2024/08/01
<岩井勇気の推しアニメ> 花江夏樹はじめ人気声優たちが限界を超えた圧巻の演技をみせる「東京喰種トーキョーグール」
様々なアニメ作品に精通しているハライチの岩井勇気さんが「大人にこそ観てほしいアニメ作品」を紹介するこの企画。第11回は、2024年にテレビアニメ放送10周年を迎えた「東京喰種トーキョーグール」シリーズを紹介。本作は、人を喰らう怪人"喰種(グール)"が潜む東京を舞台に、ある事故がきっかけで"喰種"の内臓を移植され、半"喰種"となった大学生・カネキ(声:花江夏樹)の苦悩と、彼が選び取る波乱の運命をドラマチックに描き出すダーク・バトル・ファンタジーだ。放送当時、リアルタイムで視聴していた第1シーズン・第1話のクライマックスシーンを観た瞬間に「これは全話視聴しよう!」と決意したという岩井さん。主人公・カネキを演じた花江夏樹をはじめとする超豪華声優陣の演技を軸に、本作の魅力を語ってくれた。
■妖艶で貪欲、攻撃的という今までにない花澤香菜の演技に驚かされた
「とても人気の高いマンガが原作」というくらいの事前情報で、「東京喰種トーキョーグール」の第1シーズンをリアルタイムで視聴しました。第1話のエンディングで、TK from 凛として時雨さんによるオープニングテーマが流れる中、主人公のカネキが「人の肉を食べたい」という衝動に涙を流しながら必死に抵抗するシーンを観た瞬間、「これは全話視聴しよう!」と思いましたね。「この後、絶対つらい物語になるのは目に見えているけれど、ものすごい展開が待ち受けているんだろうな」と思ったことを覚えています。
カネキは、ごく普通の読書好きの大学生だったのですが、行きつけの喫茶店「あんていく」で、メガネの似合う知的な美少女・リゼに出会ったことで、大きく運命を変えられてしまいます。最初は、好きな作家の小説を読んでいた、ということで彼女に惹かれていくカネキですが、リゼの正体は、世間を騒がせている東京20区での大量捕食事件を引き起こした喰種。カネキの誘いに応じたのも、彼を食べるのが目的でした。
リゼの声を務めたのは花澤香菜さんです。当時の花澤さんは、ときどきクールなキャラクターも演じるけれど、基本はふわふわした印象の可愛らしいヒロイン役に声を当てることが多かったのですが、本作では妖艶で貪欲、そして攻撃的という、今までにない役柄を魅力的に演じていて、「花澤さんの声って、こういう役にも合うんだ」という驚きがありましたね。
そして、カネキを演じた花江夏樹さんは、一緒に事故に巻き込まれたリゼの内臓を移植されたことで半喰種になりながらも、ヒトの血肉に感じる食欲に「人でありたいから」と抗い続ける姿を見事に演じています。カネキは過酷な運命を背負わされていますが、どこかぼんやりとした印象を与えるキャラクター。そんな彼が、喰種として生きる覚悟を決めるまでの過程が、第1シーズン・第11話から描かれますが、実に残酷で痛々しいシーンのオンパレードです。カネキたちと対立する喰種の組織「アオギリの樹」に所属するヤモリ(声:西凜太朗)が、カネキをあらゆる手段で拷問する場面で、花江さんは思わず耳をふさいでしまいたくなるような絶叫でカネキの絶望や苦痛を見事に表現していました。
■10年前だったからこそ可能だったのであろうハードな描写
この拷問シーンでは、海外での配信を念頭に置いた表現が求められる現在では、確実に規制されてしまうであろうハードな描写が連続します。放送当時ですら「残酷すぎる」「観ているのがつらかった」という声があがっていました。しかし、この拷問によってカネキはリゼを超える喰種へと覚醒し、主人公としての輪郭がしっかりするため、絶対にカットしたり、マイルドな描写に逃げたりすることはできない。そういった意味では、今から10年前に制作された作品だったからこそ、原作マンガの持つ魅力を削ぎ落とすことなくアニメ化できたと言えるかもしれません。
花江さんと以前、お話しした際に、「自分は水でありたい」と言っていたことが、すごく印象に残っています。「何にでも染まるし、どんな形にもなれる水のように、作品に適応できる人間でありたい」と花江さんは話していました。今後も、いろいろな役を演じられると思いますが、ここまで精神的にも肉体的にも過酷な状況に置かれるキャラクターはないような感じがします。
そして、食事に対する強いこだわりを持つゆえに、喰種対策局からは「美食家(グルメ)」というコードネームで呼ばれている青年・月山を演じているのが、宮野真守さんです。ヒトと喰種のハイブリッドでもあるカネキを食べるために接近し、彼がケガをした際はハンカチで血を収集し、大切に保管しているようなキャラクターなのですが、宮野さんが月山をとてもいきいきと演じていることが伝わってきます。月山がハンカチに染み込んだカネキの血の香りを嗅いで、そのかぐわしさに絶叫するシーンは、まさに宮野さんにしか出せない変態性を感じましたね。
人間として生きたいけれど、ヒトの血肉にどうしようもなく食欲を刺激される喰種でもあるカネキが、快楽と倫理観の狭間で揺れ動く第1シーズンを経て、第2シーズン「東京喰種トーキョーグール√A」では、喰種として生きることを選んだカネキがアオギリの樹のメンバーとなり、第3シーズン「東京喰種トーキョーグール:re」からは、佐々木琲世という青年が主人公となるなど、ドラマチックな展開が続きます。
「ヒトを食べたい」という絶対に理解できない部分と、「人間でいるためにヒトは食べてはいけない」というカネキの葛藤に共感できる部分。その両方があるのが、「東京喰種トーキョーグール」という作品の魅力なのかもしれないですね。
取材・文=中村実香
岩井勇気●1986年生まれ。幼稚園からの幼なじみである澤部佑とのお笑いコンビ「ハライチ」として活躍。新潮社「僕の人生には事件が起きない」 「どうやら僕の日常生活は間違っている」が累計20万部突破。放送されるアニメ作品はすべてチェックし、毎日放送「岩井 狩野 えびちゅうの推しかるちゃー」やABEMA「SHIBUYA ANIME BASE」など、漫画やアニメに関する番組でもMCを務める。
放送情報
「東京喰種トーキョーグール」(全12話)
放送日時:2024年8月3日(土)11:00~
「東京喰種トーキョーグール【JACK】」
放送日時:2024年8月3日(土)16:27~
「東京喰種トーキョーグール√A」(全12話)
放送日時:2024年8月4日(日)11:00~
「東京喰種トーキョーグール【PINTO】」
放送日時:2024年8月4日(日)16:33~
「東京喰種トーキョーグール:re」
放送日時:2024年8月5日(月)スタート 毎週(月)~(金)12:00~
「東京喰種トーキョーグール:re(最終章)」
放送日時:2024年8月14日(水)スタート 毎週(月)~(金)12:00~
チャンネル:アニマックス
※放送スケジュールは変更になる場合があります