森田剛×間宮祥太朗が初共演で新たな魅力を創出! Bunkamura Production 2024『台風23号』
台風が迫る海沿いの小さな町。そこに生きる市井の人々の姿をリアルに描き出して見せるBunkamura Production 2024『台風23号』。作・演出・出演の赤堀雅秋による剣呑さ漂う独特な空気感の作品に、森田剛と間宮祥太朗が初共演&初参加で挑んだ。その舞台が2025年1月、日テレプラスにて放送される。
■不穏な出来事と空気感が観客を緊張の渦に巻き込む
本作は、2024年10月に東京・THEATER MIRANO-Zaから、11月に大阪、愛知と上演された。舞台は10月にもかかわらず異様な暑さが続く小さな海辺の町。感染症禍で中止になっていた地域の花火大会が久々に開催されようとしているのだが、TVでは戦後最大の台風上陸と報じている。そんな町の1日を9人の登場人物で描く芝居だ。舞台は中央から奥の坂の上へ細い路地が続き、手前にはスナックや役場の入り口がある。客席側は海の設定で進行していくため、登場人物たちは何度となく客席に目を向ける。
この地域担当の配達員(森田剛)が荷物を傍らに置き、海を見ながら休憩する中、目の前には暑さで匂う曇天の海が広がっている。市役所の職員・井上(藤井隆)は台風の対応に追われ、彼の妻で主婦の智子(木村多江)は軽度の認知症がある年老いた父・勝(佐藤B作)の世話を、介護ヘルパー・田辺(間宮祥太郎)の手を借りて日々を過ごしている。近所でスナックを営む雅美(秋山菜津子)は最近体調を崩し、東京に出て行った娘・宏美(伊原六花)を呼び戻した。雅美と同居する恋人・星野(赤堀雅秋)はタクシー運転手らしいがうさんくさい。そして警官(駒木根隆介)は自転車で毎日のパトロールに余念がない。町ではペットの犬が毒殺される事件が続き、犯人の目星はまだついていない。
台風の襲来にペット殺し、この不穏な空気、ゾワゾワ感。赤堀作品に特徴的な世界感だ。といってもミステリー作品ではなく、テレビドラマにあるような劇的な展開も起こらない。なのに、引き付けられる。散りばめられたユーモアに笑いつつも、観客はそこに漂う緊張感から目が離せない。
■配達員と介護ヘルパーの徐々に明らかになる"裏の顔"
登場人物はみな、心にモヤモヤを抱えている。仕事の徒労感、家族間のきしみ、漠然とした不安や孤独感などなど。それらを心の奥に宿しながら、自ら気付かないように押し殺して日々を送っている。そしてそれは時に爆発する。仕事や介護など今の社会問題も含みつつ、非常に生々しい人間の一面が登場人物の心のありようや生き方に投影され、リアルに表現される作品。観ている人には痛みや苦みも伴うかもしれないが、それらはみな自分事として捉えられるものではないだろうか。言葉やセリフのちょっとした"間"を大切に、繊細な演出で積み上げられる赤堀ワールド。だからこそ演者には芝居巧者が必要なのだ。今回も単なる豪華キャストではなく、実力派ぞろいの9人がそろった。
例えば森田演じる配達員。酷暑の中を黙々と荷物を運び続け、人とのコミュニケーションが苦手な気難しい性格、という印象から、後半に家族との電話のやりとりで家族想いのお父さんという素顔が現れる。初めて見る森田だ。また間宮が演じる田辺は、かいがいしく介護ヘルパーの仕事をこなす親切で優しい人物なのだが、後半に必死で保っていた自分がプツンとキレて感情を炸裂するシーンが見どころ。ドラマなどでは爽やかなイメージの彼から、心の闇が立ち上がり本音を暴発させる姿は想像しにくいだろう。印象が逆転する配達員と介護ヘルパー。2人とも赤堀作品に初参加、ここでしか観ることのできない2人がいる。
赤堀作品は劇場空間で観ると、ゾワゾワな空気とむき出しの感情の放出に絡み取られ、ある意味疲れるほどに濃厚だ。客観視できる冷静さを持って、この作品と対峙できるのもまた新たなおもしろさが発見できるかもしれない。
放送情報
Bunkamura Production 2024『台風23号』
放送日時:2025年1月25日(土)18:00~
チャンネル:日テレプラス ドラマ・アニメ・音楽ライブ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
文=高橋晴代
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