レオナルド・ディカプリオとマット・デイモンが二重スパイとして対立!警察とギャングの対決描く映画「ディパーテッド」

最後まで全く予想することができないのが映画「ディパーテッド」だ。
香港映画『インファナル・アフェア』のリメイク作品として、マーティン・スコセッシ監督がメガホンをとった。レオナルド・ディカプリオやマット・デイモン、ジャック・ニコルソンといった名優たちが共演し、予測不可能な作品を作り上げている。
映画最大のテーマは二重スパイだ。犯罪一家の息子であるビリー・コスティガン(レオナルド・ディカプリオ)は警官となったが、マフィアであるフランク・コステロ(ジャック・ニコルソン)の犯罪組織への潜入捜査を命じられる。一方、コステロの下で息子のように育てられたコリン・サリバン(マット・デイモン)も成績優秀で警官となり、ボストン警察の特別捜査班(SIU)に任官されていた。
ビリーは警察側のスパイとしてコステロの情報を警察へ送り、逆にコリンは警察内部の動きを直接コステロに教えている。警察が取り締まれるか、マフィアが逃げ切れるかはまさに情報戦であるということをまざまざと見せつけ、どちらの立場に立っても緊張感が収まることはない。
2人ともがスパイという立場で、絶対に身分を明かされてはならないという状況の中、人間の中身が透けて見えるのが面白い。

© 2006 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
ビリーは犯罪一家で育ったが、自らの運命を変えたいと思っており、基本的には正義感にあふれている。しかし、コステロといることで自身の手を汚さなければならない。その葛藤が常に彼の中にあり、演じるレオナルド・ディカプリオの表情はずっとさえないように見えた。
顔から曇りが見えるのは、単純にコステロという存在の恐ろしさの証明でもある。簡単に人を殺めてしまう力を持つコステロの最も近くにいながら、"裏切り者"でもあるビリーの極限状態たるや想像を絶する。味方であるクイーナン警部(マーティン・シーン)の前では焦り、声を荒げるビリーは、レオナルド・ディカプリオが演じてきたようなクールな役柄とは異なるが、そのぶんだけ人間のリアリティを感じることができる。
対してコリンのほうがより小さく見えるのは正体を知っているからだろうか。警察内部では評価され、どんどんと昇進していくが、その実コステロに裏で情報を流す最悪の"ネズミ"である。

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同僚たちの前では堂々と振る舞い、余裕のある男として優秀さを演出する一方、コステロに対しては電話越しでも言うことを聞くしかない。幼い頃からコステロの恐ろしさを誰よりも知るからこそだが、その二面性は情けないとさえ言い換えることができる。
裏切り者を探るようにコステロに命じられたコリン。これ以上の猶予は許されないと言わんばかりに、マット・デイモンの演じる男からは焦りがにじみ出て、挙動から目の動きまでどんどんと怪しさが増して見えてくる。クライマックスの前に正体がバレてしまうのではと不安になってしまうほどだった。
最後にはビリーとコリンが直接対決を迎える。警察にとっての裏切り者を成敗する立場にあるビリーが優位にあるかと思われたが、第2のネズミが現れて物語は予想外の結末へと向かっていく。
作品を通してビリーとコリン、レオナルド・ディカプリオとマット・デイモンの鏡合わせのような対比は面白い。一見ビリーが感情的で、コリンがスマートに見えるが、実際のところはどちらも人間臭い。終盤にかけて2人が重なっていくように描かれ、彼らの数奇な運命を改めて思い起こされる。
レオナルド・ディカプリオとマット・デイモンという主役としても全く見劣りすることのない俳優が両軸に立っているからこそ成立した作品でもあり、次々と人が死んでいくようなラストにおいても決してチープにはならない重厚感を担保しているように感じた。
文=まっつ
放送情報【スカパー!】
ディパーテッド
放送日時:(字幕版)2025年5月18日(日) 18:15~、5月23日(金) 15:30~、5月27日(火) 1:15~ ほか
チャンネル:ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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