてしまうと、日本の政府としては予算を割り振るために税金という形で国民に負担をかけることになるかもしれません。また、中国にアメリカは条件次第で日本を守らないんだと思われてしまうと、台湾も同じだと思って台湾に侵攻するインセンティブになる可能性があります」と警鐘を鳴らす。

一方、経済に関して聞いてみると、「リーマン・ショックの時には業績が悪くなった企業の多くが、非正規雇用者の雇い止めを行いました。それと同じで、例えば政治的な判断で日本の自動車がアメリカへの輸出を制限されたりすると、似たような現象が起きて低所得者層が打撃を受けるかもしれません。逆に、例えばアメリカの株価が急上昇して日経平均もどんどん上がっていくと、利益を得る人たちも出てくるので、国全体で見ると善しあしに関しては一言では言えないですね」と指摘した。


■日本の今後はアメリカを見れば分かる

アメリカの選挙が日本の政治や経済に与える影響は大きい。誰が大統領になるのか、選挙の動向を日本人が注視する意味は十分にあるとモーリーさんは語る。

「アメリカで今起きているトランプさんを支持するMAGA運動。この運動の根底にあるのは、経済構造の問題だと思っています。そのツケが非常にハードな経済格差を生んでいます。そもそも経済格差を縮めるために、専門的な知識や技能を身に付けられる大学という教育機関が存在するんですが、その大学の学費が年々上がっていて、有名大学の学費は学力があっても自費で払えるような金額ではなくなりました。アメリカでは、学生ローンを卒業後10年かけて返済していくのが一般的になっているんです。そんな状況に絶望して、既存の政治ではなく一発逆転を約束してくれるトランプさんに賭ける人たちが出てきました」

このアメリカの流れに、日本もそんなに遠くない所にいるという。

「アメリカとは文化の土壌が違うので、数年後に日本でも起きるという簡単な話ではありませんが、アメリカで起きている問題というのは、格差を見ると、日本がこれから抱えるだろう問題がそこに示唆されています。アメリカを勉強すると3年後、4年後の日本の問題がくっきりしてくる。備えになるわけですよね。日本にこれから押し寄せるリスクを理解する上で、アメリカ大統領選挙を知ることは、役に立つと思います。

最後に、私はどちらかというとトランプさんを懸念する側なんですが、彼はのし上がった人ということで、野心と欲望をかき立てる象徴的な人物なんです。彼に触発されて、冒険心の強い人たちが起業する可能性はある。不安定ながらも空前のイノベーションが起きる可能性だってあるわけですよ。みんなを盛り上げるのが非常にうまいムードメーカーであることは確かなんです。だから、私はトランプさんを"副作用の強い劇薬"だと思っています。心臓が止まるかもしれないし、逆に強くなるステロイドかもしれない。今後どうなるのか、エンタメを見るような視点で見るのもいいかもしれないですね。それで若い視聴者の方がすごく政治に興味を持って、日本の選挙にも同じように興味を持ったら、もしかしたら若い人たちの投票率が日本でも上がるかもしれませんし、そういう期待も感じています」


取材・文=永田正雄



放送情報

米大統領選 共和党全国大会 初日~4日目
放送日時: 7月16日(火)~19日(金)9:00~
放送チャンネル: CNNj
※放送スケジュールは変更になる場合があります



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