菅田将暉演じるクセあり大学生・久能整が独特の感性で事件を解く「ミステリと言う勿れ」を連続ドラマ・SPドラマ・映画の3シリーズイッキ見で満喫♪

菅田将暉が田村由美による原作漫画そのままの天然パーマ姿で主人公を演じ、その作風のユニークさから話題作となった、「ミステリと言う勿れ」シリーズ。2022年に連続ドラマとして登場し、2023年にはSPドラマを放送した直後に映画も公開され、観客動員数５週連続１位を記録し"ミステリ旋風"を巻き起こした。11月には、この連続ドラマとSPドラマ、映画の全作品が映画・チャンネルNECOで一挙放送される。

本作最大の魅力は、何といっても菅田将暉演じる主人公・久能整(くのう・ととのう)のキャラクターだ。整のキャラクターについては、整のことを気に入る逃亡犯の犬堂我路(いぬどう・ガロ)が、映画の冒頭で彼を的確に表現している。「いろんなことを細かいところまで見ている。そして、気付いたことをウザがられてもひたすらしゃべる。あと、モジャモジャの頭をしている」と。我路が語る通り、整はかなりクセのあるキャラクターで、殺人容疑をかけられるドラマの第1話から刑事たちと対等に渡り合っていく。

加えて、鋭い観察眼と洞察力で、刑事の青砥成昭(筒井道隆)、池本優人(尾上松也)、風呂光聖子(ふろみつ・せいこ／伊藤沙莉)らの私生活を言い当て、妻との軋轢を抱える池本や職場での存在意義に悩む風呂光の心を鷲づかみにする。さらには「僕はつねづね思っていたのですが...」と言いながら、常識や慣習の中の違和感や欠点をつまびらかにしていく様には、登場人物だけでなく、視聴者も爽快感を味わえるはずだ。

■ドラマだけでなく、SPドラマや映画にも豪華キャストが集結

連続ドラマ、SPドラマ、映画のいずれでも、原作コミックスのエピソードを基にストーリーを展開。連続ドラマでは順番を入れ替えながら、整が刑事たちと知り合う「容疑者は一人だけ」を皮切りに、「バスジャック事件」「天使の連続放火事件」「横浜連続殺人事件」など、原作コミックス第７巻までのさまざまな事件を取り扱う。伊藤沙莉、尾上松也、筒井道隆、門脇麦、永山瑛太をはじめとするレギュラー陣演じる、愛すべきキャラクターたちと共に、整ならではの見解を披露し、毎話、意外な方向から事件が解決されていくのが面白い。

「天然パーマのおしゃべりな大学生が帰ってくる」とサブタイトルが付けられたSPドラマ「ミステリと言う勿れ特別編」では、原作コミックス第11巻収録の「失われた時を重ねて」が題材になっている。篠原涼子、塚地武雅、志尊淳をゲスト出演者に迎え、オリジナルキャラクターたちと共に豪奢な廃校に眠るタイムカプセルの謎に迫っていく。

そして、映画版では、原作コミックス第2巻〜４巻で展開される通称「広島編」をベースに因習にまつわる殺人事件を捜査。松下洸平、町田啓太、原菜乃華、萩原利久、鈴木保奈美、滝藤賢一、でんでん、野間口徹、松坂慶子、松嶋菜々子、角野卓造、段田安則、柴咲コウという豪華キャストを迎えて"犬神家の一族"を超える豪族にまつわる悪習をなんの因果か、整が明らかにしていく。

■シリーズを通して描かれる、久能整のバックボーンも大きな見どころ

事件は、基本的にドラマ各話、SPドラマや映画ごとに解決されていくが、全体を通して、少しずつひも解かれていく謎もある。それは整自身の生い立ちだ。ドラマの最初の事件解決時に明らかになるが、整は鎖骨部分に大きな傷がある。いつなんどきもマフラーを手放さず、首元の詰まった服を着ているのは、それが理由だ。そして、その傷は彼の両親の存在と関係しており、彼の性格や考え方につながるバックボーンはふとした瞬間に垣間見える。たとえば、ドラマ版では風呂光や池本との、映画版では原菜乃華演じる汐路(しおじ)との何気ないセリフだったりするので、気を抜かずに見てほしい。

いずれの作品でも、菅田将暉が作り上げた整ならではのリズムが心地いい。思ったことをよどみなく長々としゃべり、時にはあたたかな眼差しで傷付いた人たちの心を解かす。謎解きが楽しいだけでなく、飄々とした演技で因習をばっさりと切り捨ててくれる様も気持ちよく、大きな見どころだ。

文＝及川静