2024/10/05
「浪漫ドクター キム・サブ」へと繋がるハン・ソッキュの転換点!韓国エンタメの歴史を変えた名優の偉大なキャリアとは?
近年の代表作「浪漫ドクター キム・サブ」シリーズの"天才外科医 キム・サブ"役が記憶に新しい、韓国芸能界きっての名優ハン・ソッキュ。今年11月に60歳の節目を迎える彼は、10月11日(金)より韓国で放送が開始となる犯罪スリラー「こんなに親密な裏切り者」に"韓国最高のプロファイラー"役で出演。約30年ぶりのMBCドラマへの復帰であり、年齢を重ねてもなお意欲的な、ドラマ作品における新たな挑戦が話題を呼んでいる。
そもそも映画俳優としてキャリアを重ねてきたハン・ソッキュの代表作といえば、公開当時の歴代記録を塗り替えるヒットを叩き出し、韓国映画の歴史を変えたとまで言われているスパイ・アクション「シュリ」(1999年)。日本でも大ヒットを記録し、凄まじい熱演が今も記憶に刻まれている人は多いことだろう。
そんな韓流映画ブームの原点ともいうべき名作を経て、ハン・ソッキュの16年ぶりのテレビドラマ出演として注目を集めた時代劇が「根の深い木~世宗大王の誓い~」(2011年)。本作もまた、彼の俳優人生の大きな転機となった。
作家イ・ジョンミョンによる同名歴史ミステリーを原作として、ハングル誕生をめぐる物語をダイナミックに描き出す「根の深い木~世宗大王の誓い~」。韓国で最も尊敬されている歴史上の人物で、"文字(=ハングル)"を創製した朝鮮王朝4代王"世宗(セジョン)"ことイ・ドをハン・ソッキュが演じる。
民を愛し、身分の低い者にも対等に接する慈愛の深いイ・ドは、民のために新たな文字を作る極秘計画を立ち上げるが、それを阻もうと画策する勢力によって側近が次々と暗殺される。
民と気さくに接するイ・ドだが、王としての圧倒的な存在感を放ち、一方で葛藤や苦悩を抱え複雑に揺れ動く内面もハン・ソッキュは繊細に表現する。名優らしいさすがの重厚感と貫禄は、そこにいるだけで"画"を成立させ、物語に絶対的な説得力をもたらす。彼にしかできない深い余韻と感動を残す芝居で、2011年のSBS演技大賞に輝くなど、映画スターとしての実力を存分に発揮した。
ハン・ソッキュとW主演を務めた"時代劇のカリスマ"チャン・ヒョクは、父親が無念の死を遂げ、その元凶が国王イ・ドにあると思い込む奴婢を熱演。やがて武官として身を立て"カン・チェユン"と名を変え王宮に入ると、イ・ドからの信頼を得て、重要な任務を担うように。"もうひとりの主人公"としてストーリーを盛り立て、華麗なアクションや肉体美でも他を圧倒する存在感を放っている。
またドラマ序盤では、世宗の青年時代をソン・ジュンギが演じ、名だたる実力派俳優の中で完璧な演技を見せ、脚光を浴びたことも話題に。「トキメキ☆成均館スキャンダル」(2010年)で人気を集めた直後だったこともあり、当時20代半ばだったジュンギのカリスマ性あふれる助演ぶりも今この作品を振り返る面白さだ。
練りに練られた秀逸な脚本、ハン・ソッキュ×チャン・ヒョクの2大スター共演、若かりし日のソン・ジュンギの強烈なカリスマぶり、文字創製事業の中核を担うソイを演じたシン・セギョンのヒロイン性...など、トピックを挙げればキリがない本作。韓流史劇の最高傑作との呼び声も高いこの超大作で、映画スターの威厳を示した名優ハン・ソッキュの凄みを改めて実感してほしい。
文=川倉由起子