放送20周年記念の劇場版「機動戦士Ζガンダム A New Translation」は新規カットを交えて「機動戦士Zガンダム」TVシリーズを新訳！

1979年の放送開始以来、ロボットアニメの金字塔として輝き続けている『機動戦士ガンダム』。その7年後の世界を描いたTVシリーズ『機動戦士Ζガンダム』(1985年～1986年)に新作カットを交えて劇場版三部作に再構成した『機動戦士Ζガンダム A New Translation』(2005年、2006年)が、WOWOWプラスにて12月6日(金)に一挙放送される。

舞台となるのは、地球から最も遠くに位置するスペースコロニー、サイド3に誕生したジオン公国と地球連邦との"一年戦争"が終結してから7年以上が過ぎた宇宙世紀0087年。旧ジオン公国軍残党の掃討を名目に設立された地球連邦軍特務部隊「ティターンズ」の士官とトラブルを起こし、拘束されていた民間人の少年、カミーユ・ビダンが、ティターンズと対立する反地球連邦政府組織「エゥーゴ」に協力して、ガンダムMk-IIを強奪したことを機に、新たな戦火に身を投じていく姿を描く。

TVシリーズ放送当時は、女性につけられることが多い自分の名前にコンプレックスを持つ主人公・カミーユのドラマチックな性格や、名前をクワトロ・バジーナと変えてエゥーゴに参加するシリーズ屈指の人気キャラ、シャア・アズナブル(CV.池田秀一)と前作の主人公アムロ・レイ(CV.古谷徹)との再会、フォウ・ムラサメ(CV.ゆかな)をはじめとする魅力的な女性キャラクター、そして常人は操縦することが不可能な巨大モビルスーツ、サイコガンダムをはじめとする、異色の新型兵器など、さまざまな点で注目が集まっていた同作。放送20周年を迎えた2005年に、TVシリーズ全50話を全三部構成に"新訳"を行った。TVシリーズの映像に追加しても違和感がないよう、新規カットに加工を施し、物語を丁寧にブラッシュアップすることで、人間同士が争うことの意味や戦火の中で芽生える愛といった普遍的なストーリーにフォーカスを当てた作品へと生まれ変わった。

■カミーユ、シャアとアムロ、3人のニュータイプの邂逅『機動戦士Ζガンダム A New Translation 星を継ぐ者』

TVシリーズの第1～14話に新規カットを追加しながら再構成した第1弾『機動戦士 Ζガンダム A New Translation 星を継ぐ者』(2005年)。カミーユが新たな宇宙戦争に身を投じ、その中でクワトロ・バジーナと名を変えているシャアと、一年戦争の英雄アムロ・レイという、ニュータイプと呼ばれる超人的な能力者三人の出会いまでが描かれる。第一話冒頭の、カミーユがティターンズに拘束されるまでのシーンをカットするなど、ハリネズミのようにトゲトゲしているカミーユの言動を減らすことで、観る者が彼に親しみや共感を抱くように変更。また、戦闘中に両親を目の前で失い、傷ついているカミーユをレコア・ロンド少尉(CV.勝生真沙子)とクワトロがなぐさめるカットを追加し、17歳の少年らしさも強調した。そして、クライマックスとなるカミーユ＆シャア＆アムロが一堂に会するシーンでは、ハイクオリティな新カットを多用。感動的な演出に感動するファンが続出した。

■フォウ・ムラサメとカミーユの関係など、恋愛にフォーカス『機動戦士ΖガンダムⅡ A New Translation 恋人たち』

TVシリーズの第15話から第32話にあたる第二弾『機動戦士ZガンダムⅡ A New Translation 恋人たち』(2005年)は、カミーユと地球連邦軍のニュータイプ研究所で調整された強化人間の美少女フォウ・ムラサメ(CV.ゆかな)との淡い恋など、さまざまな恋愛模様にスポットを当てた。アムロと、美少女ジャーナリストのベルトーチカ・イルマ(CV.川村万梨阿)だけでなく、「Z」シリーズで最もクセの強いキャラクターとして知られる、パプテマス・シロッコ(CV.島田敏)と、彼を崇拝するサラ・ザビアロフ(CV.池脇千鶴)、そしてカツ・コバヤシ(CV.浪川大輔)との三角関係など、愛憎入り乱れたドラマチックなストーリーが展開する。また、フォウとティターンズの女性モビルスーツパイロット、ロザミア・バダム(CV.浅川悠)に待ち受ける運命をTV版から変更しているのもポイントだ。

■"新訳"として描く、希望に満ちた物語『機動戦士Ζガンダム III A New Translation 星の鼓動は愛』

TVシリーズの第33話から、最終話となる第50話にあたる完結編『機動戦士Ζガンダム III A New Translation 星の鼓動は愛』(2006年)。エゥーゴ、ティターンズに加え、ジオン公国の復興を目論むアクシズという三つ巴の決戦が描かれる。シャアと浅からぬ関係のあるアクシズのリーダー、ハマーン・カーン(CV.榊原良子)や、のちの『機動戦士ガンダムUC』でヒロインとなるミネバ・ラオ・ザビ(CV.平本亜夢)といった人気キャラクターも登場する。ハマーン、シャア、シロッコ、カミーユが一堂に会し、彼らが乗る人気モビルスーツ同士が激闘を繰り広げ、劇場でそれぞれの信念を表明し合うシーンなど、見どころが満載。そして、カミーユを襲う悲劇を描いたTV版最終話とは異なり、希望に満ちた物語に"新訳"されていることも大きな魅力だ。

モビルスーツ同士のバトルシーンなども新規カットに差し替えられ、さらなる迫力が加わった『機動戦士Ζガンダム A New Translation』三部作。戦火の中で生まれる、さまざまな人間模様を描いた群像劇として「ガンダム」シリーズに触れたことのない人にもオススメしたい。

文＝中村実香